3$ Look forward to the "Afterlife"(3)
文字数 1,536文字
携帯電話が鳴ってる。うるさい。
「くそ……」
でもこの電話を出ないのは許されない。
手を伸ばして、いつ音源を掴んで出る。
「はい……」
『トカレフ。仕事だ。詳細はいつも通り』
会話なんてない。いうだけ言ったら勝手に切れている。
つい先日闇カジノをひとつ潰したばかりだというのに、人使いが荒い。
「くそったれ」
毒吐いても始まらない。
天国みたいな場所、あかねの腕の中から這い出して、肌寒さに身震いする。
「なに? どこかいくの?」
「んー。お仕事」
「……そ」
体を起こした彼女。眠ってからは何もしてないから、体は綺麗なまま。
あー、ずっと抱きあって眠りたかった。
あたしはスポブラとくまさんパンツを拾って身に着け、ちょっと履きたくないけど紺のハイソックスに足を突っ込む。
「なんか、こうしてみると普通に中学生みたい」
「え? でぃすってる?」
「かわいいってこと」
「ぉう……」
何を突然言い出しのかって思ったけど、なんかうれしい。顔がにやける。
あかねは裸のおっぱいがプルンと跳ねさせてベッドから出ると、さむって呟いて暖房をつけた。
それから彼女も、同じように床に散らばった服から下着を見つけ出して身に着けていく。
あたしと大違いで、あかねはちゃんと若い子らしいかわいい下着。パステルカラーの水色の上下でかわいい。
制服を着て身だしなみを整える。髪の毛がぼさぼさになったあかねは、軽く濡らしてドライヤーをかけている。あたしは寝癖が付いたことないからそのまま。
「ねえ、その仕事が終わったら、買い物行かない?」
「買い物?」
脱衣所から出てきたあかねは、いつも通りばっちりギャルだった。
「何かほしいのあんの?」
「え、いや、そういうわけじゃないけど」
「あ! デートだ!」
「え、う、うん。そう。……イヤ?」
ちょっと照れてるあたしの彼女、ちょーかわいい。
うれしい。うれしい! うれしすぎ!
あたしは手元の作業をほっぽって抱きついた。
「絶対いく! チョーいく! いきたい!」
軽くキスして、あたしはベッドに戻って座る。鞄から箱と空になった弾入れを出して入れる。
「デートだデートだ! やったね、うれーな!」
自分でも驚くくらいうれしい。帰ってきたら、なんて今まで考えたことなかったし、彼女からデートのお誘いなんてのもなかった。
だから高校生はみんなうきうきしてたんだな。
「そんなにうれしい?」
あたしのテンション爆上がりぶりに軽く引いてるあかねだけど、こっちはそれどころじゃないくらい最高潮!
「うれしーね! 生きててよかったって思ってるモン!」
「そ、それはよかった」
さっさと弾入れに弾を込めて、空になった分と予備にも入れる。一箱入れ切ると、手が痛いからいつもは気分最悪だけど、今日ばかりは絶好調。ご機嫌。
全部の準備を終わらせて、あたしたちはホテルを出た。別々に出る。
あたしは殺し屋。あかねはJK。ほんとはまじっちゃいけなかったんだけど。
「アイがあれば、いけるっしょ」
あたしは駅に向かって歩き出す。昼前だからか、膝が寒い。
「ああ、くそ……。しくじった」
痛みは限界を超えると、わりと感じなくなる。
ただし、体から熱が抜け出ていく感覚が、目で見ているよりはっきりわかる。
壁に手をついて歩いていたら、膝が耐えられなくてコケる。
「あー、デート、いきたかったぁ」
別れ際のあかねの顔だけが思い浮かぶ。
さみしそうで、かなしそうで、不安がる顔。
「あいたいなぁ。あたし死んだら、泣いてくれるかな……」
いや、泣かれるのは嫌だ。
体が重い。立ち上がれない。
お腹に食らった敵の弾が開けた穴から、どくどくと血が出てくる。
「しにたく、ない……」
