第4話

文字数 4,731文字

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******************

第一に、彼等は

地球から二十光年離れた天体に住む惑星人で

二十万年前に

当時地球上に棲息していた原始人に

自らのDNAを移植したそうです。

すなわち人類の祖先ということになります。

第二に、三十年前に

彼らの惑星は未知の宇宙線に暴露したそうで

その結果子供が生まれなくなったそうです。

第三に、そのため彼等は

絶滅の危機に瀕しており

助けを求めて地球に来たということなんです

第四にですね。

彼等の惑星は二十光年離れていますから

ワープを繰り返さなくてはならず

それにはかなり大型の宇宙船が必要だそうで

ニューヨーク市全体を覆うような

大型な乗り物になったのは

そういう理由だったそうです。

現在までに公表されたのは、以上です。

国連前から高橋がお伝えしました」

「はい。高橋さん、ありがとうございました

本日も、各方面の専門家方々に

集まってもらいましたが

まず国際天文台長の江藤さん、

二十光年先の惑星と言われても

ピンときませんが、そのくらいの距離の星に

ついては、どのようなことが分かっているの

でしょうか?」

「そうですね。

我々も太陽系外惑星探査プロジェクトなどを

行なっていますが、

二十五光年先のベガという恒星、

つまり七夕の織り姫星ですが、

そこには太陽系と似た惑星系が

あることが分かっており、その意味で

ハビタブル・プラネット*が

存在する可能性が示唆されています。

       * Habitable Planet

しかしまあ、

現在我々が推測できるのはその程度ですね」

「有難うございました。

では、次に

国際霊長類研究センターの山本教授に

お伺いしたいと思います。

彼らは人類の祖先だということですが

これはどのように思われますか?」

「彼らの言う二十万年前ですが

ちょうどこの頃ホモ・サピエンス

つまり現在のわれわれの先祖が

誕生しているんですが

それが突然変異でなく

宇宙人のDNAを移植した結果だったとは

驚きですね。

今後の彼らの発表が楽しみです」

「そうですか。

では、東都大学宇宙線研究所の宇佐美教授に

宇宙線についてお話を伺いたいと思います」

「まあ、簡単に言うと、

宇宙線とは宇宙空間を高エネルギーで飛び交

っている極めて小さな粒子のことなんですね

地球にも多くの宇宙線が

地表に降り注いでいます。

これらの粒子は私たちの体や物質を

すり抜けていくんですね。

一方で、重い星が寿命を終える時に

「超新星爆発」というのを起こすんですが

このとき高エネルギーの宇宙線が

たくさん生まれていることなどが

解明されつつあるんです。

まだ我々にも分からない現象が多いのが

現状ですが、未知の高エネルギー宇宙線が

生命体に影響を及ぼすことは

充分考えられますね」

「そうですか。

では次に生殖医学がご専門の

東都大学医科学研究所の金子教授に

お尋ねします。

宇宙線により子供が産めなくなるのは

何が原因だと思われますか?

