第1夜
文字数 1,152文字
いらっしゃいませ。そしてお帰りなさいませ。
庄内多季物語工房へ、ようこそおいで下さいました。
山形県庄内地方は、澄んだ空気と肥沃な土壌、そして清冽な水に育まれた、新鮮で滋味豊かな野菜や果物の宝庫です。
それに加えて、時に不思議な光景に遭遇する場所でもあるのです。
何事もスピーディーに進んでいくこの時代、その速度に疲れを覚えることもあるかと思います。
時には、ゆったりと時間を抱き締めながら、過ごしてみるのはいかがでしょうか?
今回、物語収穫人である私、佐藤美月が遭遇致しました不思議な光景は、どうぞこちらから、お楽しみ下さい。↓
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穏やかな静けさが、深まりゆく夜に優しさを広げている、そんな春の晩でした。
一人静かに読書に耽溺(たんでき)していた私は、居間の隣にある寝室から、微かな物音が聞こえたような気がしました。
それが何となく気になったので、読みさしのページに紐の栞を挟んで閉じ、寝室の様子を覗きに行くために、ダイニングテーブルの椅子から立ち上がりました。
息を潜めながら、寝室に続く扉を恐る恐る開けてみると、静まり返った室内には、蒼白い月の光がしんしんと満ちていました。
それと、昨夜焚いていたムスクのお香のまったりとした甘い香りが、仄かに漂っています。
一見したところ、寝室はいつもと変わりない様子に見えました。
けれども、気配というのは不思議なもので、時として、お香の残り香のように、その空間の表情を変えてしまうことがあります。
私が産毛の先で感じ取っていたのも、そんなエネルギー的な変化だったかも知れません。
その変化の出所を知りたくて、野性の勘に導かれるままに、引き寄せられていった先は、寝室の窓辺でした。
私は時折、手持ちのパワーストーンの浄化を行うために、月光浴をすることがあるので、夜になっても、カーテンを引かずに過ごすことがありました。
この日も、月が明るい晩でしたので、出窓の所にパワーストーンを置いて、浄化とパワーチャージを同時に行っていました。
さざれ水晶を敷いたパールシェルの上に、ムーンストーンの一粒ペンダントを乗せておいた筈でした。
ところが、この時確認してみると、そのペンダントが何処にも見当たらなくなっていたのです。
その代わり、黒糸で丹念に編まれた繊細なレースのハンカチが、幾重かに折り畳まれた状態で、ペンダント不在の場所に置いてありました。
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・・・ 第2夜へと続く ・・・
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