第28話 女騎士が大切なものを奪われる話
文字数 2,021文字
敵キャラをいじめすぎると巨大化するのはお約束っす。
お前はやりすぎた、やりすぎたのだ!!
じゃあどうしろと!?
くっ、ひとまず退避だ! 屋敷が崩れるぞ!
こうなっては手がつけられんな。
姿を変えるだけでも厄介だってのに。
すごく…大きいです…
それで、皇帝ご自慢のグランド・アルメとどっちが強い?
フランスに敗北はない。
だが我が大陸軍の戦列歩兵には、空から降ってくる鋭い爪に抗う手立てがないのも事実だ。
ううむ、さすがに数の暴力で一方的にボコれるサイズではないか……。
ファ、ファルコン伯爵!
気を確かに! ぐへーーーーっ!
ファルコン! 貴様、味方を!
これ以上の狼藉は許さん、許さーーーん!!
ああーーっと!
アーテルメランくん ふっとばされたーーっ!!
どれだけヘナチョコなんだ貴様は。
即落ち2コマでももう少し粘るぞ。
やれやれ、お転婆なマドモアゼルめ……。
だが女に吶喊させたとあってはフランス人の名折れだ。
いくぞ、大陸軍突撃!!
ならば踏まれ潰してやろう。
俺は獅子が嫌いなんだ、『声のでかい獅子』は特にな。
うん、無理。逃げゆ。
フランス軍だっけ? 死ぬわアイツら。
いくら数が多いといっても、そう長くはもちそうにないっすね。
それになんだか、さっきより大きくなってるような。
火まで吹いてるじゃないか。
くそう、神が定めた物理法則を捻じ曲げやがって。
いったいどんな魔法だ。
はーいちょっと待ってねー。
君なんで今目を逸らしたのかなー。
お巡りさん怒らないから言ってごらん。
ええから言うてみ? ほれ。
おっちゃんはお嬢ちゃんの可愛いお口から聞きたいんや。
おん? ここがええのんか? ここか?
おっちゃん話すまでやめへんで。
こんなん初めてやろ?
ええやろ? ええんやろ?
話すって言ってるのに!!
言ってる! イってるからもうやめてえええ!!!
イってる最中に弄らないで!!
やめろ。君それ私がやったらゴッ●フィンガーになるアレだろ。
さて、では知っていることを話してもらおうか騎士アーテルメラン。
ゴッドフィンガーが見たいならそう言ってくれたまえ。
ごめんこうむる!
はあ……アレはファルコン伯爵が得意とする変身魔法、いわゆる肉体の再構成を応用したものだ。
それはなんとなく予想はついていたが……。
魔法が存在するとして、あそこまで大きくなれるものなのか?
強大な魔法はそのぶん膨大な魔力を消費する。あの規模なら高等魔術師500人分といったところだな。
ほほう。あの鹿め、見かけによらずMPめっちゃ多いタイプだったのか。
そうは見えなかったがな。
どう見ても脳筋タイプっす。
近接アタッカーそのものっすよ。
うむ……本来のファルコン伯爵は変身と近接格闘を駆使する前衛だ。
しかし……くっ、私がファルコンに大切なものを奪われさえしなければ……!!
ほう? 大切なものを?
奪われたと?
囚われの女騎士が奪われるものとは?
大切に守り続けていたものを、あんなにアッサリと奪われてしまうなんて……よよよ……。
どのように奪われたのか詳しく話してもらおうか。
できる限り詳細にだ!!
私は必死に抵抗したのだ。しかし屈強な兵士たちの逞しい腕によって私の身体はしっかりと押さえつけられていた。
そしてファルコン伯爵が私の大切なものに手を伸ばしたのだ。
「ほほう、美しい色をしておるではないか。どれ、この硬いものを出し入れするとどうなるのかな?」
やめろ! 汚い手で触れるな!
ああっ! そんな乱暴に扱ったら壊れる!
壊れちゃうう!
「くくく、堪え性のないやつめ。そうれ、もっと激しく出し入れしてやるぞ!」
あーーーっ! あっ、ああ……。
出てる、出ちゃってるぅ……。
そうして私は大切な剣を奪われてしまったのだ……。残されたのはこの鞘だけだというわけさ。
君たち剣と鞘でそんなに盛り上がってたの?
なんなの? 仲良しなの?
剣っていうと、ショベル納豆みたいな名前のアレっすか?
そんなクソ恥ずかしい剣なら手放して正解なんじゃないのか。
ああ、宵の黒剣は無尽蔵に魔力を生み出す『神器』だ。
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