古都夜と子猫たち ~化け猫神社爆誕~

文字数 2,065文字

にゃあ~にゃあ~
みゃーッ!みゃーッ!
ん……?
猫の声がする……近いなあ、もしかしてうちの敷地内だったら……
ン猫ォォォオオオオーーーッ!!

退散!退散!退散!!退サァーン!!!!

ああっやっぱり!

もぉっ、パパー!ご近所迷惑でしょ夜なのに!!

猫くらいで情けないなあほんともう……

雪待神社境内、段ボール箱に入った2匹の捨て猫。

猫が苦手な神主・雪待正勝はそれを段ボールごと恐る恐る運ぶと敷地外へと投げ捨てた。

悲しげに響く子猫達の鳴き声。

あーっ!かわいそうに……

それにそんな近くに捨てたってまた来るかも知れないじゃん、意味ないよ?

古都夜!親に対して「じゃん」とか言うんじゃない!

それに猫なら大丈夫だ、猫除けの結界を張るからもう入って来られんぞ。

ナッハッハッハッハ!

どこでそんなの覚えて来たのよ……

しっかし先代のじいちゃんとパパの猫嫌い有名だからうちに捨ててく命知らずなんて今までいなかったのにね?

こっちの引っ越し先では飼えなかったとかかなあ~

どんな事情があろうと関係ない!と息巻きながら、正勝は猫除けの儀式の準備を始めた。


そして翌日……。

あ、参拝者の方……いや、遊びに来た子供ね。

見かけない子……。

こんにちはー!

こ、こんにちはぁ~。
姉ちゃん何挨拶してんだよ!アイツ!昨日のオヤジの娘!

敵だぞ敵!フシャァーッ!!

て、敵!?昨日のオヤジって……

ああ!もしかして二人は捨て猫の飼い主さんかな?

ごめんねパパが……

チガウゾ!!俺たちは投げられた猫だ!被害者ッ!

フギャーッ!!

ぱ、パパがしたことはすごく悪いことだから私からも謝るけど、そんな小芝居までしなくても……。
あの、ええと、あたしたちもどう説明していいか……

ご主人様がもう一度お迎えに来てくれるかもしれないから元の場所で待ってないとって戻ったら……

あの鳥居を通ったら身体がおっきくなって人間みたいに……

うん、ちょっとパパ呼んできて謝らせるから、その設定と耳しっぽはやめていいよ。

パパー!!ちょっとパパ来てくれるーー!?


……ん?君たちのそれ、やけにリアルな付け耳ね?

んにゃーっ!?いたたた痛いにゃー!
取れない……生えてる……

それに耳が無い……顔の横に無い……

えっ、この猫的な耳、本物なの…!?

姉ちゃんをいじめるなー!お前もやっぱりあのオヤジの娘だなーッ!!

悪の巫女オンナ!!覚悟しろ覚悟ッ!!てりゃー!!

ちょ、やめてごめん!ちょっと、ちょっと本当に昨日の猫??

化けて出たの!!??


他の参拝者のご迷惑になるので境内では静かに遊んでねっ!!

参拝者いないけど来るかもしれないからっ!!

ごめんね!!静粛にね!!

きゃっ!?
あ゛ーッ!悪のッ……もごふっ……

にゃにす……みゃっ……はにゃせ……!

う~ん、そうなのボク、ここでは静かにしててほしいなあ~!!

急に呼んでごめんねパパ!

えっと、ちょっと喧嘩になりそうだったから……

うむ、神域での争いは避けるべきだな。

そんなことより昨日の猫は戻ってきていないようだな?

流石私の結界。ナッハッハ。

あ、あのぉ、あたしたちがその……
はいはいお嬢ちゃんのお話はお姉ちゃんが聞こうね!!

んじゃごめんねパパ、もうちょっと向こうで遊んでくるね!

お、覚えてろよ~ッ!!

本当に化け猫って居るんだ、打ちどころが悪くて死んじゃったってことか、と考えながら二人の背中を押して拝殿から遠ざかる古都夜。

そして鳥居の外に一歩出た瞬間……

二人の子供は昨夜の子猫の姿に戻ってしまった。

みーっ!!
えっ!?猫ッ……

あっ、そっち戻っちゃダメ!パパに見つかったら……!

