第2話 精霊の舞う森の傍に立つ城

文字数 7,200文字

 燃料車が地を駆け、機械仕掛けの船が空を飛ぶような時代になっても、
 変わらぬ景色というものはある。

 遠く離れた地の景観など、特にそうだろう。

 魔法に富んだ国、光魔皇国タ-ニィヘイムの端、
 山の向こうより流れてくる大河の脇には、豊かな原生林が広がり、
 
 その森では、精霊達が舞う。

 一枚一枚の葉に口づけをして、枯れ葉を作っていた。

 晩秋、眠りから覚めたばかりの冬の吐息が流れ込み始めた頃、
 上を大きな影が通過していった。

 細身の洗練された黒馬車が、二頭の天馬に引かれ、
 森を一望できる切り立った崖の上に降り立つ。
 そこに、その城はあった。

「よう、じいさん。待ちかねたぜ」
「久しいな、幽霊城の黒豹。相も変わらず眠たそうな顔を向けてくるものだ」

 訪れたのは、唯一の顧客。
 夜の魔法使いを意味し、秘密裏に動くことに特化した組織、
 ナイトウィズという軍に属する諜報機関を束ねる男で、名をロキ。

 実名ではない。いや、神の名を賜ったと言うべきか。
 この国には、そういう風習があるのだ。
 同時にそれは、その高い地位を示した。

 歳もその分食っており、頭の毛は白く、体付きも細い。
 が、引き締まった眼光は衰え知らずなようで、行動力も落ちてはいないだろう。

 何せ、こんな僻地にまで態々足を運ぶくらいだ。
 それも甲斐甲斐しく、それだけ目の前の人間が有用であるとも言えるが。

 ワイルドという言葉がぴったりくる。黒革のコートにブラックジーンズで決め、
 部屋に置かれた革のソファーに優雅に、まるでここの王であるかのように腰を掛け、
 立派とは言い難い無精と言えるあごひげを撫でた。

