第11話

文字数 559文字

「さあ、食べたら買い出しに行くよ!」
「買い出し?何の?」
用意された遅めの朝ごはんを頬張りながら尋ねる。この朝ごはん、めっちゃ美味い!さすがカフェを経営してるだけあるかも。
「あんたの……そういえば、何て呼べばいいんだい?」
「私の事?」
安上さんがコーヒーの入ったカップを机に置きながら頷いた。
「うーんっと。」
すぐには思いつかない。でも、ふっとさっきの会話が頭をよぎった。
「普通に、くるみで。」
名前は呼ばれないと忘れちゃうものだ。たとえそれが自分の名前だとしても。くるみって名前、絶対に忘れたく無い。ママとパパから貰った初めてのプレゼント、だもんね。色んな人に呼んでもらいたい。
「じゃあ、くるみ。」
「わ、私は何て呼べばいいの?」
ちょっと照れてるとか別にそんなんじゃないし!でも、くるみって名前をちょっとだけ好きになれた……気がする。
「何でもいいよ。お好きなように。」
好きなようにって……。そんなのムズイんだけど。ここはやっぱり名前で呼ぶべき?名字?名前?それとも、ママとか?いや、それは何か違う気がする。なら……。
「店長、とか?」
「いいんじゃない?」
カフェの店長なのは間違いないし。肩書きで呼ぶの何か新鮮だけど、変わった呼び方もしてみたかったんだよね。だから、店長。
「さあ!くるみの新生活に必要な物、いろいろ買いに行くよ!」
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登場人物紹介

花森くるみ

両親がいない女子高生。

安上彩子

カフェ『エスポワール』を経営している。くるみを引き取る。

山影浩平

カフェの常連さん。くるみを助けた人。

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