思いがけない絆

文字数 7,539文字

 俺の身体中は今や傷だらけだった。傷口からは溢れるように血液が流れだしている。手で押さえても掌がぐっしょりと濡れ、絵具のように真っ赤に染まる。依然として出血が止まらないところを見ると、傷は思ったよりも深いらしい。死因が出血多量、なんて。俺を庇って死んで行ったケンにも申し訳が立たねェな。そんな詰まらない死に方なんて、アイツ等が許して呉れない。俺は、まだこんな所で死ぬワケにはいかないんだ。
 そう思い、土にまみれた両腕に力を入れ、地面にうつ伏せになっていた身体をなんとか起こす。朦朧とした頭、疲労の所為で、ぽかんと開きっぱなしになっていた口からは血の混じった唾液がだらりと落ちた。前方には、さっきまで死にかけていた天帝ザイオンが、溌剌とした表情をしながら腕組みをして立っている。
「…… … ……クックック… …… …… …」
 奴は今や、片桐トオルの超能力を吸収し、生まれ変わっていたのだった。天帝ザイオン、本名墨田学(すみだまなぶ)。奴は或る日目覚めたその恐ろしい超能力で、この戦闘都市大阪を壊滅状態に陥れたのだ。まさか、墨田がこれほどの恐ろしい力をもっていたとは想定外だった。

 今回の任務は初めからおかしかった。天帝ザイオンの抹殺が今回の俺たちの任務だったのだが、政府犯罪者抹殺センターの受付で任務の発令をもらったトキ、そこに書いてあった撃滅対象の名が、『天帝ザイオン』と書いていたにつけ、天帝ザイオンて何?その中二病みたいな名前、何?となったのである。そうすると、受付のケニーまみこが、シラナイヨワタシ、ワカラナイワヨ、というもんで、俺達は腹を抱えながらケニーまみこを冷やかし、まずモスに行った。そして、一時間ほど休憩をしていたのである。
 まず異変に気付いたのはケンだった。街の様子が何やらおかしい。街を人々が喚き逃げまどって居る。
「おい、印原(おんばら)、片桐。あれ、見て見ろよ」
 ケンが俺達に向かって云う。だが、そのとき俺達は、クラスの女子のどの子が好きなのか、ガチ告白の最中だったのだ。そして、俺は既に片桐トオルに好きな子を吐いていたのである。
「ああ!?そんなの、後でいいだろ!?こっちゃ今、ちょー忙しいんだぴょ」
 俺は自分の好きな子を告白してしまっていた手前、片桐の好きな子を絶対に吐かせないといけない。だが、当の片桐トオルは、既に気づいていた。つまり、此の男は好い感じに云えばクレバー、平たく云えばずる賢い、悪く云えば蛆虫野郎なのである。
「なんだよ、ケンったら。… …あ、っしっかたねェなァ。俺達、任務っちゃーやらんちゃいかんったい、のう。印原(おんばら)ルーク君よぉ」
「あっ、片桐トオルっ!てんめぇ!……任務なんて後だっ!早く好きな子言いやがれ!」
 俺は一瞬の内に頭に血が上って、テーブル越しに向かいの片桐の胸倉を掴む。
「おいおいおいおい、お前等、詰まんねーことやってんじゃねーよ。マジでなんか、えらく大事になっちまってんゼ。これって、天帝ザイオンの仕業じゃねーの?」
 ケンが窓の外で逃げまどっている人々を指さしながら云う。だが、俺達も窓の外を見てみるも、見えるのは走り回る住民のみであり、肝心の天帝ザイオンがどこにもいない。のみならず、まずその、奴による被害そのものがどこにも見当たらなかったのだ。
「なによ、ケン。ただ人が走り回ってるだけじゃんね。なーんも、まだ、俺達、撃滅学徒(ゲキメツガクト)の耳には入ってないっつーの」