「暇過ぎて死にそうだったんだよ。だからなるべく、歯応えのある依頼が聞きてぇ。眠気がぶっ飛ぶようなやつな」

「急くな。二度もあやつを怒らせたくないのでな」

 そうだったと幽霊城の黒豹ことジャガーは、隣に視線を向ける。
 そこに居るのは、体を丸めくつろぐ白猫。

 ではなく、城の主。

 絹糸のドレスでも纏うような美しい毛並みをしており、
 名前はビスケ。ビスケット菓子からきている。本人談だ。

 月夜の晩に時折、麗しの姫へと姿を変え、話すようになる。
 軽んじるような態度を見せれば、仕える騎士が黙ってはいない。
 
 その恐ろしさは、この国に住む者ならば、誰もが知るところ。
 百の剣を操り、闇で太陽を覆い隠して、昼を夜へと変えてしまう程の大悪霊。
 
 異名は百腕の巨人を意味するヘカトンケイル、城での呼び名は黒騎士だ。

 その昔、領主諸共処刑された怨みから現世へと舞い戻り、それに加担したこの地方の村や町を余すことなく焼き払った。そんな逸話を持つ危険な存在である。

 ゆえに傍目から見れば、滑稽なやり取りが前では行われた。
 怒りを買わぬ為に。膝をついた。恒例の口上も入る。

「姫、本日も従者達の力を借り受けたく」と。

 他国で言えば中将に該当する二将という地位にいる男が、一匹の猫にそうしたのだ。
 軍服の襟を正して。胸に光るクロスマークの階級章は泣いていたかもしれない。
 
 貢の品まで捧げられる。

 彼が手のひらの上の包みを開くと、鷲のような雄々しい顔が覗く。
 しかし体は魚で、同時に燻製の良い匂いが部屋中に広がった。

 好物を見て、ビスケの目が獰猛な光を帯びる。

「にゃーーー」

 間延びした感じの特徴的な鳴き声を上げるや、飛びついて、頭から齧り出した。
 むしゃむしゃ食べて、ご満悦といった表情。

 お気に召したことを確認すると、回り込んできた老体の尻がジャガーの隣へとおり、
 続けて溜息も落ちた。思いのほか、深い。

 左目にきざったらしくかけた片眼鏡(モノクル)まで、ずり落ちんばかりの勢いであった。
 下らんことをさせられたと、顔にはそう書かれてある。

「口にはできんが、気分を表すくらいは構わんだろう」
「まぁ、毎度アホにしか見えねぇからな。それで、今度の依頼は何だ」

「妙なものをばら撒く影が首都(ハレーリヤ)に潜り込んでいてな。隠れるのも巧く、おまけに腕も相当に立つ」

「それは難儀だな。で、そのブツはどんなもんなんだ」

 これだ、と懐から取り出されたものにジャガーの眉間の皺は寄る。
 三角に折り畳まれた小さな包み、内から光を発しており、
 それを受け取り開くと、お目見えしたのは、豆電球くらいの明るさを出す白い粉。
 薬とかの部類には見えないが。

「なんだこりゃあ。光石(シャインストーン)を砕いたもんか」

「あれは砕けば光を失う。幸せの小麦粉(ハッピーフラワー)として流通している」

「脳みそをスポンジにするやつなぁ。この国を内側から腐らせようってか」

「さあな。魔法の力も上がるそうだ。それで手をつける奴が後を絶たんでな」

「――確かに妙だ」

「混乱を招くにしては、デメリットの方が大きいように思わんか。敵に塩を送るような真似だ。軍事転用するには大きな課題もあるが、目的が掴めん。それに見合うだけのリターンは何か」
 
「金だろ。違う気もするが」

「それが安価で流通している。出所の相手は言った通りだ。変装の達人と考えて貰いたい。別の所へは移動していないはずだ。検問は敷いてあるのでな」

「なるほど。報酬を聞かせてくれ」

 薄ら笑いのようなものを返されて、妙な寒気をジャガーは感じた。

 言ったらそれは、悪い予感であり、「前金だ」と
 前のテーブルに音を立てて置かれた革袋の中身を見て、それが当たるであろうことを予見した。
 
 普段の額ではなかった。十倍以上も入っていた。裏があると読む。
 
「……金の小板(エルフタング)が十枚ねぇ。車が買える額だ。どうしたよ、急に。こいつはいつも通りの一割なんだろ」

「これが最後になるやもしれんのでな。今までよく働いてくれた礼も兼ねてな」

「てめぇこの野郎、ふざけんのも大概にしろよ。そらお前――」

 慰霊金になると言っているようなものだ。
 頭を抱えたくもなる。がりがり掻くくらいはした。

「紳士の嗜みなど説くつもりはないが、頭くらいは洗え」

「悪かったな。パウダーまみれの頭でよ。そいつはそこまでワンダフルデンジャーな相手なのかよ。嫌になるな」
 
「手練れの部下が三名やられた。狼を出そうと考えている」

「ほう、殺しの部隊フェンリルをか。影じゃなくて恐ろしい犬の方かもな。どこぞの爺共のな」
「マーダーナイツか。かもしれん」
 
 そこで、扉の脇から「それはないでしょうね」と声が飛んでくる。
 そこに立つのは、ロキをここまで案内してきた同居人のミークである。

 扉の上に頭をぶつけそうな程高い上背から、こちらを見つめ、カールの入った長い赤髪を掻きあげる。薔薇の香りがふわと舞う。
 
「あいつらはヒヒ爺共の財を守る番犬だもの。国外に行くことなんてまずないわ。いいえ、絶対って言い切ってあげる」

 口調云々の前に見た目からして、そっちの奴ではある。
 が、腕は相当に立ち、昼の間、城の警護を彼の悪霊から任される程の傑物でもある。
 生まれは同じ。隣に位置する千剣王国カルウェナン。

 こちらを魔法の国とするならば、犬猿の中にあるそちらは剣の国であり、
 それを操る騎士として、数年前まで軍に在籍し、活躍していた身。
 内情にはこの中の誰より詳しい。

