第3話『観覧車で聞く恋愛相談と想いを揺らすメリーゴーランド」
文字数 1,631文字
今日のデートスポットは遊園地。この間の水族館は海に囲まれたリゾート地だったけど、ここは隣にショッピングモールがあったり、スパが隣にあったり、都会のど真ん中にみんなの夢を詰め込んだ感じのところだ。
観覧車、メリーゴーランド、ジェットコースター、コーヒーカップ、ゴーカート。狭さを感じさせないアトラクションの数々に、私達は色めき立った。
大地くんはかりんを誘い、みきはユウリくんに声をかけている。
私はまた余ってしまった……。どんなにメイクに気合を入れても余ってしまうことには変わりない。
「一緒にまわらない?」
すると、最後まで残っていた、健太くんが声をかけてくれた。ちょうど観覧車が空いていたので、二人で乗り込んだ。
隣り合わせではなく、向かい側に座った健太くんは、観覧車が動き始めると恋愛相談をはじめた。
「実はかりんちゃんのことが気になっててさ……」と私に切り出す。
そうか、前回は先に大地くんがかりんのことを誘ってたな。
「菜々ちゃんが帰宅した後、かりんと2ショットしたんだけど、どうやらユウリのことが第一印象だったらしくて」
うつむいて話す健太くんが段々かわいそうに思えてくる。彼は初日から、端っこにいるようなタイプだったので私は親近感を持っていた。
「大地も、かりんのことが気になっているみたいだし」
「なんとか、俺の気持ちを伝えたいんだよね」
腕を組んでいる健太くんに私は思わず言ってしまった。
「私、協力するよ!」
思いついたら、考える前に言葉が出てしまう私の悪い癖がまた出てしまっていた……。
観覧車から降りて、私と健太くんはカフェに向かう。凝ったラテアートが施されたカフェラテや何段にも積み重なったパンケーキが出てきて、みんな歓声を上げながら写真を撮りまくっている。
「2ショットに行こう」私と健太くんがほぼ同時に言った。健太くんはかりんを。私はユウリくんに向けて声を出した。健太くんがいたから私も声を出したけど、もしかしたら聞こえないぐらいの小さい声だったかもしれない。かりんはびっくりしたみたいだけど、「ありがとう」と言って二人でカフェから出ていった。
みきが大地くんをその後誘った。私の目の前にはやさしく微笑むユウリくんが残された。カフェを出ると、オレンジ色の夕日があたりを染めていた。そして早くも、2回目の初日が終わりかけようとしている。明日には、恋チケットがなくなる人がいる。もしかしたら、ユウリくんも明日帰ってしまうかもしれない。
芽生えかけた気持ちを伝えるかどうか迷っている間に、目の前にはメリーゴーランドが映った。ユウリくんが「乗らない?」と声をかけてくれる。私から声をかけたのに、彼にまた誘わせてしまった。
金色の縄で飾られた白い木馬に彼がまたがると、王子様のようだった。
前の木馬に乗った彼は私の方を振り向いて言った。
「誘ってくれたのは、健太を助けるため?」
思いのほかストレートな問いに戸惑ってしまう。私が答える前に音楽が始まってメリーゴーランドがまわりだす。
木馬は上下しながら、ゆっくりと動きだす。ユウリくんは時々ふりかえって私を見るけれども、もうお互いの声は聞こえそうにない。誤解を解きたくて言葉をかけようとするけど、近寄っては離れる木馬に乗ったままでは、私の言葉は届かないだろう。
中央にある支柱のあちらこちらには鏡がついている。私は白雪姫の魔女になって問いかける。
『鏡よ鏡、この世界であなたが今一番気になっている人はだあれ?』
「ユウリくん。私はユウリくんが好きだ………」
