第3話 刺客

文字数 3,055文字

城戸から話があると言われて二人で屋上に向かう。教室を出る際、複数の女子から殺気じみた視線をかんじたが、キッ、と睨み返すと風船のようにしぼんでいく。あんた達には分からない苦労を私は背負っているのに、勘違いしないでもらいたいわね。

で、毎度おなじみ見慣れた屋上へと足を運ぶ。

こういう時に話す内容なんてアレ関係だろうしね

桜さん、実は話と言うのは……
待った! 言わなくても分かるわ! 
え?
どうせほら、あれでしょ? あの事でしょ?
…………一応、お聞かせしてもらってもいいですか? 以前もこんなやり取りがあった気がするので
今朝のバイクの事でしょ? あれは、なんというか不可抗力というか!
うん、全然違いますね。思っていた通りで逆に安心しました。
え? あ、なんだー、違うの。ビックリしたわ。
ホッと胸を撫でおろす。バレてるんじゃないかと心臓がドキドキだったわ。
桜さんと話がしたかったのは妃候補の争いについてです。
ああ……そんな事もあったわね。それがどうかしたの?
僕の妃となるには残りの候補者10名を倒さなければなりません。しかし、現状桜さんは何もアクションを起こす気配が見られないので、どうしたのかな、と思いまして。
アンタ、バカぁ!? 何で私が全員倒さないといけないのよ!
桜さんならそういう行動をとりそうだったので。
アンタ、私をどういう風に見てるのよ?
行動力のある方だと思います。例えどのような悪事に対しても、全く罪悪感を感じず、良心という名の心を捨ててしまった豪胆の持ち主かと。

なるほど……つまり、可愛いってことね

ポジティブ思考すぎませんか?
兎に角、私はさらさら他の連中を倒すなんて気は無いわよ。むしろ、他の奴らがつぶし合ってくれた方が面倒も省けるから。
なるほど、桜さんらしからぬ賢明な判断ですね。ですが、そうも言ってられませんよ
? どういう意味よ?
実は、十人のうちの一人が貴女に勝負を挑んでくる予定です。昨日僕の携帯に連絡がはいりました。
はぁ? 何で私に直接挑んでくるのよ? 十人でやりあってなさいよ!
連絡してきた彼女の名前は「來海(くるみ)紅(くれない)」彼女は來海流空手の黒帯を持ち、瓦を二十枚素手で割れるという実力者、彼女の組手はその優雅に舞う姿から來海空手の歴史上最も華麗な技を持つと噂されており……
週刊少年誌みたいに、前戦った相手より強い相手が出てくるパターンやめてもらえない?
それは僕に言わないでください
本を正せば、アンタがそういう女と付き合うのが原因なんでしょ! 全く……じゃあ、そのクルミとやらに返事しといて
何て返事をすればいいですか?
私と戦いたければ、9人の刺客を倒してみせなさい。それまで私が戦うに値しないわ。
言ってること完全に悪役ですね

