うろんな勇者は今日も魔王を倒す旅に出られない。

[ファンタジー]

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異世界は最高だ。
極東の島国の『和を貴ぶ』文化なんかクソくらえ。

勇者という職業は最高だ。
くだらないマニュアルも煩雑な事務仕事も存在しない。

魔王を倒す旅に出ろと言われたけど、
そのまえにこないだ街で噂になってたアレが気になってしょうがない。

やれといわれるとやりたくない。
やろうとしても気付いたらなんか別のことやってる。

「とりあえず世界が平和になればそれでいいんでしょ?」

変わり者勇者の先延ばし冒険譚、ここに開幕――。

目次

連載中 全33話

2024年02月16日 09:15 更新

  1. 第1話「異世界転生」2023年06月09日
  2. 第2話「うろんな勇者、異世界へ降り立つ」2024年02月16日
  3. 第3話「勇者ターナカの独白」2023年06月09日
  4. 第4話「従者シアの手記」2023年06月09日
  5. 第5話「今出ようと思ってたんだけど……」2023年06月09日
  6. 第6話「勇者ターナカのプロフィール」2023年06月09日
  7. 第7話「勇者ターナカについて語るヒース王子」2023年06月09日
  8. 第8話「上下関係とか身内贔屓とか、そういうのよく分かんないんですよ」2023年06月09日
  9. 第9話「ターナカを見送るグレン王子」2023年06月09日
  10. 第10話「イディアニウムの歴史」2023年06月09日
  11. 第11話「悪王イドラについて語る女神イディア」2023年06月09日
  12. 第12話「依頼『盗賊頭を討伐せよ』①」2023年06月09日
  13. 第13話「依頼『盗賊頭を討伐せよ』②」2023年06月09日
  14. 第14話「依頼『盗賊頭を討伐せよ』③」2023年06月09日
  15. 第15話「ステータスと属性について①」2023年06月09日
  16. 第16話「ステータスと属性について②」2023年06月09日
  17. 第17話「ステータスと属性について③」2023年06月09日
  18. 第18話「ステータスと属性について④」2023年06月09日
  19. 第19話「とある日の懇親会」2023年06月09日
  20. 第20話「目前主義」2023年06月09日
  21. 第21話「次の目的は」2023年06月09日
  22. 第22話「カーテンの開かない部屋」2023年06月09日
  23. 第23話「【悪食大公】へ会いに」2023年06月09日
  24. 第24話「取り囲まれる二人」2023年06月09日
  25. 第25話「【紅雲】」2023年06月09日
  26. 第26話「第一発見者」2023年06月09日
  27. 第27話「前世の死因」2023年06月15日
  28. 第28話「大公ヘルド・フェレライ」2023年06月19日
  29. 第29話「正義と相克」2023年07月30日
  30. 第30話「『空白』に塗りつぶされた戦禍」2023年08月19日
  31. 第31話「イディアニウムの【勇者】たち」2023年10月02日
  32. 第32話「〝勇者争奪戦〟」2023年12月12日
  33. 第33話「パンドラボックス」2023年12月28日

登場人物

ユウ・ターナカ/田中 勇愛


【操奇】の勇者。その奇抜な発想と後先を省みない行動力、そして意外性によって、日々イディアニウムの人間たちに奇異の視線を投げかけられながら生活している。【魔王】の打倒という【勇者】の使命にさえ興味がなく、その場その場のノリに身をやつすその姿勢は、周囲から『目前主義』と評されている。


前世では自身の『症状』に対する苦悩の末、命を落とすことになったが、今生ではその誠実さ・実直さにより、人間関係に恵まれた。そして現在はとある『目的』のため、仲間たちとともに行動している。


イディアニウムに存在する十人の勇者の中で、「最も対集団戦・耐久戦に特化した勇者」と云われており、受けた攻撃の数だけ自身を強化する固有スキル【ラウンドアバウト】や、その副産物である特異属性『星属性』の魔法を駆使して戦う。


