第1話 弱小野球部

文字数 877文字

 嶋村遼也が通学する高校は、田んぼを埋め立てた周りに商店や民家もないへんぴな場所に校舎が建っていた。中学時代、遼也は野球部に入っていて、そのチームは強豪だったが、いつも後少しというところで地区優勝を逃していた。遼也は中三の夏の最後の大会で、どうしても優勝したかった。だから練習が終わっからも一人で素振りをくり返し、走り込みを欠かさず続けた。遼也はチームでレギュラーでライトを守り、打順では三番をまかせられていた。しかし夏の最後の大会も接戦になったが敗退した。結局、遼也の努力は功を奏することはなかった。その後、待っていたのは高校受験だった。遼也は今までの時間を全て野球に費やしてきた。そのため勉強の成績はかなり悪かった。気づけば入れる高校はこの学校ぐらいしかなかった。遼也は高校に入って野球部に入った。しかしそのチームは、うだつの上がらない弱小チームだった。部員も少なかったし入部した部員の中には野球を初めてやるといった、呆れ果てる人物も結構いた。上級生にも目立つ人物はいなかったし、打線が全く振るわなかった。遼也は学校のレベルが低いと勉強だけじゃなく、スポーツのレベルまで低いのかと嫌気がさした。そんなチームがいくら頑張っても甲子園など夢のまた夢だった。
 高二になって新学期が始まると、野球部にも新入部員が八人入ってきた。たった八人である。遼也はこの先、野球部が廃部になる日も近いだろうなと思った。だが高二になって人生を変えるような出会いが待っていたのも事実だった。野球部の新入部員に中学の時の後輩の赤堀久史が入部してきたのだ。赤堀は中学時代、野球部で打撃の良さで鳴らした男だった。中二のときにはもうレギュラーとなりファーストを守り、打順は五番を任せられていた。普段はあまり人と親しくない遼也だったが、どういうわけか赤堀とだけは気があった。赤堀は気さくな人物で誰とでも話をして打ち解けることができた。それは調子がいいというのではなく、人を引き付ける魅力があった。そんな赤堀が中学時代、遼也たちの後に部長になったとき誰一人文句を言うものはいなっかった。


 
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