第17話 とても静かないい夜だ
文字数 1,194文字
それはこっちのセリフだ、マルシャとやら。
こんな夜更けにいったいどうした。
一人じゃトイレにも行けないか?
いえその、
私はアーテルメラン様に毛布をかけてさしあげようと……
そりゃまた随分とがった毛布だな。
頚動脈ぐらいならスパッと切れそうだ。
これはっ……! このナイフはその、
さきほどまで調理場で後片付けをしておりましたの。
つくづく愚かだな人間は。
犯行現場を押さえられてなお、
まだ弁明の余地が残っていると本気で思っているのかね。
ちっ、全部お見通しですのね……。
いずれにせよこれはオワリアの問題。
そこの騎士一人がどうなろうが、
アナタには関係のないことですわ!
そいつは困る。そこで寝ているくっころ女騎士は、
私にとってこの世界における大事な橋頭堡だ。
それに腕の立つボディガードを失うのは惜しい。
そうですの……邪魔をすると仰るのね。
せっかく見逃してさしあげようと思っていましたのに。
やれやれ、騎士アーテルメランが不憫だよ。
随分と喜んでいたからな。
君たちを、私がこの手にかけるのもしのびないというものだ。
ほざいてなさいな!
まずはアンタからあの世へ送って差し上げ、
ひぃっ! ア、アーテルメラン様!
いつの間に起きて……
ドッ! ガッ! ズバッ! ザシュッ!
グチャ、 ニチュ、 ゴリュ、
……今更、領主ヅラなんかしやがって……!
アンタが負けてから……私たちが……どれ……だ……け……
パパも、ママも、アンタのせいで……!
許すもんか……絶対に……、……。
……。
むにゃむにゃ、……はっ!
なんすかコリャ!? あたり一面血の海っす!
そうだな、犬のフンは飼い主がちゃんと始末しないとな。
それで、飼い犬に手を噛まれた気分はどうだね。
残念ながら、汝の願いは聞き届けられませんでした。
私は悪い神様なのだ。
そういや君は神様(自称)だったな……。
ならば背を向けていてくれないか。
あと耳も塞いでいてくれると嬉しい。
神は祈るものであって、願うものではないぞ。
致し方あるまい。10分で済ませたまえ。
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