第23話 命の火
文字数 498文字
だから。九条から縁組の話が持ち上がった時、藤音は決意したのだ。この手で、形見となった懐剣で弟の仇を 討とうと。九条隼人を殺し、自らも命を断とうと。
だが、所詮は浅はかな考えでしかなかったと思い知らされた。
自分たちが死ねば、和睦は破れ、戦になる。また罪のない多くの者が犠牲になる。
藤音ひとりの命であがなえるものではないのだ。
さらに、白河からついてきてくれた如月たち、侍女も無事ではすむまい。
長い沈黙の後、藤音は途方に暮れたように問いかけた。
「……では、わたくしはどうすればよいのですか」
生きてください、と隼人は穏やかな、しかしきっぱりとした口調で告げた。
「わたしを憎んでいてもいい。とにかく、生きていてください」
命を狙われたというのに、隼人は藤音を死なせたくないと思った。盟約が破れるから、という理由だけではない。彼女の命の火を消したくなかった。
ただ、その気持ちが何から来ているのかは、自分でもよくわからなかった。情なのか、憐憫なのか、贖罪 なのか……。
だが、所詮は浅はかな考えでしかなかったと思い知らされた。
自分たちが死ねば、和睦は破れ、戦になる。また罪のない多くの者が犠牲になる。
藤音ひとりの命であがなえるものではないのだ。
さらに、白河からついてきてくれた如月たち、侍女も無事ではすむまい。
長い沈黙の後、藤音は途方に暮れたように問いかけた。
「……では、わたくしはどうすればよいのですか」
生きてください、と隼人は穏やかな、しかしきっぱりとした口調で告げた。
「わたしを憎んでいてもいい。とにかく、生きていてください」
命を狙われたというのに、隼人は藤音を死なせたくないと思った。盟約が破れるから、という理由だけではない。彼女の命の火を消したくなかった。
ただ、その気持ちが何から来ているのかは、自分でもよくわからなかった。情なのか、憐憫なのか、