あ、あれっ!?

ほら、姉ちゃんが言ったろ?

ここをくぐると人間になるんだ。

まだ外側に居る姉ちゃんは猫のままだろ。

にゃ~ん。
え、じゃあこれは……この鳥居がおかしくなっちゃって……?
絶対悪の神主マンの仕業だぞ!!

ネコヨケのケッカイとかいう変なフィールド展開したせいだ!!

えっ!?猫除け、猫を入れない結界……

まさか、猫を入れちゃいけないから、人間に変える……!?

そんなトンチみたいな効果なの!?

んにゅっ、と……

うん。不思議だけど、そうみたいなの。

それでお願いがあるんだけど、ご主人様がお迎えに来てくれるまでここで待たせて欲しいの

えっ!人の姿でずっとうちに居るつもり!?
ピンチの時は猫に戻って近所に息を潜めて神主マンをやり過ごすっていう作戦もちゃんとあんぞ!!
それじゃずっと近所に居ればいいじゃない?

飼い主さんだって猫の姿じゃなきゃわかんないだろうし……

ご主人様は絶対わかってくれるもん!!

……あ、ごめんなさい……。

ええと、ちゃんとお別れした場所で待っていたいのと、それとすごく厚かましいお願いなんだけど、あの……。

エサか。
メシー!!
あの、あたしがたまお、この子がまおた。

タマとマオって呼んでね。

あー、古都夜です……

うう……一度猫飼ってみたかったけど人型ってのが不可思議すぎてモヤモヤするー!


こうして正勝の結界により化け猫を生み出す場所になってしまった雪待神社に捨て猫二匹……もとい二人が住み着くことになってしまった。

これから様々な猫がここを訪れることになるが……?

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登場人物紹介

雪待古都夜(ゆきまちことや)

「一度猫飼ってみたかったけど人型ってのが不可思議すぎてモヤモヤするー!」


17歳。猫嫌い神主の娘だが猫は好き。犬は嫌いではないが怖い。

ヒョン!なことから人間の姿になった猫たちの保護やお悩み相談、縁結びなどのドタバタに巻き込まれる羽目に……!?

部活は帰宅部で放課後や休みの日は境内の掃除や授与所の手伝い、そして野良猫の監視と追い出しの仕事を任されている。

巫女と言っても神秘的な聖人というわけでもなく、他人の恋愛話に興味津々なお年頃の普通のJK。スマホを持たせてもらえずガラケーなのが目下の悩み。

好きな食べ物はパンケーキとりんごあめと野沢菜漬け。

得意料理はホットケーキとタンドリーチキン。

まおた

「悪の巫女オンナ!!覚悟しろ覚悟ッ!!てりゃー!!」


年齢は3~4ヶ月くらい。雪待神社に捨てられていた猫の兄弟の小さい方。

呼び名は『マオ』。やんちゃざかりの男の子。

子猫だが最近恋に目覚めて格好良い三毛猫のお姉さんに一目惚れ。でもやっぱり恋愛について全然理解出来ていないみたい。

趣味はヒーローごっこ、お散歩、屋根の上でお昼寝。

好きな食べ物はお魚(特に生魚)。おさしみ最高。人の姿では食べても平気な物が増えたのでカレーライスやハンバーグも大好きに。

たまお

「す、捨てられてなんか!!……ううん、捨てられたんだけど……」


年齢は1歳未満、詳しくはひみつ♡雪待神社に捨てられていた猫の兄弟の大きい方。

呼び名は『タマ』。とっても乙女チックなマオの姉ちゃん。

人間化する際には女の子の見た目になるが実は去勢済の元オス疑惑がある

自分たちを引き取ってすぐに捨てた2代目の飼い主のことを信じて待っている。

趣味は縁の下でお昼寝、内緒の趣味は可愛い生き物探し(狩り)。

好きな食べ物はねずみだったが人間の姿での味覚には壮絶に合わずトラウマになっている。代わりに好きになったものは、カップケーキ等の可愛いスイーツ。

えんじぇる☆まりりあ

「ああっ、と!これは猫の従業員にだけ話してくれた秘密のお話なのでした……!」


年齢はタマとマオの間くらい。ワケあって逃亡中のスコティッシュフォールドの女の子で呼び名は『マリー』。実は近所の猫カフェ『ぷてぃ☆にゃんじゅ』の大人気看板猫だがスレたところはなく、丁寧でおっとり、ふわふわとした優しい性格。

