第49話 黒松屋炎上
文字数 1,198文字
案の定、火元は、「黒松屋」だった。
2人が駆けつけた時には、
町火消たちはまだ、到着しておらず、 近隣の住民が総出で、消火作業を行っていた。
「みんな、無事かい? 」
与六が、近くにいた町人に訊ねた。
「番頭の権兵衛が逃げおくれて、まだ、中におる! 」
「黒松屋」の主がさけんだ。
「そいつは大変じゃねぇか! 」
山倉が言った。
「他でも火事が起きているてんで、町火消の到着がおくれそうだ」
「黒松屋」の向かいの米屋の主が言った。
「そんな、馬鹿な話があるかい?
黒松屋を後回しにするとは、いってえ、どういうつもりだ? 」
「黒松屋」の主がさけんだ。
「どういうつもりも何も、全部、あんたの日頃の行いが悪いせいだ。
わめいてる暇があったら、こっちへ来て、火を消しやがれ! 」
米屋の主が、「黒松屋」の主の腕をつかむと、消火作業を行っている
近隣住民の元へ引っ張って行った。
「まことに、権兵衛はまだ、中にいるんだな? 」
山倉が、「黒松屋」の主の背中に向かって訊ねた。
「ああ、間違えねえ。やっかいな客が来ると聞いて、あの人に押しつけたんだ」
「黒松屋」の主が平然と答えた。
「やっかいな客とな? まさか、その客が火をつけたのか? 」
山倉は嫌な予感がした。
もし、やっかいな客が火つけだとしたら、権兵衛を傷つけたかもしれない。
権兵衛は、負傷したため動けずに、逃げおくれたとも考えられる。
「町火消が来たら、逃げおくれた人がいると伝えて捜してもらいましょう」
与六が神妙な面持ちで言った。
火事発生時の人命救助は一刻を争う。
いつ、到着するのかわからない町火消を待つ間にも、
火の勢いはどんどん、強くなって、屋敷が崩壊する危険性が高まる。
「わしが助けに行く! 」
山倉は、近くにあった桶の水を頭からかぶると、
引き留めようとした与六をつき飛ばして火中へ飛び込んだ。
その直後、火附盗賊改たちが駆けつけた。
その中に、赤城多聞の姿があった。
「赤城様。たった今、親分が、逃げおくれた番頭を助けるため
火中に飛び込んだ。追いかけて、戻るよう伝えてくんないか? 」
与六が頭を下げると頼んだ。
「火中に飛び込んだのは、あの者の判断でしたことだ。
どんな結果になろうと、あの者の責任。
わしは、己の責任をまっとうするだけだ。失礼する! 」
赤城がそう告げると、火つけの捜索に向かった。
「なんて、非情なお人なんだ! もし、2人とも生きて戻らなかったら、
許さねぇからな。覚えていやがれ! 」
与六は悪態つくと、自らも、桶の水を頭からかぶって火中に飛び込もうとした。
その時、町火消たちが到着して、与六は、町火消たちに引き留められた。
そのころ、山倉は、火の粉をよけながら屋敷の中を歩いていた。
ひと部屋ずつ、慎重に、誰かいないか捜しまわったが、
どの部屋ももぬけの殻で、人の気配はなかった。
あと残すは、主の部屋だけとなった時、背後で、爆音が鳴り響いた。
2人が駆けつけた時には、
町火消たちはまだ、到着しておらず、 近隣の住民が総出で、消火作業を行っていた。
「みんな、無事かい? 」
与六が、近くにいた町人に訊ねた。
「番頭の権兵衛が逃げおくれて、まだ、中におる! 」
「黒松屋」の主がさけんだ。
「そいつは大変じゃねぇか! 」
山倉が言った。
「他でも火事が起きているてんで、町火消の到着がおくれそうだ」
「黒松屋」の向かいの米屋の主が言った。
「そんな、馬鹿な話があるかい?
黒松屋を後回しにするとは、いってえ、どういうつもりだ? 」
「黒松屋」の主がさけんだ。
「どういうつもりも何も、全部、あんたの日頃の行いが悪いせいだ。
わめいてる暇があったら、こっちへ来て、火を消しやがれ! 」
米屋の主が、「黒松屋」の主の腕をつかむと、消火作業を行っている
近隣住民の元へ引っ張って行った。
「まことに、権兵衛はまだ、中にいるんだな? 」
山倉が、「黒松屋」の主の背中に向かって訊ねた。
「ああ、間違えねえ。やっかいな客が来ると聞いて、あの人に押しつけたんだ」
「黒松屋」の主が平然と答えた。
「やっかいな客とな? まさか、その客が火をつけたのか? 」
山倉は嫌な予感がした。
もし、やっかいな客が火つけだとしたら、権兵衛を傷つけたかもしれない。
権兵衛は、負傷したため動けずに、逃げおくれたとも考えられる。
「町火消が来たら、逃げおくれた人がいると伝えて捜してもらいましょう」
与六が神妙な面持ちで言った。
火事発生時の人命救助は一刻を争う。
いつ、到着するのかわからない町火消を待つ間にも、
火の勢いはどんどん、強くなって、屋敷が崩壊する危険性が高まる。
「わしが助けに行く! 」
山倉は、近くにあった桶の水を頭からかぶると、
引き留めようとした与六をつき飛ばして火中へ飛び込んだ。
その直後、火附盗賊改たちが駆けつけた。
その中に、赤城多聞の姿があった。
「赤城様。たった今、親分が、逃げおくれた番頭を助けるため
火中に飛び込んだ。追いかけて、戻るよう伝えてくんないか? 」
与六が頭を下げると頼んだ。
「火中に飛び込んだのは、あの者の判断でしたことだ。
どんな結果になろうと、あの者の責任。
わしは、己の責任をまっとうするだけだ。失礼する! 」
赤城がそう告げると、火つけの捜索に向かった。
「なんて、非情なお人なんだ! もし、2人とも生きて戻らなかったら、
許さねぇからな。覚えていやがれ! 」
与六は悪態つくと、自らも、桶の水を頭からかぶって火中に飛び込もうとした。
その時、町火消たちが到着して、与六は、町火消たちに引き留められた。
そのころ、山倉は、火の粉をよけながら屋敷の中を歩いていた。
ひと部屋ずつ、慎重に、誰かいないか捜しまわったが、
どの部屋ももぬけの殻で、人の気配はなかった。
あと残すは、主の部屋だけとなった時、背後で、爆音が鳴り響いた。
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