(二)

文字数 421文字

 同じようなことは昔にもあった。この日と同じく、私はブルージュの骨董屋で売られていた。その時もショーウインドーから見える位置に置かれて売られていた。
 サラエボでの事件からひと月経ち、ロシアがセルビアを支持すると発表した日、ショーウインドー越しの私の姿が軍服を着た若者の目に止まった。
 彼はショーウインドーの前まで来て私のことをじっと見つめていた。ただしその日彼は、その後すぐに立ち去ってしまった。
 彼は翌日再び店の前にやってきた。また私のことをじっと見ていた。何が気に入ったのだろうか。この店には私の他にも骨董品は山ほどあった。私の隣に置かれたブリキ製の兵隊のおもちゃは、数年前に子どもたちの間で流行ったものであった。ベルギー陸軍のみならず、フランス、ドイツ、スペイン、オーストリアなどの各国の軍服を着たもので、このとき隣にいたのは赤いイギリス海兵隊の制服を着たタイプだった。若者からしたら、そちらの方がよほど興味がありそうなものだ。

(続く)
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み