第7話

文字数 372文字

僕はその年の夏休み、何度もそこへ足を運んであきを待った。
彼女は来なかった。
なんで去年来なかったんだろう。
彼女は去年の夏休み、こんな風に僕を待ちぼうけたのだろうか?
もう遅い。
忘れるしか、ないんだ。
その年の冬、僕の両親は離婚して、すぐに母親は浮気相手のひとりと内縁関係になった。
引っ越し。
あのボロ長屋に未練なんてないけど、たったひとつ、あきのこと。
「きみの身体はきれいだ、誰よりも」
言えなかった一言。
今でも女子の身体なんて見たことないけれど、なんであの時言えなかったんだろう。
後悔が残った。
この後悔はきっと、死ぬまで消えない。
転校した先、不良に囲まれ殴られた。
前歯が折れた。
みっともない顔、治す金はない。
ただ悔しくて、痛みより悔しくて泣いた。
女。
それが原因だった。
それから女に関する受難を掻い潜るうち、僕はあきとのあの美しい思い出を忘れてしまった。
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