聞こえない距離になって、はじめて声が出せる。聞かれたことには答えられず、自分に芽生えた恋心もいつのまにか否定してしまう。私は弱虫で卑怯だから、いつだって距離をとったり、理由をつけたりしながらでしか行動できない。木馬のように私の気持ちは、彼に追いつくことはないのかもしれない……。
観覧車、メリーゴーランド、ジェットコースター、コーヒーカップ、ゴーカート。狭さを感じさせないアトラクションの数々に、私達は色めき立った。
大地くんはかりんを誘い、みきはユウリくんに声をかけている。
私はまた余ってしまった……。どんなにメイクに気合を入れても余ってしまうことには変わりない。
「一緒にまわらない?」
すると、最後まで残っていた、健太くんが声をかけてくれた。ちょうど観覧車が空いていたので、二人で乗り込んだ。
隣り合わせではなく、向かい側に座った健太くんは、観覧車が動き始めると恋愛相談をはじめた。
「実はかりんちゃんのことが気になっててさ……」と私に切り出す。
そうか、前回は先に大地くんがかりんのことを誘ってたな。
「菜々ちゃんが帰宅した後、かりんと2ショットしたんだけど、どうやらユウリのことが第一印象だったらしくて」
うつむいて話す健太くんが段々かわいそうに思えてくる。彼は初日から、端っこにいるようなタイプだったので私は親近感を持っていた。
「大地も、かりんのことが気になっているみたいだし」
「なんとか、俺の気持ちを伝えたいんだよね」
腕を組んでいる健太くんに私は思わず言ってしまった。
「私、協力するよ!」
思いついたら、考える前に言葉が出てしまう私の悪い癖がまた出てしまっていた……。
観覧車から降りて、私と健太くんはカフェに向かう。凝ったラテアートが施されたカフェラテや何段にも積み重なったパンケーキが出てきて、みんな歓声を上げながら写真を撮りまくっている。
「2ショットに行こう」私と健太くんがほぼ同時に言った。健太くんはかりんを。私はユウリくんに向けて声を出した。健太くんがいたから私も声を出したけど、もしかしたら聞こえないぐらいの小さい声だったかもしれない。かりんはびっくりしたみたいだけど、「ありがとう」と言って二人でカフェから出ていった。
みきが大地くんをその後誘った。私の目の前にはやさしく微笑むユウリくんが残された。カフェを出ると、オレンジ色の夕日があたりを染めていた。そして早くも、2回目の初日が終わりかけようとしている。明日には、恋チケットがなくなる人がいる。もしかしたら、ユウリくんも明日帰ってしまうかもしれない。
芽生えかけた気持ちを伝えるかどうか迷っている間に、目の前にはメリーゴーランドが映った。ユウリくんが「乗らない?」と声をかけてくれる。私から声をかけたのに、彼にまた誘わせてしまった。
金色の縄で飾られた白い木馬に彼がまたがると、王子様のようだった。
前の木馬に乗った彼は私の方を振り向いて言った。
「誘ってくれたのは、健太を助けるため?」
思いのほかストレートな問いに戸惑ってしまう。私が答える前に音楽が始まってメリーゴーランドがまわりだす。
木馬は上下しながら、ゆっくりと動きだす。ユウリくんは時々ふりかえって私を見るけれども、もうお互いの声は聞こえそうにない。誤解を解きたくて言葉をかけようとするけど、近寄っては離れる木馬に乗ったままでは、私の言葉は届かないだろう。
中央にある支柱のあちらこちらには鏡がついている。私は白雪姫の魔女になって問いかける。
『鏡よ鏡、この世界であなたが今一番気になっている人はだあれ?』
「ユウリくん。私はユウリくんが好きだ………」
聞こえない距離になって、はじめて声が出せる。聞かれたことには答えられず、自分に芽生えた恋心もいつのまにか否定してしまう。私は弱虫で卑怯だから、いつだって距離をとったり、理由をつけたりしながらでしか行動できない。木馬のように私の気持ちは、彼に追いつくことはないのかもしれない……。