第1話 ちょっとだけ帰ってきた桜真琴
文字数 1,958文字
キッカケは何時も突然だ。
誰が思うであろうか? 背後から殴った相手が宇宙人で、何時の間にか婚約者にされるなど。
しかし、彼から提示された契約は破格の待遇。私は二つ返事で良しとした。
だが、そこには契約に至るまでの計り知れない壁が存在した。
何と、他の婚約者を倒さなければならないという。
その第一の刺客「中華娘」を正々堂々と葬り去った後詐欺のように
「実は後、10人いるんだ」と事後報告。
なんやかんやで、私と宇宙人の結婚が既に既定路線みたいな噂になってしまう。
それから刺客がやってくることも、倒しに行くこともなく平穏無事な日々が続く。
夏を超え、そろそろ肌寒い季節になってきた。
そうなると、ベッドから朝出るのも至難の業。頭では出ないといけないとわかっているのに、
本能はこのままで居たいと言い聞かせる。
理性よりも本能で動く私は当然、逆らうことなく寝入ってしまったのだが―――。
寝入ってしまった事により、学校に行く時間はギリギリに。しかも今まで奇跡的に遅刻してなかったというのに、今日遅刻してしまえば記念すべき100回に到達してしまう。
やっとの事で起きてリビングに来た時、青筋立てた親が指をポキポキ鳴らしていた。
てへっ、とおちゃめな行動をとった。
すると親は、テーブルに置いてあった林檎を片手で握りつぶした。
親の呆れた言葉を尻目に私は準備をする。
家を出て昨日拾ったカワサキニンジャとかいうカッコいいバイクにまたがり、エンジンをかける。
バイクの操作は昨夜ネットで予習したから大丈夫。
ちょ! ちょっと何よコレ! 急に止まれ……! ああああああ!
「おいおい、何だなんだ?」
「こりゃひでぇ、一体何があった? バイクが木っ端微塵じゃねぇか」
けたたましい音に周辺住民が何やら騒ぎ出してきたので、私は直ぐに逃げた。
戦略的撤退。
走って学校に向かったが、結局間に合わず。
記念すべき100回目の遅刻を見事に私は成し遂げた。