第13話 廃農場

文字数 545文字

 地獄のような設営地を抜け林道の奥に入っていくと、廃屋と廃納屋が並んで立っていた。農場だったところは、丈高い雑草が蔓延っただだっ広い草原(くさはら)に変わり果て、朽ちかけた柵だけがかつての面影を残している。
 夕日を浴びながら廃屋へと近づいていく。

「そこ大丈夫?」

 アマンダはトムの側頭部を指さした。髪と皮膚が薄く()がれ、じくじくと出血している。

「ああ。痛みはあるけど」
「それケートと襲われた時に?」

 アマンダの問いにトムはうなずいた。

「危うく頭をかち割られそうになったけど、何とかかわして森に逃げた。で、森の中を抜けてここを見つけたんだ。中がどうなってるかまでは確認してない――君とジョシュを探そうと戻ったから。ジョシュはすでに殺られてしまってたけど」
「わたしたちは見捨てて逃げたのに――ごめんね」
「いや、気にしてないよ」

 トムが微笑む。
 アマンダはトムの微笑みを初めて見た気がした。
 廃屋の前まで来ると、ここでも惨劇があったのだとわかった。
 外れかけてぶら下がった扉や網戸には血飛沫が飛び、玄関ホールから流れ出る大量の血液はポーチまで広がってすでに変色していた。
 無数の蠅がポーチと玄関ホールの間を、羽音を立てて飛び回っている。

「どうする? 一応入ってみるか?」

 トムの問いに、アマンダはうなずいた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み