第37話 不安と期待

文字数 476文字

 無収入であるから、年金の支払いは免除されている。
 健康保険には加入していない。
 全く信用のおけない、年金機構のホームページからの、私の将来受け取る試算額によれば、今のところ年間約84万、ひと月に換算すれば約7万となっている。
 それまで、生きていればの話だが。

 将来のことを思うと、不安になる。これは、万人に共通であるというのは、真実らしい。
 大金持ちは、その余りある資産に莫大な心配を払うというし、私のような者は、単純にお金に困ることが予見できるので、不安に囚われる。
 いや、何もお金に限った話ではなく、不安を見つけようとすれば、いくらでも見つけられる。
 不安であるからこそ、人間であるのだ、ともいう。

 ところで、私は何のために部屋にこもって、この小文を書き続けているのか?
 あの遊戯場からの逃避!
「いろいろ、旅をしたけれど、結局何も変わらなかった」
 疲れた旅人が、賢者に言ったという。
 賢者、こたえて曰く、
「そりゃそうだろう、きみはどこに行くにも、自分自身を連れていったのだから!」
 どこにも行かない私は、どうしたらいいのだろう。── 同じことか。
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