自分をこの世界に召喚した女神イディアとは、現在恋仲である。

イディア・イデイン・プロトス


勇者ターナカをイディアニウムに召喚した【女神】。数百年前に【現代魔法】や【ステータス】という概念を開発した張本人であり、現在は【女神の意志】の『端末』として転生した身体で第二の人生を謳歌している。


『【勇者】の選定』という自身の『端末』としての使命を果たし終えたことから、他の勇者に対する公平性をとっくに放棄しており、ターナカに対してのみ助言を行ったり、それどころかパーティを組んでみたりするなど、何かにつけて彼に肩入れしている。

足繫くターナカの拠点に通い続けていたイディアは、やがて彼の大らかな人柄を慕うようになり、いつの間にやら二人は恋人関係を結んでいた。


生前(前世)の彼女は【古代魔法】の使い手たちであるイデイン族をたった一人で制圧するほどの実力者であったが、転生後は自身本来のイデイン族としての肉体を失ったことから、その出力も当時に比べて大きく劣ったものとなっている。使命達成後に【女神】としての権能もほぼ失っており、残っているのは限定的な【空間移動】などほんの一部である。


【魔王】や【魔族】と勘違いされないよう、普段はその特徴的な青い頭髪を隠して生活しており、混乱を防ぐために、できるだけ素性も偽るようにしている。(その際、『イド(ターナカが付けた愛称)』という名前を好んで使っている)

シア・フェレライ


勇者ターナカの従者。【悪食大公】ヘルド・フェレライの実娘であり、以前は一人の女騎士として活躍していたが、『ある出来事』によって【魔力詰まり】を発症したことをきっかけに前線を退いた。


その後、従者としてターナカに仕えるようになってからは、討伐など戦闘を伴う依頼の補助を行えない代わりに、事務処理や彼の身の回りの世話、うっかり気質のフォローをする役回りを背負っている。

当初こそ、その素行を訝しんでいたものの、不器用ながらもひたむきに生き、他人のために自身が傷付くことさえいとわないターナカの姿勢を見ているうち、やがて彼女は自分の主君の幸福をなによりも願うようになった。


【魔力詰まり】であることを度外視すれば、彼女は本来【千魔一剣】という剣術を扱うかなりの武闘派であり、その攻撃力に特化した必殺の一撃は耐久特化の【ステータス】を持つターナカを戦慄させるほどだった。その能力をターナカのために発揮できないことを彼女自身いつもむず痒く思っている。


元騎士らしく礼節を重んじる性格でありながらも、人当たりが非常に良く、笑いのツボが劇的に浅い。

ヒース・プロトス


イディアニウム国王ユーバ・プロトスの三男にして第三王子。【枝喰み川】での住民失踪事件について調査していた折、『水豹』に襲われたところを偶然通りがかった勇者ターナカによって救われる。


以降、命の恩人であるターナカのパトロンとして(半分面白いもの見たさで)、その活動を支援するようになるが、その援助の大半はことあるごとに問題を起こす彼の尻拭いである。それゆえにターナカにとってヒースは頭が上がらない存在であるが、同時に心の底ではよき理解者として兄貴分のように慕っている。


よくも悪くも捉えどころのない飄々とした性格で、いつの間にか王城を抜け出してはイディアニウムの各土地を転々と渡り歩いていることから、王都では『風来坊』と揶揄されている。

しかし、一方で、そのずば抜けた先見性や、王族という自身の立場を上手く利用(あるいは悪用)した立ち回りを知る身内からの評価は非常に高く、関わる機会の多いターナカも彼のことを『切れ者』であると認識している。


兄弟の中で唯一、長男のグレンとまともに口を利ける存在で、兄の裏での心労を推し量っては、さりげなく王城の外に連れ出して気晴らしに付き合っている。その甲斐もあってか第一王子として誰よりも固い意志を持つグレンが、彼の助言にだけはいつも素直に耳を貸しており、その辣腕を信頼して大きな仕事を手伝わせることも多い。

グレン・プロトス


イディアニウム国王ユーバ・プロトスの嫡男であり、次期国王候補の筆頭。


その冷酷な問題解決思考と王族代表としての厳格な態度から、敵味方問わず畏怖の対象とされている人物。

権力の象徴として嫌悪を向けられることもある一方で、彼のその冷徹さはイディアニウムを想うがゆえのものであり、常にその顔に鉄面皮を貼り付けているのも、その付け入られかねない内心――優しさを隠すためである。


