第6話

文字数 625文字

僕は小さい人にそれ以上しゃべらせないように、とりあえずできるだけ真剣な顔でいっぱい頷く。先手を打つ。うんうんうん。うんうんうんうん。
勢いよく、とにかく頷いて見せる。これが一番良い対策だとは全然思えないけれど、これ以外に思いつかない。

なんとかしないといけない。いずれまた小さい人がしゃべりだす。

うんうんうん。うんうんうんうん。
とにかく時間を稼ぐ。考えろ。考えろ。どうする?ベーコンはとっくに冷めてる。

小さい人はしばらく驚いたようにこっちを見ていたけれど、やがて楽しそうに僕の真似をしてうなずきだす。

そうそうそうそう。そうなんです。とっても大きかったんです。うんうんうんうん。

うんうんうんうん。
なるほどなるほどなるほどなるほど。そうかそうかそうか。

小さい人が僕を見ながらたのしそうに頷いている。うんうんうん。うんうんうんうん。そうなんですそうなんです。そうそう。そうそうそうそう。

ほどなくしてまた花火が上がりだす。始まったばかりなのにすでにクライマックス。怒涛のスターマイン。メリーゴーランドも回っている。笛と太鼓とオルガンの音が聞こえてくる。うんうんうん。うんうんうんうん。「13番台、スタートしました!14番台、スタートしました!15番台、16番台スタートです!」アナウンスが場内に響き渡る。どよどよ。ざわざわ。にわとりの声が聞こえてくる。豆腐が。ぼくのお豆腐が。

まいった。まいったな。
豆乳に、なってしまうのか。
子どもたちは今だけを懸命に生きている。
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