「そうですね。大きく分けて

生殖に関係のあるホルモンによるものと

遺伝子の突然変異によるものとが

考えられますが

おそらく彼らはすでに原因の分析をした結果

わざわざ地球まで来ているのですから

彼らの次の発表を待ちたいと思います」

「先生方、どうもありがとうございました。

では、次のニュースです

   # # # # # # # #

「なんだか難しくて、よく分からなかったなあ」

そう言って、父親はテレビを消した。

「ねえ、おにいちゃん、散歩しようよ」

「赤い靴を履きたいんでしょ」

「あったりぃー」

ふたりは昼食を食べ終えると

家の周囲の道をぶらぶらと散歩した。

道端には、ピンク、黄色、オレンジ、青など

の「三色すみれ」や、

品のある黄色い「マーガレット」など

様々な花々が小さな群をなして咲いている。

菜々美は隣に咲いている

「きんせんか」に目を止めた。

「おにいちゃん。きれいなオレンジ色だね」

「菜々美は

きんせんかの花言葉、知ってる?」

「知らないよ」

「別れの悲しみ、なんだって」

「へえーっ!  こんなに大きくて

派手なオレンジ色の花なのに……」

菜々美は大きな目をさらに大きくして

花のそばに顔を寄せた。

土のなかから数十の葉っぱが

いきなりにょきにょきと顔を出し

全体としてこんもりとドーム状に

固まっている。

深緑のドームからは

細くて長い茎がいくつも伸びている。

その上にオレンジ色の花弁が

のっているのだが

首を長くして誰かを待っているようで

とてもユーモラス。

別れた人が帰ってくるのを

首を長くして待っているのだろうか

と翔太は思った。

「ハリスの道を歩いてみようか?」

「うん。でもちょっと待って」

と言って、菜々美は赤い靴の裏に付いた泥を

丁寧にティッシュで拭いた。

ハリスの道は綺麗に舗装されていて

海辺のすぐ脇を通る。

翔太は海を見ながらぼんやりと歩いていたが

妹がいないことに気がついた。

振り向くと道端にしゃがみこんでいる。

また赤い靴を見ているのかな?