「出張ることがねぇなら、そういうのがお得意な影の騎士団(シャドウソード)で確定か」

「ただな、死体となって戻ってきた部下に斬られた痕がなくてな。無数の槍で貫かれたような体となっていた。この意味わかるか」
 
等級騎士(プレシャスブラット)の仕業だろ。それとも死体を槍で突きまくるサイコパスとでも言いてぇのか。そもそも槍使いなんざ――」

「そうではない。魔法痕だけと言うことは、寝返った者の仕業かもしれん。無論、彼奴等の線の方が濃いとは思っている」

NW(ナイトウィズ)を仕留めちまうような野郎だしなぁ。ミーク、心当たりは。お前もそうだったろ」

「それだけの情報じゃあね。できる人間が多過ぎるわ。それに私も全員の魔法の剣(ルーンソード)を把握してる訳じゃないの」

「だ、そうだ。現状出せる情報はこんなもんだが、まあ吉報が届くのを待ってな。俺もくたばったりはしねぇし、ああ、そうだ。仕留めちまった場合はどうなる。この前みたく色はつけてくれんのか」

 鼻で笑うかのような笑みを返されて、それからこうだ。

「してから口にしろ。期待はしている」

 慰霊金を持参しておいてよく言えると、彼はそう思う。
 しかし、欠片くらいは思ってのことだろう。
 何も期待していないなら端から足を運んだりはしない。

 隣から尻が持ち上がり、「ロキさん、送っていくわ」と声が掛かって、
 来た時、同様、ミークが送っていく。

 パタンと扉が閉まると、それをぼんやり見つめつつ、自然と頭の中へと意識を向けていた。

 大元を見つけ出す為の常套手段と言えば、末端からの芋づる式。
 しかし既に試み追い詰めて、あるいは先手を打たれる形で、全て失敗に終わっている。

 三名の部下が消されているのだ。
 で、恐らく、目を晦ます為の手段として用いていた変装術がより巧妙なものとなり、
 今では見つけることすら叶わないと。

 そんなところだろうかと推察を立ててみたが、これが当たっているかは不明。
 ただこれを前提として動く。

 さて、どう攻めると、考えていると無意識に懐を弄り、煙草を出していた。
 昔は豹のマークのを吸っていたが、今はラクダ。同銘柄がなかったゆえだ。
 一本出して、咥えたところで、別の同居人の声がした。

 クリームのものだ。見た目は十歳前後の、出会った時から何ひとつ姿が変わっていない
 実年齢不明な女の子。
 もうここへ来て、五年以上は経つというのに不思議なこともある。
 
 二人と鉢合わせたようで、軽く会話したあと、小さな足音が部屋の方まで来る。

「開けて」と言われ、彼は腰を上げ向かうが、少し妙には感じていた。
 掴んだノブを引き、開けてみると、積み上げられたパンの山が目に飛び込む。

 かと思えば前で少し揺れ、弾むようにそれは横に退けられた。
 一緒に波打った琥珀色の長い髪が舞う。
 まるで宝石、そんな瞳を持つ神話の蜥蜴、ヴィーヴルを思わせるようなつぶらな瞳と目が合った。

「ジャガー、ごはん」

 大きな籠を抱えて元気な声を響かせ、自然と表情筋も緩む。

「おう、今日は随分張り切ったな。食いきれんのかよ」
「いいの。持ってくつもりだから。行くんだよね」

 タイミングが良いようには感じていたが。
 出掛けることを事前に察知していなければ、できない芸当だろう。
 ならロキが来ることを大分前から知っていた。その特異な力でだ。

「ああ、今度の相手は手強いぞ。ハレーリヤだ」

 なんとはなしに頭を撫で、廊下に出るついでに脇へと抱え上げる。
 時は金なり、正確な意味で言えば善は急げか。
 これは善行だ。国の為に働く。その為には寝坊助を起こす必要がある。
 
