この魔術の素晴らしさを理解してくれるのかい!?やっぱりルキは分かってくれると思ってたよ~~!こんな凄い魔術の実験に協力できるってすごく魅力的だと思わない?
Why!?そんなぁ~~、今日は反応よかったからいけると思ったんだけどなぁ……。みんなルキとは仲良くしてるのに、どうして僕には協力してくれないんだろう……?
う~ん、Jさんって魔術の話ばっかりで近寄りがたいっていうか……まずは相手の話を聞いてあげたらいいんじゃないかな?
なるほど!それで相手と打ち解けたところで手伝ってくれるようお願いすれば、きっと協力してくれるよね!Excellent!完っ璧な計画だ!さすがだよルキ~~!
Jさんの力になれたんなら俺も嬉しいよ~。
(それでうまくいくかは分かんないけどね)
彼らが談笑していると二人の人影が現れ、こちらに近づいてくる……。
あ、いたいた、ルキ……って、なんでJなんかと一緒にいるのよ。
ちょっとテツ、当たり前のようにアタシの後ろに隠れないでちょうだい。……J、まさか貴方ルキにまで変なことしてないでしょうね?
Hi!Mr.Florenceにテツじゃないか、丁度いいところに来たね~~!君たち何か話したいことは無いかい!?今日の僕は聞き上手だよ~~!!
相変わらず気持ち悪いわね……何を企んでるのか知らないけど、ヒールで踏まれたくなかったらそれ以上アタシたちに近づかないでちょうだい。
え、Jさん思った以上に警戒されててウケるんだけど。てかここまで好感度低いんじゃ話聞くのムリっしょ~。
そ、そんな、僕は何も企んでなんか……。僕はただ、魔術師のみんなと仲良くなってあわよくば被検体になってほしいだけなのに……。みんなどうして分かってくれないんだい……?
まったく……そんなことより、アタシたちルキに用事があって来たのよ。
リュゼとテツはどこからかラッピングされた包みを取り出すと琉希に差し出す。
誕生日おめでとう、ルキ。はい、これは誕生日プレゼントよ。
まぁ、俺はリュゼに聞くまで知らなかったんだけどよ……その、おめでとう。
わっ、リュゼさん覚えててくれたんだ~!テツさんもありがとう!ね、さっそく開けてみてもいい?
フフ、もちろん。テツとアタシが選んだんだからセンスの良さは保証するわ。
え~なんだろ楽しみだな~。じゃあまずはリュゼさんのプレゼントから……あっマフラーだ~!最近寒いから防寒具欲しかったんだよね~もしかしてリュゼさんってエスパー!?
テツさんからは~……お、革手袋だね!色合いも大人っぽくて格好いい!俺あんまりこういう系統のは持ってなかったから新鮮でいいかも~!
2人ともありがとう!さっそくつけてみてもいいかな?……わっこのマフラーすごい肌触りがいいね~!それに温かい!テツさんの手袋もサイズぴったりだよ!
気に入ったみたいで良かったわ。……うん、よく似合ってる。手袋とのコーディネートもばっちりだし、アタシの見立てに狂いはなかったわね。
ん、そりゃ良かった。革の手袋はちゃんと手入れすりゃあ長持ちするし、使ってるうちに味が出るからな。やり方はまた後で教えてやるから、大事に使えよ。
……What!?今日はルキの誕生日なのかい!?そんな大事な日を教えてくれないだなんて水臭いじゃないかぁ~~!!
僕も何かプレゼントしたいけど……あ、ちょっと待ってて!
そう言うとJは琉希たちに背を向け、手持ちの荷物を漁り始めた。
あら、貴方まだいたの?結構手厳しいことを言ったつもりなんだけど……メンタルが強いのもここまでくるとタチが悪いわね。
俺はこのへこたれないところがJさんのいいところだと思うな~。
……ふう、お待たせ。僕からはこれをプレゼントするね!Happy birthdayルキ~~!!
振り向いたJの手のひらには、片手に収まるサイズの飾り気のない小箱があった。
ありがとJさん、嬉しいよ!中身は……わっ綺麗な小物入れだね~!
あら、砂糖菓子入れじゃない。アンティーク……いえ、ヴィンテージってとこかしら。Jがこんなもの持ってるなんて意外ね。
この前、市場に出回っている魔道具の調査の一環で蚤の市に行ったんだけど、そこに掘り出し物がいっぱいあってね。いやぁ、さすが魔術先進国だね~~!古物の中に魔道具が紛れていることも多いし、なんと魔道具専門の出店もあってね!Unbelievable!こっちに来るまでは魔道具を手に入れることすら一苦労だったのに!思わず僕個人でもいくつか購入してしまったよ~~!!
(Jさん、魔術のことになるとめっちゃ
喋るなぁ)
え、じゃあこれも魔道具なの?
Exactly!でも術式が傷ついていたみたいでね、これはただの小物入れとして売られてたんだ。まったく、魔道具がその真価を発揮できずに埃を被っているだなんて嘆かわしいことだよ!でも僕が見つけ出してちゃんと術式を修復したからNo problemさ!!
へ~なんかよく分かんないけど凄いね!それで、このボンボニエール?にはどんな魔術がかかってるの?
百聞は一見に如かずってね!魔力を流すだけで発動するはずだから早速やってみなよ~~!!
危険性は無いから安心して!それともテツは僕の言うことが信用できないのかい!?
わ~テツさん深いこと言うね~。
まぁ、もし何かあっても頼りになる魔術師が3人もいれば何とかなるっしょ~。
琉希が手のひらに乗せたボンボニエールに魔力を注ぎ込むと、精巧な細工を施された装飾が淡い光を放ち始める……。その光は徐々に強さを増し、やがて幾筋もの光の束を生み出すと彼らの頭上に満天の星空を映しだした。
どうだい凄いだろう!?ここだと明るいから分かりづらいけど、部屋を暗くすればもっと綺麗に見えるはずだよ!!
これは、ロマンチックな贈り物ね……フランスではボンボニエールはよくお祝いの品として贈られるの。
……きっとこれを贈った人は相手の幸せを願っていたんでしょうね。
別に今の時代なら家庭用のプラネタリウムくらい簡単に手に入るが……昔は魔術でしかこんな芸当できなかったんだろうな。
みんな……今日は俺のためにプレゼント用意してくれてありがとね!正直、日本から離れた場所でこんなに誕生日を祝われると思ってなかったからさ、すっごい嬉しいよ!
こちらこそ気に入ってくれたみたいで嬉しいよ~~。あ、僕が誕生日のときは是非ルキに実験を手伝って欲しいな~~!!
俺今からJさんの喜びそうなプレゼント探しておくね!
アタシもルキのプレゼントを選ぶのは楽しかったわよ。……実際につけてるところを見たら、マフラーに合わせて全身コーデしたくなってきたわ。テツ、今度はルキも連れてまた買い物に行くわよ。
なんで俺まで付き合わなきゃいけねぇんだよ……はぁ、別に構わねぇが俺の見立てでもガラが悪いとか文句言うなよ?
2人が選んでくれるなら間違いないね!一緒に買い物に行くのが今から楽しみだよ~!!
あ、ねぇ折角だからJさんも一緒に行って服選んでもらったら?顔は良いのにいつも似たような服ばっかり着てるのはもったいないと思うな~。
琉希を中心に談笑する彼らを夢幻の星が優しく照らしている……。
やがて徐々に頭上の星が減り始め、ボンボニエールはその内に全ての星を収めたかのように光を失うと、何の変哲もない小物入れの姿で琉希の手の中に収まっていた。