と思って近づくと

タンポポの綿毛を飛ばしていた。

ふぅーっと吹くたびに

白くて細かい綿毛が海風に乗って飛んで行く

彼はそれを見ながら小さな背中を撫でた。

もう小学校一年生なんだなあ。

こないだまで保育園に行っていたのに

早いものだなあ

としみじみ思った。

ひとしきりタンポポの綿毛飛ばしを

したあと、二人はまた小道を歩いた。

少し風が強くなってきたようだ。

「そろそろ帰ろうか」

菜々美も少し体が冷えてきたようで

こっくりと頷いた。

家に帰ると

父親がテレビのニュースを夢中でみていた。

「なんだか生殖ホルモンに

異常をきたしたから

子供を産めなくなったと言っている。

そして突然変異で

『これを治すホルモンを持っている人間』が

地球にもいるらしい。

なんだっけ、別名が博愛ホルモンとか

言ってたよ。

どういう意味だろうね」


******************

ここからは、パソコン向けです

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第一に、彼等は地球から二十光年離れた天体に住む惑星人で

二十万年前に、当時地球上に棲息していた原始人に

自らのDNAを移植したそうです。

すなわち人類の祖先ということになります。

第二に、三十年前に彼らの惑星は未知の宇宙線に暴露したそうで

その結果子供が生まれなくなったそうです。

第三に、そのため彼等は絶滅の危機に瀕しており

助けを求めて地球に来たということなんですね。

第四に、彼等の惑星は二十光年離れていますから

ワープを繰り返さなくてはならず、それにはかなり大型の宇宙船が

必要なそうでニューヨーク市全体を覆うような大型な乗り物に

なったのはそういう理由だったそうです。

現在までに公表されたのは、以上です。

国連前から高橋がお伝えしました」

「はい。高橋さん、ありがとうございました。

本日も、各方面の専門家に集まってもらいましたが

まず国際天文台長の江藤さん、二十光年先の惑星と言われても

ピンときませんが、そのくらいの距離の星については

どのようなことが分かっているのでしょうか?」

「そうですね。我々も太陽系外惑星探査プロジェクトなどを

行なっていますが、二十五光年先のベガという恒星

つまり七夕の織り姫星ですが、そこには太陽系と似た惑星系が

あることが分かっており、その意味でハビタブル・プラネット*が

存在する可能性が示唆されています。     * Habitable Planet

しかしまあ、現在我々が推測できるのはその程度ですね」

「有難うございました。

では、次に国際霊長類研究センターの山本教授にお伺いしたいと思います。

彼らは人類の祖先だということですが、これはどのように思われますか?」

「彼らの言う二十万年前ですが、ちょうどこの頃ホモ・サピエンス

つまり現在のわれわれの先祖が誕生しているんですが

それが突然変異でなく宇宙人のDNAを移植した結果だったとは驚きですね。

今後の彼らの発表が楽しみです」

「そうですか。では、東都大学宇宙線研究所の宇佐美教授に

宇宙線についてお話を伺いたいと思います」

「まあ、簡単に言うと、宇宙線とは宇宙空間を高エネルギーで

飛び交っている極めて小さな粒子のことなんですね。

地球にも多くの宇宙線が地表に降り注いでいます。

これらの粒子は私たちの体や物質をすり抜けていくんですね。

一方で、重い星が寿命を終える時に「超新星爆発」というのを

起こすんですが、このとき高エネルギーの宇宙線が

たくさん生まれていることなどが、解明されつつあるんです。

まだ我々にも分からない現象が多いのが現状ですが

未知の高エネルギー宇宙線が生命体に影響を及ぼすことは

充分考えられますね」

「そうですか。では次に生殖医学がご専門の東都大学医科学研究所の

金子教授にお尋ねします。

宇宙線により子供が産めなくなるのは、何が原因だと思われますか?

「そうですね。大きく分けて生殖に関係のあるホルモンによるものと

遺伝子の突然変異によるものとが考えられますが

おそらく彼らはすでに原因の分析をした結果

わざわざ地球まで来ているのですから、彼らの次の発表を待ちたいと思います」

「先生方、どうもありがとうございました。では、次のニュースです

       # # # # # # # #

「なんだか難しくて、よく分からなかったなあ」

そう言って、父親はテレビを消した。

「ねえ、おにいちゃん、散歩しようよ」

「赤い靴を履きたいんでしょ」

「あったりぃー」

ふたりは昼食を食べ終えると、家の周囲の道をぶらぶらと散歩した。

道端には、ピンク、黄色、オレンジ、青などの「三色すみれ」や

品のある黄色い「マーガレット」。

さまざまな花々が小さな群をなして咲いている。

菜々美は隣に咲いている「きんせんか」に目を止めた。

「おにいちゃん、きれいなオレンジ色だね」

「菜々美は、きんせんかの花言葉、知ってる?」

「知らないよ」

「別れの悲しみ、なんだって」

「へえーっこんなに大きくて派手なオレンジ色の花なのに……」

菜々美は、大きな目をさらに大きくして花のそばに顔を寄せた。

土のなかから数十の葉っぱがいきなりにょきにょきと顔を出し

全体としてこんもりとドーム状に固まっている。

深緑のドームからは細くて長い茎がいくつも伸びている。

その上にオレンジ色の花弁がのっているのだが

首を長くして何かを待っているようで、とてもユーモラス。

別れた人が帰ってくるのを首を長くして待っているのだろうか

と翔太は思った。

「ハリスの道を歩いてみようか?」

「うん。でもちょっと待って」

と言って、菜々美は赤い靴の裏に付いた泥を、丁寧にティッシュで拭いた。

ハリスの道は、綺麗に舗装されていて海辺のすぐ脇を通る。

翔太は海を見ながらぼんやりと歩いていたが、妹がいないことに気がついた。

振り向くと道端にしゃがみこんでいる。

また赤い靴を見ているのかな、と思って近づくと

タンポポの綿毛を飛ばしていた。

ふぅーっと吹くたびに白くて細かい綿毛が海風に乗って飛んで行く。

彼はそれを見ながら小さな背中を撫でた。

もう小学校一年生なんだなあ。

こないだまで保育園に行っていたのに早いものだなあ

としみじみ思った。

ひとしきり、タンポポの綿毛飛ばしをしたあと

ふたりはまた小道を歩いた。

少し風が強くなってきたようだ。

「そろそろ帰ろうか」

菜々美も少し体が冷えてきたようで、こっくりと頷いた。

家に帰ると、父親がテレビのニュースを夢中でみていた。

「なんだか生殖ホルモンに異常をきたしたから

子供を産めなくなったと言っている。

そして突然変異で『これを治すホルモンを持っている人間』が

地球にもいるらしい。なんだっけ、別名が博愛ホルモンとか

言ってたよ。どういう意味だろうね」
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