七色の怪異
文字数 320文字
楽園の入り口
俺があの怪異と出会ったのは、小学生の頃だった。
両親とどこかを旅行していて、いつの間にかはぐれてしまっていた。
奇妙な光景が広がり、泣きそうになったとき、あの怪異があらわれたんだ。
七色のチョウのような翼を持った生き物。
二本足で立ち、女性のような胸のふくらみ、服は着ておらず、皮膚が真っ白で輝いている。
俺は恐怖を感じるどころか、彼女に魅惑されていた。
七色の怪異はほほ笑むと、俺に手を差し出してきた。
俺はためらいもなく、その暖かな手をにぎった。
ふたりで手をにぎり合いながら、奇妙な世界を歩いていた。
――目を閉じると、いつもあの怪異のことを思い出す。
後悔してるんだ。
なぜ俺は――『楽園』を出てしまったんだろう、と。