そんなキリの良い所で昼休みを終えるチャイムが鳴る。

あー、もう、何でこんな事になってるのかしら。頭が痛い。


それから何事もなく授業は淡々と終わり、ついに放課後へ。

今朝言われた通り私は教室の中で三上っちを待っていると、直ぐに現れる。

残っている生徒に教室を出るように促し、残っているのは私と三上っちの二人だけ。

三上っちは机を動かして座り、私の席と正面から向き合う。

桜さんに今日残ってもらった理由は『進路相談』の件についてです。
いいわ、相談に乗ってあげるから何でも言いなさい。
私が相談を聞く側の立場です!
分かったわ。最近、ちょっとお肌の張りと艶が良くなくて。どうすればいい?
地味に私にダメージが来るような質問をやめなさい。行きたい高校とかないのですか?
行きたい高校って言われても……とりあえず愛と葵が行く高校かな?
お友達の通う高校ですか……悪いとは言いませんが、貴女には夢はないのですか?
億万長者になって、世界のなだたる男共を篭絡し、勉強などしなくても生きていける豪華で優雅で、贅沢三昧できる生活
明確な悪夢をありがとうございます。
残念だけど、今の貴女の成績では愛さんと葵さんの行く高校にはついていけないわよ?
え? どういうこと?
愛さんは私立の偏差値の高い高校を希望。そして、葵さんはスポーツ特待生で推薦が決まっているソフトが強い私立の高校。どちらも桜さんの今の成績ではとても合格できる可能性はないわ。
三上っちの権限でどうにかして捻じ込んでよ。
そんな権限は私にありません! それに、そういうのは犯罪です!
だめかー、じゃあ私は何かの推薦で同じ高校に行けるとかないの?
推薦? 桜さんはスポーツか何かされてました?
自慢じゃないけど、近隣の中学高校の不良をボコボコにした経歴ならあるわよ
本当に自慢じゃないですね。後、その問題は別で詳しく聞かせていただきます
じょ、ジョーダン、ジョーダン。じゃあどうすればいけるようになるのかしら?
残念ですが、桜さん。貴女の日常態度、および成績を加味した所、どの高校にも進学は難しい次第です。よって、今日こうして進路相談の場を設けたのですよ?
高校がダメなら大学は大丈夫ってこと?
そんなわけあるか!
ええ? じゃあどうすればいいのよ?
良い質問ですね。もう、終わった物を悩んでも仕方ありません……よって。
何処からともなく、三上っちは書類の束を机の上にドン、と置く。その束は分厚い辞書並みにある。
明日から桜さんには特別補習をうけていただきます。
特別補習?
そうです。これから卒業までの間、毎日居残りで勉強。冬休みなども当然ありません。
何でそんな事しなくちゃいけないのよ
桜さん、私は貴女の将来を危惧して言ってるのよ? ここで頑張れば、何とか高校に進学できるぐらいにはなると思うわ。どうしてそんな事言うの?
私の自由時間が削られるのが嫌だから
正直言って今、先生は何でこんな子を心配してるのか錯乱してます。

先生は何とか私に補習を受けさせたい。

私は自由時間を削られるのが嫌だから補習を受けたくない。

つまり、これは平行線の話。

どうやら、交渉決裂ね。
交渉? 何の話ですか?
良い? 三上っち。貴女は本当にそれでいいのかしら? 私に構うばかりになって、自分の時間がおろそかになり、今三上っちがやる事は私の補習に付き合うことじゃない、新しい彼氏を作る事じゃないかしら?
そ、それは……一理あるわね。
だから三上っちの為に、二日猶予をあげるわ。二日後に聞かせて頂戴、本当にそれでいいのかどうか……それは貴女が決める事よ?
私はスッと席を立ち、そのまま教室を出ていった。
…………全く、何を言い出すかと思ったらあの子。
…………あれ?
これ、ひょっとして逃げられた!?
To be continued!
次回予告
ああっ! とある事情からうちの娘を縄でグルグルに拘束して池に投げ入れてしまった……どうすれば
その時、池から精霊が姿を現す。
貴女が落としたのは、この金の真琴ちゃんですか? それとも銀の真琴ちゃんですか?
(ええっ!? これってもしかして金の斧と銀の斧の話!?)
(となると……私がとる選択肢は一つ)
はい、そうです! 落としたのは金と銀の我が娘です
むっ、貴女は嘘をつきましたね? どっちも違う真琴ちゃんなのに
ウソジャアリマセン、ホントウデス
貴女は嘘をつきました……よって。
ワクワク
この金、銀、に加え、沈んでいる真琴ちゃんも全て差し上げます
……………………
え?
さぁ、うけとりなさい。拒否はできません。全員が真琴ちゃんなので、貴女の悩みも三倍に増えるでしょう。
い、いやあああああああああ!
次回  偶然
という悪夢を昨日見たわ。
自分の娘を縄で拘束して、池に何故投げ入れたのかという説明から聞かせてもらおうかしら?
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登場人物紹介

桜(さくら)真琴(まこと)


前作「暴走少女」から引き続き主人公に抜擢された女子中学生。

金に目が眩み、壮大な婚約者の席争奪戦に巻き込まれた。

どんなことでも手段を選ばない恐ろしい主人公

真琴の母親


超が付く問題児の真琴を世話する母親。

彼女自身は一般常識はあるのだが、どうして自分の娘がこうなったのかは

今でも理解できない。


ただし、怒ると暴力的になる所はソックリである

愛ちゃん


この小説の中での癒し。

可愛い外見と仕草で男をイチコロ。きっと将来(以下ry


運動部所属で真琴のボケをひたすらツッコむ友人。

よき理解者でもあるが、彼女自身も結構変人になってきた感はある。

城戸(きど)拓海(たくみ)


そもそもの原因である宇宙人。

婚約者を探しにやってきたというのに、色んな女性に手を付ける始末。

しかし、当の本人は悪気はなし。


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