 壁に並んだ窓からは、日の光が差して影とのコントラストを生み、
 縞模様を作る日焼けした絨毯の上を歩んで、階段の方へ。

「わっと、おっと、ちょちょ」

 パンの山を落としかけ、慌てさせたのは悪く思うが、今はその力を借りたい。 
 彼女の持つ異能、その総称はデュナメイス。

 神の奇跡を人に齎す天使の名から来ており、早い話が真似のできない力か。
 彼女が持つのは、水晶に映る景色を自らの視界に投影するものだ。
 ここだと居場所を把握するのに役に立つ。

 何せこの城は広い。高さもある。なんと七階建てだ。
 その有り余る部屋を皆好き放題使うのだから、生真面目に一つずつ探していてはどうなる。
 日が暮れるという話。
 
「で、あいつはどこで寝てやがる。何階だ」

 文句を言いたそうな顔を向けてきたあと、彼女はこう口にした。

「フォウちゃんなら三階の奥の部屋だけど。こっち側のね。裏側じゃなくて、手前側の方ね」
「だからややこしいんだよ。何でこの城はこうもでかいんだ」
「お城だからじゃない」

 確かにその通りだと思い、ジャガーは前まで来た階段を上がっていく。
 今は二階に居るというのに億劫には感じていた。

 一段一段が広くとられた流線型に伸びる凝った造りで、無駄に疲れさせる仕様なのだ。

 手すりの向こうには広い空洞が設けられており、それは上の階も同じ。
 その上もだ。頭頂部まで続く巨大な吹き抜けが設置されており、
 屋上にはハンドルで開く天窓も用意されている。

 そこから光を取りこめば、一階ロビーまで滝の雫のように空の光が降り注ぎ、
 特に月夜の晩は、幻想的な風景を拝むこともできるが、おかげで実用面は先述の通り。
 
 多少の疲労を感じつつ、上がり切ったところで、どっちだったと彼は思う。
 奥と手前もそうだが、両サイドにも部屋はあり、迷った。
 というかド忘れした。それでまた少し思った。

