第1話 ミャンマーの魔女
文字数 614文字
仕事で訪れたミャンマーの山奥に人里離れた集落があり現地の人もあまり近寄らない方が良いと噂する自称魔女の老婆が住んでいた。
私は好奇心から人々の制止を振り切って一人で老婆に逢いにいった。
会ってみると思いの外歓迎してくれて人々がいうようなおかしな人ではないと思う様になった。
老婆が出してくれた食べ物は少し匂いが強く味に癖があるものの絶品のジビエと言えた。
それから何日か通っているうちにすっかり仲良くなったがそろそろ日本に帰らなければならないと言う日に不思議なお土産を貰った。
古い木の箱なのだが中には猿の首のミイラが入っていると言った。
そんな気味の悪いものは欲しくないと断ったがなんでも願いが叶う箱だと老婆は真剣な顔で告げた。
「願いって三つ?」
「そんなわけないじゃろ、ひとつじゃよ、叶えたい願いを何回も繰り返すんじゃ、想いが届けられたら合図があるはずじゃ」
「合図ってどんな?」
「合図は合図じゃ」
わたしは半信半疑ながらも興味深々でその古めかしいキューブ型の箱を受け取った。
「願いってどんな願いでも?」
「そうじゃ……とは言っても無理なものもあるがな」
「どんな願いが無理なんです?」
「そうじゃなぁ、例えば時間を遡らせたい!なんて言うのは無理じゃな」
そう言って皺くちゃの笑顔をつくった。
「そんなめちゃくちゃな事は願わないよ」
その時のわたしはそう考えた。
とりあえず旅の土産と土産話を両方手に入れた私は断るそれを受け取って意気揚々と日本に帰国した。