(二)-4

文字数 290文字

「どうして別件逮捕しない」
 公安の男が尋ねてくる。
「下手に逮捕して黒幕に雲隠れでもされたら困る。それに今回の一連の事件、大きくなりすぎだ。だから根本から解決しなきゃダメなんだ。下っ端なんかいくら逮捕したって、掃いて捨てる程いてきりがない。だからあんた方公安を巻き込んで一網打尽にしてやろうと捜査チームができたんだ」
 そう話ながら市波は車を発進させた。しばらくまっすぐ進むと、コンテナとコンテナの間の通路から男がとぼとぼ歩いて出てくるのが見えた。
 市波は歩いてきた男の前に車を停めて、運転席の窓を下ろし、男に向かって「話は聞いている。早く乗れ」と声をかける。
「市波さん……」

(続く)
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