「歳かな」
「まだ四十前じゃなかった」

「まだって何だよ。てめぇはいくつだ」
「ふふ、いくつに見える」

「今回は内緒じゃねぇのな」
「いつもそれじゃ、芸がないと思ってさ」

「考えてる訳だ。それで、どっちだったよ」
「あっちだって」

 指を差して貰い、フォウの寝ている部屋の前まで行った。
 一応ノックはした。当然返ってこず、踏み入った。

 奥のベッドの上、頭ではなく下着のケツが、毛布の中からこんにちはだ。
 側まで行って、クリーム下ろして引っ叩く。パチンと響き、

「にゃぃい!?」

 妙な声を上げ、飛び上がった。
 一緒に舞い上がった毛布を空中で掴むと器用にそれで身を包み、着地と同時に睨みつけるような目を向けてくる。

「お前、お前な。あとで絶対殺す」

 それにはこう返しておいた。肩をすくめて小馬鹿にするように言う。

「おぉ、怖い怖い。ぶるっちまいそうだぜ」

 とはいえ、これでも殺しを生業とする一族の出だ。
 裏ではそいつらはこう呼ばれている。

 ブラックハンド。もしくはファントムキラー。闇一族なんてのもある。

 まだ十伍、六の娘ではあるが、それらの呼び名に相応しい
 気味の悪いデュナメイスも持つ。

 ただここへ来た時、こうも聞いている。
 それが嫌になったから逃げてきたと。
 現に悔しそうな顔して、きゃんきゃん吠えるだけだ。

「この野郎――マジに覚えとけっ。夜道には気を付けろっ」
「気が向いたらな。それより仕事だ。今度の依頼は大金だぜぇ」

 そう言うと言葉に詰まるというか、何か葛藤するような顔を見せる。
 金の好きな奴だ。すぐに怒りを抑えて、しおらしい態度で尋ねてきた。

「いくら」
「俺の首に掛かった懸賞金は覚えてるか。なんと同額だ」

「百枚くらいだっけ、100エッジ札」
「その十倍だ」

「じゅ、十倍!? それって確か、えーとこっちだと」
「エルフが百だ。鉄の小板(ドワーフ)じゃねぇぞ。家が買えるな」

「大金じゃん。こうしちゃいらんねぇ」

 ベッドから降り、着替えを行うのを察して先に部屋から出た。
 そのまま廊下を戻って、一階まで駆け下りる。

 入り口の所、門の側で煙草を吸いながら、ミークと雑談だ。
 多少時間は掛かる。隣の男が朝していたように――――

 顔を拭き、フォウは鏡の前で化粧道具を取っていた。
 既に着替えは終えたあと。

 下はカーゴパンツ、上はレザージャケットと、髪も短くしており
 ボーイッシュに決め込む。

 スカート姿の女の子らしい格好をし、その様を見つめるクリームとは、対照的だ。
 ただ比較にならない点もあり、人知れず溜息が後ろで落ちた。
 答えは鏡の中、口紅が引かれてリップが厚く色付く。

「恨めしい。私がやっても背伸び感がな。どうしたら大人っぽく」

「何言ってんの」
「ううん、独り言。それよりフォウちゃんどれ食べる」

「苺とほいっぷの。ないならコロネ」 
「両方あるから終わったら言って」

「もうすぐ終わる。――あ、食ってからすりゃよかった」

 何はともあれちゃっと終わらせフォウは振り向く。椅子からも立った。
 パンを手に取りベッドに尻を落とすや「ほういやは」と、
 頬張りながら尋ねた。
 
「んん、今回どこ行くの。遠いとこなら飛行船出してくんねぇかなぁ。絶対あれのが快適だし」
「ハレーリヤだから、魔法の馬車だよ。そもそもあれは向こうの乗り物だから」

「へいへい、混乱が起きるってんでしょ。久しぶりの都だし、色々見て回るか。ミーク誘ってさ」
「今度の相手は手強いってさ。だからそんな余裕ないかも」

「あー、だからあの報酬。今までで一番じゃないの。まだ来て一年経ってないから知らんけど。どんな相手」

「私もまだ詳しくは聞いてないから、道中聞くべし」
「あい、了解」

 食べ終わると一緒に向かい、下で合流。
 ビスケもおり、談笑していた二人の側で、くしくし身を掻く。
 
 見送りに来てくれていたようだ。クリームからのトスがくる。
 パン籠が飛んできた。

「持ってて」
「おわ、ちょ!?」

 突然のことで落としかけたが、何とかバランスを取って持ち直し、それを見届けると、彼女は前の短い石階段を駆け下りて行く。
 城と言ったらの堀や、そこに掛かる橋は、天然の城塞に覆われたこの城になく、
 周りを覆うのはひらけた土の地面。

 豊かな森がすぐ傍にはあると言うのに、この辺り一帯は草木一本生えてはいない。
 それは呪いによる影響か、はたまた精霊によるものか。
 
 この場においてとは付くが、誰も興味を抱くことはなく、今はただ、取り出され
 握られた短いステッキを揃って見つめる。

 その細く尖った先に光が灯った。大気のキャンバスを滑る。
 ペンで描くように光の線が引かれていき、一台の馬車が描き出された。
 それを引く天馬もいる。
 
 ぼふんと煙が上がって、どちらもお目見えした。準備は万端とばかりの嘶きが上がる。
 皆で乗り込んで、ステッキが振られると、駆け始めた。

 すぐに浮遊感がきて、窓を開ければ、遠のいていく城の入り口が見える。
 ビスケが鳴いた。クリームが大きく手を振って返していた。

「行ってくるねー」

 側を鳥が飛び交う。やがて、天馬はその蹄を青い原野から白銀の園へと下ろすと、
 翼を帆のように広げ、西側から突風のように吹きつけてくる気流を掴んで、加速していった。
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