どうしても叶えたい願いがあり、人間になれる神社の噂を聞きつけ古都夜を頼ってお忍びでやって来た。

お客さんが(店内で買って)くれる細長いパウチに入ったおやつと店長が大好き。

写真集好評発売中!30冊限定サイン(足形)本は店内にてお買い求めください♡

吹雪貴(ふぶき)

「大丈夫かい?手荒な真似をしてすまない。怪我は無いだろうか……」


年齢はタマより少し上くらい。吹雪貴と書いてフブキタカシ、ではなく『フブキ』

マオがお散歩中に危ない所を助けてもらい一目惚れした初恋の"おねいさん"。

歌劇団のスターのようなクールビューティーな三毛猫。立ち居振る舞いはまさにおとぎ話の王子様。紳士的で芝居がかった喋り方をする。

元野良で一度保健所に連行されたが、里親に引き取られペットショップに売られ今はお金持ちの家で飼われているというシンデレラキャット(?)。生まれた直後から二転三転の人生を歩んだので年の割に落ち着いているが、年相応にハシャぐ場面もある。

好きな食べ物はメロンと、飢えていた時久々にありついた保健所の安いキャットフードの味が忘れられない。

三毛猫にはほぼメスしか居ないが果たして……!?

こじろ

「みぃ……ご主人様ぁ……ご主人様のとこに帰りたいよぉ……」


体格はやや小さいが年齢はマオと同じ。

タマたちとは別の家に貰われていった兄弟。呼び名は『ろろ』。

新しい家庭では『ロンディーネ=ガンリュー』と名付けられたがその家では『ろろ』とは呼ばれないらしい。

方向音痴で怖がりで甘えん坊の末っ子ちゃん。あざといほどにThe・子猫。

趣味はご主人様のお膝でお昼寝。好きな食べ物はご主人様がくれるおいしい物。

こじろの兄弟達は人間化すると黒と黄緑の毛色だけど実際は基本白黒の長毛猫。いちばん小さくて白の割合が大きい子なので元の家では「こじろ」と名付けられた。

こじろうではない。でも漢字で書くと小次郎。まおたは猫太でたまおは玉男もとい玉緒。

(とら)

「仕方ないけん、耳と尾を触ってみ。作りもんじゃなかろ。」


年齢は不詳。謎の方言で喋るなんとなく古風ないわゆる『のじゃロリ』風のとらねこの少女(ロリババア…?)。

正体は昔雪待神社で飼われていた猫の霊で本物の化け猫。呼び名は『お寅

飼い主達が自分のせいで猫嫌いになったのを知っていたため強い未練を残しながらも再び神社に姿を表すことを躊躇っていたが、猫除けの結界を利用して人の姿でやって来た。

死後の時間の感じ方は現世と違うらしく、神主が代替わりしていたことに気づけなかった。

趣味はいたずら。好きな食べ物はかつおぶし。

シロ

「巫女どのにボクの飼い主を説得して欲しいんだ。」


年齢はタマより少し上。ひねりの無い自分の名前にコンプレックスを抱いている白猫のお姉さん。

自分の名前を隠し通したいので名乗らない主義。

飼い主は何らかのオタクらしい。少し不遜な態度と喋り方は飼い主が大好きなアニメのキャラクターの影響なのかもしれない。

趣味は飼い主の話を聞いてやること、飼い主がパソコンをしているのを邪魔しつつ見守ること。

好きな食べ物は飼い主特製の猫用兵糧丸。

「ぶにゃー!」


汎用アイコンでただのシルエット。全員黒猫というわけではない。

雪待正勝(ゆきまちまさまさ)

「ン猫ォォォオオオオーーーッ!!」


猫嫌いな古都夜のパパ52歳。声がでっかい。

好きな食べ物はパンケーキ。得意料理は肉じゃが。

次回予告(変更の可能性ある)

次のゲストねこさんはロシアンブルー(すごく青い…)だよ!

シンプルエディタで編集したいので登場人物登録だけ先に済ませておくよ!ちょっと恥ずかしいよ!

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