自身の王族としての立場を誇りに思っており、たとえ自分がまさに救おうとする人々から誹りを受けることがあろうとも、その役目を全うし、信念を貫き通すだけの意志の強さを持っている。『誰からも理解されることが政治ではない』という独自の信条を持っており、その言葉の通りに日々行動しているが、それでもその『孤高』はただの一人の人間には至極耐え難いものであり、身内の人間の中で唯一気を許しているヒースに対してのみ、時折愚痴や弱音をこぼしている。


ヒースのツテで勇者ターナカと親交を結ぶようになるが、懇親会にしれっと参加していた【女神】の誘いに乗ってしまい、泥酔の末、普段は他人に見せることのない姿をターナカに晒してしまった。


以降、ターナカは彼のことを「中間管理職の苦労人」と評している。

ヘルド・フェレライ


元騎士団長であり、名誉公爵。その好事家ぶりからイディアニウム内で【悪食大公】という二つ名を付けられている。


かつて、娘であるシア・フェレライの【魔力詰まり】の治療法を探す旅の過程で、若返りの呪いにかかってしまい、現在見た目が少年の姿となっている。その結果として騎士団長の任を退くことになったものの、本人は「貴重な体験をした」とかえってこのことを喜んでおり、引退をきっかけに、かねてより目を付けていた【黒箱城】に移り住むなど『悪食』の名にし負う酔狂ぶりで日々を楽しんでいる。


趣味嗜好こそ他人の理解を得難いものではあるが、その分け隔てのない性格と人好きのする人柄は、一種のカリスマ性となり、人心掌握術と関係構築力において彼の右に出る者はいないとまで云われている。

彼の本領は他者に対するその観察眼と記憶力である。この能力は教育方面においても遺憾なく活用され、最終的に多方面からの厚い信頼を勝ち取った彼は、平民の出でありながら、騎士団長の任に就く快挙を達成することとなった。


家族関係について、妻は【黒箱城】に移り住むより前に病気で他界しており、子どもたちに対しても騎士としての心得と技術のみを教えてほとんど放任主義であった。しかし、関係が悪いということは一切なく、彼の行動の端々から愛情を受け取って育った子どもたちは、それぞれの道を修める中で父の名に恥じない人間となることを一つの行動原理として日々研鑽を積んでいる。

(ちなみにヘルドの姿が少年となってから、子どもたちは彼に対して、ちょっとしたマスコットのような扱いで接するようになったらしい)


シアが従者となったことをきっかけに勇者ターナカと知り合った。

ジュン・クルオス/黒瀬 純


【紅雲(あけぐも)】の異名を持つ勇者であり、前世でのターナカの従妹。


勇者ターナカがイディアニウムに召喚されたばかりのころ、そのことをどうやってか嗅ぎ付けた彼女がどこからともなく姿を現し、右も左も分からない彼にイディアニウムでの生き方を教示した。


クルオスはイディアニウムにおいて非常に悪名高い【勇者】であり、その悪評っぷりは国内諸地域にて『あらゆる謀略の渦中に彼女が存在する』と日々話題の種にされているほどである。なかでも有名なのは数年前に起こった【五大貴族】の暗殺事件で、王都では「勇者クルオスこそがその実行犯だったのではないか」とまことしやかに囁かれている。


戦闘においては魔力によって編んだ不可視のワイヤーを武器に戦う。市街地戦や屋内戦など、奇襲が高い効果を発揮する戦いにおいてその本領を発揮するが、大抵の場合、彼女が姿を現すときにはすでにその戦いは『終わって』いる。


前世からの縁があってか、勇者ターナカに並々ならぬ感情を抱いており、平時こそ彼のことを揶揄するような言動ばかりが目立つが、実際は心から彼のことを敬愛している(ターナカの生前は違うものだったはずの彼女の『一人称』にもそれが表れている)。ターナカのためであれば命を投げ出しても構わないほどの覚悟を持っているだけに、その純粋な気持ちが、時折歪んだ愛情として発露することがある。