涙が出てきた。初めて、思った。思った時には、もう、遅かったんだ。
「くそ……」
でもこの電話を出ないのは許されない。
手を伸ばして、いつ音源を掴んで出る。
「はい……」
『トカレフ。仕事だ。詳細はいつも通り』
会話なんてない。いうだけ言ったら勝手に切れている。
つい先日闇カジノをひとつ潰したばかりだというのに、人使いが荒い。
「くそったれ」
毒吐いても始まらない。
天国みたいな場所、あかねの腕の中から這い出して、肌寒さに身震いする。
「なに? どこかいくの?」
「んー。お仕事」
「……そ」
体を起こした彼女。眠ってからは何もしてないから、体は綺麗なまま。
あー、ずっと抱きあって眠りたかった。
あたしはスポブラとくまさんパンツを拾って身に着け、ちょっと履きたくないけど紺のハイソックスに足を突っ込む。
「なんか、こうしてみると普通に中学生みたい」
「え? でぃすってる?」
「かわいいってこと」
「ぉう……」
何を突然言い出しのかって思ったけど、なんかうれしい。顔がにやける。
あかねは裸のおっぱいがプルンと跳ねさせてベッドから出ると、さむって呟いて暖房をつけた。
それから彼女も、同じように床に散らばった服から下着を見つけ出して身に着けていく。
あたしと大違いで、あかねはちゃんと若い子らしいかわいい下着。パステルカラーの水色の上下でかわいい。
制服を着て身だしなみを整える。髪の毛がぼさぼさになったあかねは、軽く濡らしてドライヤーをかけている。あたしは寝癖が付いたことないからそのまま。
「ねえ、その仕事が終わったら、買い物行かない?」
「買い物?」
脱衣所から出てきたあかねは、いつも通りばっちりギャルだった。
「何かほしいのあんの?」
「え、いや、そういうわけじゃないけど」
「あ! デートだ!」
「え、う、うん。そう。……イヤ?」
ちょっと照れてるあたしの彼女、ちょーかわいい。
うれしい。うれしい! うれしすぎ!
あたしは手元の作業をほっぽって抱きついた。
「絶対いく! チョーいく! いきたい!」
軽くキスして、あたしはベッドに戻って座る。鞄から箱と空になった弾入れを出して入れる。
「デートだデートだ! やったね、うれーな!」
自分でも驚くくらいうれしい。帰ってきたら、なんて今まで考えたことなかったし、彼女からデートのお誘いなんてのもなかった。
だから高校生はみんなうきうきしてたんだな。
「そんなにうれしい?」
あたしのテンション爆上がりぶりに軽く引いてるあかねだけど、こっちはそれどころじゃないくらい最高潮!
「うれしーね! 生きててよかったって思ってるモン!」
「そ、それはよかった」
さっさと弾入れに弾を込めて、空になった分と予備にも入れる。一箱入れ切ると、手が痛いからいつもは気分最悪だけど、今日ばかりは絶好調。ご機嫌。
全部の準備を終わらせて、あたしたちはホテルを出た。別々に出る。
あたしは殺し屋。あかねはJK。ほんとはまじっちゃいけなかったんだけど。
「アイがあれば、いけるっしょ」
あたしは駅に向かって歩き出す。昼前だからか、膝が寒い。
「ああ、くそ……。しくじった」
痛みは限界を超えると、わりと感じなくなる。
ただし、体から熱が抜け出ていく感覚が、目で見ているよりはっきりわかる。
壁に手をついて歩いていたら、膝が耐えられなくてコケる。
「あー、デート、いきたかったぁ」
別れ際のあかねの顔だけが思い浮かぶ。
さみしそうで、かなしそうで、不安がる顔。
「あいたいなぁ。あたし死んだら、泣いてくれるかな……」
いや、泣かれるのは嫌だ。
体が重い。立ち上がれない。
お腹に食らった敵の弾が開けた穴から、どくどくと血が出てくる。
「しにたく、ない……」
涙が出てきた。初めて、思った。思った時には、もう、遅かったんだ。