 俺は片桐の胸倉を掴みながら、冷やかすように云う。が、今度は片桐が俺の胸倉を掴んだ手を無理やり引き剥がした。
「てめー、詰襟(ツメエリ)が、歪んじまうじゃねーかッ」
 あ、やっばー。片桐の眼が地獄の底からの鬼の眼になっている。こいつは学ランを壊されるのを以上に嫌うのである。少し常人とは違う変わった性質を持ち合わせている奴なのだ。
「しゅんましぇん…… …」
 俺はしゅんという気持ちを猛烈にアッピールしながら、申し訳なさそうに云うと……
「では、いきましょう!!!」
 今度は一転、清々しい顔でケンと俺の腕を掴んでモスの入口へと向かおうと引っ張った。
「ああ、急ぐぜ!」
 ケンが片桐に合わせて云うのだ。
「は。はぁ!?片桐、てんめー!好きな子、さっさと吐けよぉおお」
「後、あとだよ、そんなモン!」
 そう云いつつ、片桐は悪戯っ子みたいな顔で笑った。ケンも俺と片桐のそんないつものやりとりを見ながら先頭をきって走って行ったのだ。

 ビル群が、幾つも大爆発を起こしていた。それは信じられない光景だった。俺達が撃滅学徒として政府犯罪者抹殺センターに登録した三年前から、今日まで、俺達はこんな恐ろしい光景を見たコトがない。43歳であるケンも、驚愕の表情をしながらその光景を眺める。
「俺が、学徒に登録した30年前からも… ……こんな光景… ……見たコトがない…… …… …」
 俺と片桐は、その驚愕の表情で呟くケンの言葉を聞いてなるほどと思うとともに、まず留年しまくってる己をなんとかしろよと思うのは学徒のメンバーの共通認識なのであったのだが、誰もそのコトを突っ込めずにいた。
 戦闘都市大阪は、かつての首都東京が謎の軍団サイレスに壊滅せられて以来、いそいで時の政府がせっせという感じに開発した防衛都市なのだった。だから、大阪の県境のところはもうそれこそ物凄い兵器が配備されており、数多のテロリストが首都大阪の壊滅を目論んだものの、それは叶わぬのだった。首長も完全防壁で幾重ものぶっとい壁などに囲まれたところで公務を行っているので、ほぼ完全に安全なのであった。かつ、万が一、それらの防壁が突破されたとて、心配には及ばない。首長は超能力は使えないものの、身体を大改造していた為、身体中から一万個ほどのミサイルを一斉に発射できるサイボーグ手術を施しているので、そうなると襲ってきたテロリストも巻き添えを食らうコトは必至であるので、躊躇してしまうのである。以前、偶然にも首長と俺達三人が会合の機会を頂きお話をしたトキなどは、
「このミサイルを使うのは一体いつになるのやら… …クックック……ペロリ…… …」
 と、舌なめずりをしたところを見て俺達は大人の恐ろしさをこれでもかと思い知らされたのである。
 そういう戦闘都市大阪。人によっては城壁都市大阪とも云うが、そんな都市がいともたやすく破壊されている光景に俺達は呆気にとられて口をあんぐりと開けていたところ、100メートルほどの前方に宙から降り立つ人影が見えたのだった。
「…… …!!…… …あれが、天帝ザイオンか!!」
 ケンが吠えるように声を上げたが、俺と片桐は別の意味で更に口をあんぐりとさせていたのである。
 そこには、かつての中学の頃の同級生、墨田学が立っていたのだった。上下スウェットに、真っ赤なカーテンをマントのようにつけている。
「まさか、これを、墨田がやったのか!!」
 片桐トオルが大声をあげた。
