第8話

文字数 562文字

「よく眠れた?」
「う、は、うん。」
次の日の朝。昨日の夜は自分でもびっくりするぐらい泣いて、そのまま服を着替えて寝た。
「何よ。「うん」か「はい」かはっきりさせなさいよ。」
「じゃあどっちで話したらいいのよ!」
「別にどっちでもいいわよ。それよりお風呂入っちゃいなさい。」
「う、うん。」
体を拭いて寝ただけだから、ちょっと気持ち悪い……なんて事無いんだよね。
「お風呂久しぶりだな……。」
「……後で話を聞かせて頂戴よ。」
私の小さな呟きも聞き逃さずに、女の人は言った。

「さて、話を聞かせて貰おうか。」
「話すこと何て何もないし。」
テーブルを挟んで、顔を合わせられるとちょっと緊張する。人の目を見てしっかり話すのも、本当に久しぶり。昨日から久しぶりの事が多すぎて、もう疲れたよ。
「じゃあ、私の話からしようか。」
そういえば、名前も聞いてなかった。私の名前も言ってなかったかも。そんな人をよく一晩泊めてくれたよね、って思う。今更ながら突っ込んどこ。
「私の名前は安上彩子。(やすかみあやこ)ここで一人暮らし。表にある小さなカフェを経営してる。そんな感じかな。次!あんたの番!」
さすがに名前ぐらい言わないと失礼?
「は、花森くるみ。こんな名前私には似合わないでしょ。」
「どうして?どうしてそう思うの?」
「だって!」
その理由が、すらっと口に出せなかった。
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登場人物紹介

花森くるみ

両親がいない女子高生。

安上彩子

カフェ『エスポワール』を経営している。くるみを引き取る。

山影浩平

カフェの常連さん。くるみを助けた人。

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