厄介な乱入者

文字数 1,052文字

 見覚えのある裕一の顔を見つけてヨーコ先生は安心した表情になった。

 「ちょうど今、B組の保健委員を捜していたところだったんだよ」

 “… … ”

 ヨーコ先生の突然の会話への乱入が祈乃里の顔に強い不安の影を落とした。

 「実はお前たちB組と一緒に検査器具を4階に運んだり会場の設営することになっていたD組の生徒たちが担当分の器具の入ったケースを運んでいて腰をヤッてしまってな… そこで申し訳がないのだが、B組にD組の分の仕事もしてもらおうかと思って君たちを捜していたんだよ! ア~、参った参った!」

 ヨーコ先生は頭の後ろに手をあてると、大げさにのけぞりながら笑った。

 「階段にぶちまけられた検査器具をもう一度煮沸消毒して乾燥しないといけないから、私はD組の分の作業を手伝ってやれんので困っていたところだ… B組の方の保健委員は二人ともいて良かったよ」

 “マズいですわね… このままでは私まで面倒なコトに巻き込まれてしまいますわ…”

 「私、実は保健委員ではないのです、先生」

 「んっ? さっきは手伝うのは構わんとか言っておったよな?」

 意外そうな顔つきのヨーコ先生 

 「先生のお話を聞くまで2クラス分の準備をするとは思ってませんでした。それに、この後にどうしても外せない用事があるので…」

 いかにも申し訳なさそうな表情の祈乃里 

 「そうか、仕方がないな…」

 ヨーコ先生は腕組みをして思案した。

 「うーん… それでは… お前たちに特別に時短グッズを貸してやろう。ついて来い!」

 ヨーコ先生は、内心では唇を噛む祈乃里と裕一とを引きつれて今は使われていない旧校舎に向かって進んで行く。

 「旧校舎は基本的には生徒は立ち入り禁止の区域だが、今回はコトがコトだけにお前たちを特別に入館させる。いいな、このことは他言無用だからな」

 二人にチャーミングなウィンクをするヨーコ先生

 “ウィンクなんかされたって… もともと、私は何も手伝うつもりは無かったのに…”

 古い校舎内は現在の校舎棟の照明器具と比べると数も明るさもかなり少なくて薄暗い。

 「ココをちょっとした物置代わりに使っている。今ブツを出すから少し待っていろ」

 部屋の鍵を取り出してヨーコ先生が錠を開けると、室外の周囲の古ぼけた雰囲気にはそぐわない清潔で生活感のない白色の内装の室内には近未来的な器具や道具類がところ狭しと納めてあった。その中でヨーコ先生は奥の方をガサゴソと捜すと、キャスター付きのハンガーに吊り下げられているカバーのかけられた大きなモノを引っ張りだした。
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