ターナカにイディアという恋人がいることを、彼女はまだ知らない。

イドラ・イデイン・プロトス


千年以上も昔、イディアニウムが『プロトス国』だった時代に【悪王】として国民から恐れられた人物。イデイン族の父と旧プロトス王族の母の間に生まれた。


プロトス族から王権を奪ったイデイン族の祖母イディア(【女神】イディアとは別の人物)が、プロトス文化や既存の有権者に対して寛容な政治を行ったのと正反対に、イドラは独自の改革によって中央集権化を図った。貴族を主な対象とした新税制の導入や、イディアニウム騎士団の前身である【銀の兵団】の設立(軍事拡充)が主な功績である。


自身の目的のためであれば手段を選ばない性格であり、本来王権を継ぐはずであった父を始め、身内にすら容赦なく手をかけたとされている。そのため彼は国民・貴族・王家の全てから反感を買っており、最後には妹であるイディア(のちの【女神】イディア)が起こした反乱によって倒れた。


悪名ばかりが目立つ中、現イディアニウムでの歴史編纂事業においては一部、『悪王イドラによって実施された行政改革や王家主導の各種土木事業は、国内産業の活性化を促し、以降千年以上に亘るイディアニウムの平和の礎となった』と解釈する向きも出てきている。

しかし、それでもやはり『【魔王】の発生は非業の死を遂げたイドラの〝呪い〟によるものである』というイディアニウムの誰もが知る巷説が、今まさにその場所に生きる人間たちにとって、【悪王】の存在をいまだ受け入れがたいものとしている。


【魔王】として現在のイディアニウムに転生し、【黒箱城】を訪れていたターナカと邂逅を果たした。

その他の登場人物


・【勇者】


タクミ・ニーシャ/西谷 拓海

…【愚勇】の勇者。最強の勇者と名高い。現在はフテルシア島の【獣の大地】にて活動している。


ハーミット・サハラ/佐原 栄路

…【銀狼】の勇者。【愚勇】に唯一匹敵しうる存在と云われている。ゼーレン公管轄地である雪山地帯で時折目撃されている。


ミッチェル・エンド/遠藤 美千流

…【鬼骨】の勇者。マルティン公領管轄地にある『靴売り宿』の用心棒。ターナカと親交を結んでいる。


ソラ・ヨシダ/吉田 空

…【蒼穹】の勇者。王都以北全域を活動地域としており、イディアニウムの人々から『天才』と称されている。勇者クルオスに一目惚れした。


サクラ・エドガー/江戸川 咲良

…【華煙】の勇者。アルトゥール公管轄地【魔女の森】を拠点としている。【銀狼】と因縁がある。


ケイジ・ミーティア/三田 啓司

…【悪童】の勇者。王都以南【渇望の大地】に蔓延る荒くれ者たちを己の拳一つでまとめ上げた。【鬼骨】を姉貴分として慕っており、ターナカとも親交がある。


アツコ・シーヴァ/椎葉 篤子

…【連環】の勇者。普段は拠点である【蟲血ヶ浦】に引きこもっている。単独でダンジョン【歌い人の虚空】踏破を果たした。ターナカに扶養されることが夢。


クアッド/阿藤 九

…【峨々】の勇者。イディアニウム騎士団員としても活動している。【鬼骨】や【悪童】と折り合いが悪く、ターナカを敵対視している。



・イディアニウム人


ユーバ・プロトス

…イディアニウム現国王。過去に一度ターナカと対面したことがある。


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小説情報

うろんな勇者は今日も魔王を倒す旅に出られない。

山田奇え(やまだ きえ)  kie-yamada

執筆状況
連載中
エピソード
33話
種類
一般小説
ジャンル
ファンタジー
タグ
異世界, コメディ, バトル, アクション, 勇者, ADHD, 魔法, ミステリー, 異世界転生, 男主人公
総文字数
72,865文字
公開日
2023年04月28日 01:40
最終更新日
2024年02月16日 09:15
ファンレター数
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