「確かに、墨田がやったのだろうか!?」
 俺は混乱に任せて続けて叫ぶ。
 そうすると、墨田学、もとい、天帝ザイオンが口を大きく開けてわらった。
「はっはっはっは!君達は、愚かなマリオネットだね」
 俺達を嘲笑するように云った。
「…… …マリオネットて、何?」
「… …難しい英語を云いやがる」
 俺と片桐はあほなので、墨田の云うことが分からなかった。
「あほ!スーパーマリオのことや!」
 ケンが俺達を嗜めるように云うので、そのトキ気が付いたのである。確かにそんな発音をしていた。我ながら恥ずかしい。てへぺろを俺がしようとした矢先… …
「あぶない!!!」
 ケンが俺達を庇うように眼の前に立ちはだかったかと思うと、ケンの首が身体から一瞬にして切り離され、地面に落ちた。俺と片桐はスローに其れを見た。俺達の両手に爆発的に熱がこもる。
「貴様アアッツ」
 片桐が指先から針のように鋭い何百ものつららを宙に発現させる。俺は頭の上に両腕を伸ばし、本能の儘に直径10メートルほどの火の玉を発現させた。
「………ッツ、死ッねええええええええええええええ!!」
 片桐が右手を力の限り振り下ろし、俺は両腕を一気に振り下ろすと、まず夥しい数のつららが飛んでいき、天帝ザイオンの四方八方から奴を串刺しにした。その後から、遅れて俺の極大のファイヤーボールが着弾する。着弾した付近はとてつもない爆発が発生し、巻き添えとなって市民が幾らか消し炭になった。
 俺達は、とてつもない全力をだして、めっちゃ疲れてふう、と云った、途端だった。
「…… …げっ、カッフッツ」
 俺の隣で片桐の声がしたので、俺は直ぐに横を向いた。
 そこには、片桐の後ろに天帝ザイオンが立っており、後ろから右腕で片桐の腹に風穴を開けていた。片桐が血を吐き、俺の顔を見つめる。
「片桐っ!!」
「… ……印原(おんばら)ルーク君… ……」
 天帝ザイオンが片桐の腹から、腕を引き抜くと、片桐がどしゃりと地面に倒れた。既にこと切れていた。俺は呆然とした儘、ぷっつーん、となる。
「……… ……… …きっさ………、まあああああああああ」
 手の中に命を削るような力が宿っていく。
 ケン。この人は、身寄りのなかった俺と片桐を、まるで父のように育ててくれた人だった。そして、撃滅学徒を紹介してくれたのも彼だった。云わば命の恩人であり、身寄りのない俺達にとっては育ての父も同然だった。そして、父のくせに学徒だった事に二度驚いた。
 片桐は、血こそ繋がらないけれども、兄弟同然であるのだ。俺は一気に、血よりも濃いものを作ることがあった二人を一気になくしてしまったのである。それはもう、悲しみは図りきれないのだった。
「うおおおおおおおおおおおおお」
 俺の渾身の右拳が、怒りのスピードを伴って、天帝ザイオンの頬に着弾するべく、っちょっと触れた。ところで、天帝ザイオンは顔をぐるりと横に回転させて、俺の拳の勢いをすべて殺したのである。俺は空振りした右手の勢いをそのままに、態勢を思い切り崩す。そこに、天帝ザイオンの渾身のリバーブローが腹に突き刺さった。
「ゲッツフッツ………」
 吐瀉物が中空に飛び散り、俺は、無残にも地面に倒れ込んだ。
 そこからは、天帝ザイオン様のショータイムだ。俺の身体は弄られ傷つけられ、数々のサイキックにより、俺の身体は夥しい流血で一瞬の内に染まった。これほどまでの力の差。一体、どうすれば良い。ケンと片桐の仇!どうやったら討てる!!
