【もうやった】シューダンのキャラ立て手法で他の漫画のキャラを立ててみる

文字数 2,091文字

4日前の日曜日に月例勉強会やったんですよ。

マンガ新連載研究会の6回目の定例会ですね。

もう半年経ったんだな~~。

月例勉強会では、その月の間に始まった新連載を複数本取り上げて、参加者みんなでディスカッションするんですね。

「どういう点に注目しましたかー」みたいな。


現役の漫画家とかがたくさん参加してるから、みんないろんな視点を持ってて、これやるだけでも、いろんなことが見えてくるんですよ。

で、その後、みんなで課題を設定してそれをやる。

議題に登った漫画を一作品選んで、2~4ページくらいを課題に沿って描き直す。

30分とか1時間とかで。もちろんネームだけどね。

で、今回の課題は『シューダンのキャラ立てで***の主人公キャラのキャラ立てをやり直してみよう』というもの。


***には作品名が入ります。

……が、これは非公開!

会員制サロンなので部外秘情報なのだ……。

シューダンは先日から始まったジャンプの新連載漫画ですね。

サッカー漫画です。作者は横田卓馬先生。


これが凄まじい衝撃をわれわれに与えた漫画でして。

というのは、連載経験のある漫画家は、大抵、「こういうのはやっちゃダメなんだな」とか「こういうことをしなきゃいけないんだな」みたいなセオリーを自分の中に持ってるわけですよ。


イメージ的には、常人には見えない障害物が見えるようになるので、その岩塊とかをスッ、スッと避けながらゴールを目指していく感じ。

ところが……シューダンは岩塊に出会うたびにこれを殴り壊していった。


「おいーッ!?」


ってな具合ですよ。

「えっ、それ、殴ったら壊れるもんだったの?」みたいな。

いやいや、普通は殴っても壊れないでしょ、だってそれ岩だよ!?

みたいな感じで、『シューダン』はおれたちに多大なる衝撃を与えたわけです。

これまでおれたちが積み上げてきた漫画セオリーが崩壊していく感じでしたね……。

で、その中の一つとして主人公のキャラ立てがあります。


通常、セオリーとして主人公には強烈な欲望が必要とされます。

「**がしたい」という気持ちですね。


というのは、「**がしたい」がなければ主人公が能動的に動かないから、話が進まないんですよ。

なので、普通は主人公に欲望を設定します。


どうしても「**がしたい」がない場合は、動かざるをえないのっぴきならない状況を作り、そこに主人公を放り込みます。

これでも一応話は動く。


ところがシューダンの主人公には欲望がない!


「いや、みんなやってるから、俺もサッカーしてるだけだよ」


という態度です。

別に状況ものっぴきならなくない!


こんなもの、普通は話が動かない!!

例えばナルトなんかだと、「火影になりたい」という強烈な欲望があり、その欲望の背景となる出来事があり、「ってばよ」とかの特徴的な口癖があったりするわけですが、そういうのが丸っとない。


ただですね~。


基本的には、キャラは分かりやすく立ってる方が(少なくとも少年漫画では)イイんですが、しかし、全部をきっちりやると「キャラキャラしく」なるんですよね。


「はいはい、セオリーに則ってキャラ作ってますね」

「そうですね、そういう動機とか持たせますよね」


みたいな。すると、どうなるか。

普通の人間っぽくならないんです。


「漫画のキャラとしてはよく見るけど、周りを見渡してもそんなやつは一人もいない」


そういうキャラキャラしいキャラになってしまうのです。


で、今回扱った某新連載漫画は主人公が非常にキャラキャラしかった。

繰り返しますが、キャラキャラしいことは必ずしも悪いことではないです。

キャラキャラしければ、より「漫画のキャラっぽく」なり分かりやすくなります(しかし、親近感は失われていきます)。


分かりやすさを取るか、リアリティを取るか、この辺はバーターであり、掲載誌や読者層も含めて考えるべきことです。

ちなみに、おれはあんまりキャラキャラしいキャラは好きじゃない

というわけで、今回の課題では、この某新連載漫画の主人公のキャラ立てを「シューダン風にキャラ立てし直してみる」という実験を行いました。


別に、こっちのキャラ立ての方がイイってわけじゃないんですよ。

こういう選択肢を取ったらどうなるか、という実験です。

これを10人位でやって10コくらいのネームを見比べていくとですね……。


分かることが出てくるんですよ。

1つや2つのネームを見比べても分からないことが見えてくるんですよ……。


「シューダンのキャラ立て手法とは何だったのか」


その一端が言語化されたんですよ。


一体何が分かったのかは、うん、ここから先は有料なので、マンガ新連載研究会に月額2000円を払って入会して第6回の動画を見て下さい。

ちなみにこのテクを言語化した後の、われわれの反応は……


「理解はできたが自分でできる気がしない」


と言うものでした。


しかしまあ、これは端緒と言いますか、その手法を言語化できたのは第一歩でして、今後、いろんな作品に出会うたびに、この言語化した知恵を確認していくと、そのうち血肉になっていくのではないかと思います。


というわけで、第6回の月例勉強会のご報告でした!

気になる方はぜひご入会を~~~。

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登場人物紹介

■架神恭介

作家、漫画原作者。
マンガ新連載研究会の共同主催者。
過去に連載した漫画は二作とも打ち切られたが(『放課後ウィザード倶楽部』『こころオブ・ザ・デッド』)、その分、並々ならぬ経験値を得ており、おれの発言は傾聴に値する。

■ごとう隼平

漫画家、東京ネームタンク講師。
マンガ新連載研究会の共同主催者。
人さまの作品に対して、架神が後先考えず好き勝手なことを言うので、必然的にフォロー役に回らざるをえない大変な立場。
必死に言葉を選んだり、議論をポジティブな方向になんとか誘導しようとする姿勢から、最近は会員からも「守りのごとう」と呼ばれている。

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