第11話

文字数 1,071文字

最後の手紙になります。
お別れの手紙。
はるちゃんはきっと、あの日とは少し変わってても、あのきれいで優しいはるちゃん。
わたし、きれいじゃなくなっちゃった。
ただのへんてこりんなからだした、女の子。
もう、はるちゃん好きでいちゃ、ダメなんだ。
わたしね、びっくり屋さんだから、雷苦手なの。
今でも落ちる時の音は怖いよ。
それでもね、あの恐怖の一瞬前にピカッ!って光る時、あの日から、そのたびあの時を思い出して、そのあとの大きな音も怖くなくなったんだ。
だってあの日のその時は、はるちゃんの温もり感じてたから。
だから、はるちゃん居なくても、怖くなくなってて、すごく不思議な気持ちだった。
胸の奥がうずうずむず痒いみたいな。
だけどわたしね、また雷怖くなっちゃった。
ある冬の夜、お部屋で寝てたの。
苦手なマラソン大会だったから(やっぱりびりっけつだったのだ)疲れて深い、深い、眠り。
鍵閉め忘れたりなんて、してなかったんだよ。
ショックであんまり覚えてないんだけど。
冬の、カラ雷みたいのの音と、鈍い痛み、一瞬目が覚めた時、光った。
顔は見えなかったし、わたしそのまま気を失っちゃって。
気づいたらお父さんが助けに来てくれてた。
お母さんやお兄ちゃんは寝てたし、心配するからって、お父さんは震えてるわたしをなだめてそっと出ていった。
犯人は逃げちゃったみたいけど、お父さんが来てくれなかったら殺されちゃってたかも。
はるちゃん狭いおうち嫌がって、わたしに自分の部屋があるの羨ましがってたけど、もし誰か同じ部屋で寝てたらこんな目に遭わなかったよ。
やっぱりわたし、はるちゃんが羨ましい。
本当に殺されたりしないで良かったけど、わたし、はるちゃんにあげる初めて、なくなっちゃったみたいなんだ。
きれいな思い出はきれいなまま。
わたし、ずっとはるちゃんが言ってくれた「なんともあっても、なんともない」を胸に生きて来たし、これからもそうやってあの事件だって乗り越えるよ。
もしかしたら、はるちゃんに話しても、また今度は「なんともない」って一言だけでわたしを受け入れてくれるかも知れないなんて、希望を持ったり。
でも、わたしが嫌。
きれいなわたしでまた会いたかったの。
それに、きっとはるちゃんわたしなんか忘れてあの優しさ、もっと素敵な誰かに向けてるかもしれない。
あれは夢だったんだ。
忘れよう。
本当に、わたしだけがさみしくって夢見てて、はるちゃんも子猫たちも最初から居なかったのかもしれないな。
今はそんな風に思うようになっちゃった。
いつまでも、きれいな、優しいはるちゃんで居てね。
素敵な夢をありがとう。
さよなら。
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