第2話

文字数 502文字

 でも、このクソジジイよりもムカつく存在がいる。それが私のママ。
 ママは夫が帰ってきたのがよほど嬉しかったのか、このごろ家にいるときもバッチリとメイクをしている。そして自分の夫のことをパパと呼ぶ。
「パパ、今日は何食べたい?」
「パパ、今日はどこかにお出かけしない?」
「パパ、ビール買ってきたわよ」
 父親が帰ってきてから、ママは毎日こんな調子だ。パパ、パパ、パパばっかり。信じられる? 私とママのことを放り出して、連絡もよこさず金も送らず、年甲斐もなく遊び呆けていたクソ野郎だよ?
 こいつがいなくなってから、ママが大変な思いをしてきたことを私は知っている。昼も夜も働き詰めで、いつも寝不足顔のママ。旦那に捨てられた女と、親戚から白い目で見られても強がって見せるママ。いつかパパが帰ってきたら、ぶん殴って慰謝料を請求するんだと意気込んでいたママ。
 そのママが、いざ夫が帰ってきたら、手のひらを返したように夫にベタベタじゃないか。私はすっかり呆れ果てて、口を開く気力さえ無くなってしまった。これでは夫婦そろって、筋金入りの脳足りんじゃないか。そして、そんな脳内お花畑夫婦の間に生まれたこの私は、いったい何なんだ。
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