「…… …… …くそっ!…… …くそ!」
 地面に拳を叩きつけながら叫ぶ俺の目の前で天帝ザイオンが卑しく笑う。
「…… …くっくっく。…… …どうだい、…印原(おんばら)ルーク君。悔しいかい?悔しいという気分がどのような気持ちか、やっと分かったかい?」
「…… ……」
「…… … …中学の頃は、よくもまぁ、あれほどに死ぬほどいじめてくれたね。あの頃の僕は、本当に地獄のような毎日だったよ。」
「…… … …」
「… … …特に、ケン君の力に任せての全体体重を乗せたラリアットは、首が身体から外れるかと思ったのである。」
「… … …それは… …ケンが、墨田やばい、きもい、ゆうて、それで………俺と片桐は、のりというか、なんというか…、あんま、ようわからんと…」
「黙れ!!!… …一つ聞くが」
「……な、なんなりと……」
「いじめられっこの日本に在住する数、お前分かるか?」
「… …分かりません」
「… …めちゃめちゃいっぱいや」
「んなあほな」
「… … …その彼らの、絶望の毎日の、それでも生きようという思い。そのすべてが力となって一つになり、俺を生み出したのだ。… …この、天帝ザイオンを!!!」
 俺は、名前さっぶーと思ったが、何も言わなかった。
「…… … ……くっ、……… …くそがッ!!!」
 まさか、中学の頃やっていたいじめが、このような事態を生み出してしまうとは。身から出た錆とはまさにこのコトなのである。これは、俺とケンと片桐の所為で起こった事態だったのだ。今、戦闘都市大阪が壊滅の危機に直面している理由の一端は、俺達が天帝ザイオンをいじめたのコトにも原因がある。…… …… …そのコトは政府犯罪者抹殺センターに口外されてはいけない。抹殺センターが感知する前に、俺はこの天帝ザイオンを早急に隠滅、もとい撃滅しなくてはならない。…… …… …だが、その為には力がいる!力がいるのに!今の俺は非力すぎる!!
「くそっ!!!…… …畜生!!!!」
 俺は自分の非力さに眼から涙があふれ、ぼとりぼとりと地面に落ちた。土の中に涙がしみ込んで行く。
「…… …はっはっは!!あまりの不甲斐なさに我が身を呪ったか!そうだ!!もっと悔しがれ!!悔しがって!俺に力を与えてくれ!!それにより、この天帝ザイオンは更なる力を手にいれるだろう!!」
 墨田があほみたいに大声を上げて笑った。その時
「… ……情けないですよ。印原(おんばら)ルーク君」
 どこか中空の方から、聞き覚えのある無暗に上品な声色が聞こえてきた。
「…… …!… …この声は…… ……」
 ふわりと浮かぶように俺の隣に降り立った金色の長髪の男。こいつは、鮫島真(さめじましん)。海洋一代決戦のトキに一緒に戦った沖縄にいる撃滅学徒の一人だ。必死で沖縄弁を隠している。
「さめじー!!来てくれたのか!」
「…… …私が来たからには、キミにはもう、指一本触れさせませんよ!」
 鮫島はそういうと、水の超能力を発揮するサイキッカーに相応しく、白のタキシードを一気に脱ぎ捨て、ブーメランパンツ一丁になった。まさか、かつてのライバルが駆け付けてくれるとは!!俺はその事実だけで、まだ戦える気がした。だが、その時、俺の後方から幾つもの走る足音が聞こえてきた。俺は何事かとそちらに向かって振り向いた。
「…… …!!……あんたたちは!」
 そこには、なつかしい顔ぶれが並んでいた。
「おまたせしたでごわす!!!」
「なーにやってンのよ!なさけないなぁ、ルーク!!」
「ったく、だからおめーは、俺がいないとなぁんもできねェんだよ!」
「ルークさまぁ!大丈夫ですかぁぁあ!」
印原(おんばら)さん。私は、何も、別に、助けに来たわけじゃ、ありませんから」
 まず最初の男、こいつはプロの相撲取りである、榊原権三郎義経(さかきばらごんざぶろうよしつね)プロだが、横綱とか大関とかではないが、そういう枠では計れない未知の強さを持つ。素肌に暗黒絹糸で縫った漆黒の回しをつけている。そして、次に少し不良っぽい女性。口は悪いが気の良い不良でリーゼントの女性の、悪魔(あくま)ポリス()。そして、次がこの五人を束ねるリーダー、(おおぎ)小木(おぎ)わんたん32歳、次に可愛らしい小悪魔的な女の子(実は内緒であるがちょっとこの子とはちょめちょめがあった)番場(ばんば)ガリランダーふさこ。そして、最後に、少しツンデレの要素を兼ね備えるそう可愛くはない妙齢の女性、川島姉妹(かわしましまい)である。一人だが、姉妹。彼女の中では二人いるコトになっているらしい。意味が分からない。
