田中 太郎

文字数 1,021文字

箱、もといバーチャルリアリティーの装置から体を起こし、凝り固まった体をストレッチでほぐす。仮想現実での勤務はきつい。

「どうだったかね?田中太郎くん、報告を頼むよ。」
大手ゲーム会社の社長が体を起こした私を見下ろして言う。慌てて立ちあがり報告する。
「まず致命的なバグがひとつ。外部の動画データの音声がまったく聞かれませんでした。
それから……需要は見込めますが、コストが莫大なため、黒字になるように運用を考えるとなると1部の富裕層に向けたリリースが妥当かと思います。
もしくは多業界との連携、特に映像技術関連のコストが下げられると顧客層を広げられるでしょう」
'めぐりー成仏までの49日ー'と題した体験型自己探索ゲームの試作データを広げる。

「今回β版テストに応募してくださった5名の個別報告をします。
まず鈴木さま。
ほとんど私の出番はありませんでした。このタイプであれば黒服役の負担は低いでしょう。
ご友人の映像を立体化するのにご本人の許可は'懐かしい人に会おうテレビの企画'だと言って了承を得られています。この映像を作れるかどうかが満足なサービスを行えるかどうかにかかっていました。今後了解を得られなかった場合のマニュアルは必須かと思います。

次に小池さまですが、こちらは人間の黒服でなく、ウサギ等の反応が極端に少なくても許される物を代替した方がコストの削減になります。
49日と聞いてピンと来ない方もいらっしゃるので、サブタイトルの世界観を万人に言外に染み込ませるのは難しいというのを教えてくれたケースでもあります。
死んだ気になって生を見つめ直すというのがコンセプトでしたが、
49日間の軟禁生活を甘んじる理由を用意できればそれで十分だと言う可能性が見えました。

次に小栗様ですが黒服の役割を越えて出過ぎたケースに該当すると思われます。
黒服の気質テストを緻密にすることによってマニュアルにない動きを極力減らせるかと思います。
今回は悪く作用しませんでしたが、黒服がプレイヤーを評価する言動は好ましくなかったと反省しております。
佐藤花ですが……あの方にきちんとサービスが提供できたかは自信がありません。プレイヤーが多種のSNSを求めてきた場合のマニュアル対策がほしいと思いました。
三島巌様もタイプは小池さまと似ています。
ゲームを始める段階で簡単な心理テストを行い、傾向に応じた黒服にカスタマイズできるとよろしいかと」
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