「…ありがとう!!!!!」
 俺は、今や心の中が幸せのしの字に染まっていた。まさか、俺のピンチに、これほどまでのかつて拳を交わしたものたちが集まってくれるとは。まさしく予想外の展開であった。だが、その奇跡的な出会いは、まだ終わらなかったのである。
「大丈夫かーい!!!」
「…!」
 俺は天空を見つめた。
「この…… …この声は…… ……」
「大空スカイ!!!只今参上!!!!」
 大空スカイ。鳥族の中で勇者の称号を持つ鷹みたいな奴。過去に敵地に赴く際の、途中の鳥族の村に立ち寄った際、知り合いになった。それだけの関係である。
「まさか、貴方まで来てくれるなんて………」
「何を云っているんだ。俺達はもう兄弟じゃないか。それに、今日は俺の弟も来ているんだ」
「なんですって!?」
「ああ。きてくれ、弟よ」
「…… …うす。おいどんは、角力丸でごわす」
 そう自己紹介しつつスカイの後ろから現れたのは、プロ相撲取りっぽい見た目の角力丸という男だった。かっぷくの良い素肌に回しをつけている。間違いなく近距離パワー型の能力者だろう。
「加勢有難う。…… ……なんて…… …なんて俺は果報者なんだ………」
 俺は今や、生きる力が充足していた。俺は身体の奥底から凄い力が漲り、両手にも握力が戻って来た。俺は地面から飛び起きるように立ち上がった。
「さあ!まだまだ、俺はこれからだぜ!!」
 俺は天帝ザイオンに向かって、思い切り啖呵を切った。天帝ザイオンは、無言でこちらを何も云わずに見守っていた。そのとき、俺は唐突に気分が悪いような気がしてきた。嘔吐の予感がして、なんとか口を手で覆う。だが、その嘔吐感は一気に腹の底から湧き上がって来た。
「あ、あかん!…… …ゲエー!!」
 俺は思い切り吐瀉物を吐いた…… …かと思ったが、それは只の吐瀉物ではなかった。吐瀉物に見えるそれは、天空に飛び上がっていき、弓矢の形へと変わり、輝き始めた。
 それを契機として、空から光の一団が雲の隙間から大勢あらわれてくるのが見えた。一体これはなんなのだろうか。
「…… …これは…… …一体なんなのだろう………」
 そう感じたとき、唐突に俺の眼の前にまばゆい光が現れ、俺は思わず眼を背けてしまう。次に眼を開けたトキ、そこには一人の男性が立っていた。だが、不思議なコトにその男の背中にはこれでもかと云わんばかりの大きな翼が生えていた。
「……… ……あ、あんたは一体誰なんだ……… …」
「私は天使長ルシファーです。あなたを助けに来ました。」
「る、ルシファーだって!?」
「はい。私は、この決戦のトキの為、あなたの身体に隠れて寝ていました。しかしその時はめちゃめちゃ疲れていた為、決戦のトキをいつしか忘れ、熟睡してしまっていたのです。ですが、突然物凄い振動で眼が覚め、そういや決戦だった、と思い出し、あなたの吐瀉物に混じって覚醒したのでした。」
「そ、そうでしたか。…… …道理で、ちょっと酸い匂いがしたなと………」
「うるさい!!!」
「…… …失礼しました。ですが、そういう事なら、俺は大歓迎です。どうか、俺を助けてください。」
「良いでしょう。あなたの身体に居座らせて頂いたお礼です。いや、家賃分は働かせていただきますよ。…… …ところで、私だけでは何かと不自由なので。付き人も一人、紹介させて頂いても、よろしいでしょうか?」
「……あ、ああ。別に構いませんけど…… …」
「リキッド!…来い!!」
「…… …ぶふぅ。ワイが、リキッド子安(こやす)でごわす」
 リキッド子安という名で呼ばれたその天使は、しかしかっぷくの良い姿に、天使の翼を背中に備えつつ、素肌に回しをつけているのだった。
「…… …失礼ですが、リキッドさん。あなた、昔は力士では?」
「うるさい!!!!」
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