第26話

文字数 1,155文字

死体をどうするのかは気になっていた。ダニーは間髪入れずに聞く。
「どうするんだ?」
「スシローのトコ。フリーザーシテ、カチカチ、そんでバラバラ。」
 ダブルドラゴンはダニーのやる気を感じて、嬉しそうに説明する。スシローはここに来る前は水産工場で働いていた。誰にも見つからない冷凍庫を知っていて、ここの組織を利用して使えるようにしているらしい。フリーザーとクラッシャー、水産加工場か精肉工場らしいが、スシロー以外は誰も知らない。ダブルドラゴンたちは殺して、死体を裸にして髪を剃って、袋に詰めて、スシローに渡すだけだ。スシローは死体をバンに乗せて、どこかで何かして、この世界から綺麗さっぱり消す。
「ダニー、コロスヤツ、ドンナヤツ?」
「体が大きい。太っている。勉強ができる。」
「・・・ダニー、勝テル?」
 ダブルドラゴンたちは少し心配そうな顔をした。ダニーは自分が信用してくれている人たちに影響力をもっていることを誇らしく思った。期待に応えよう。こんなところに追い込まれても、前科者になったとしても、こうやって、自分を気にしてくれている人がいる。その人たちのためなら、なんだってやってやる。もう、それしか自分には残ってない。信用に応えるんだ。それさえすれば、自分が一人でなくて、意味がある存在だと見出すことができる。池上さえ殺せば、この世界で生きていける証を手に入れることができるのだ。
「ダブルドラゴン、どうやって殺せば良いか教えてくれ。これは、自分にとって重要な勝負なんだ。負けるわけにはいかない。裏切り者を殺さないといけないから。」
「ソウカ、ジャア、テツダウヨ」
「ありがとう。」

 ダニーはポン引きの仕事をしつつ、体の筋を伸ばしたり足踏みをしたりするようになった。柔軟と筋力は重要だからとダブルドラゴンに教えを受けたので、従順に鍛え出した。
「おっ、渋谷血まみれ事件じゃん。おい、俺を案内しろよ。」
「綺麗系ですか?おっぱいですか?ヌキですか?どこでも、なんでも紹介しますよ!」
有名な犯罪者に丁寧に扱われた酔っ払いはいい気になって、座るだけで五万円かかるぼったくりバーに連れて行かれる。ネオン眩しい繁華街を客を連れて歩きながら、ダニーの頭の中では、池上が何度もアクロバティックなダニーに殺されている。側転からの喉への一突き、溢れかえる血飛沫、それを抑えようとする焦る池上。まさに血の海。裏切り者が粛清されて、正義の味方であるダニーは世界中の賞賛を浴びている。ホステスたちが「強い男の精子が欲しい」とダニーに群がっている。それを見て笑顔で羨ましがるヤクザやチンピラたち。ダブルドラゴンやスシローは、仲間の活躍に目を細くしている。ダニーはすごい奴だと世界が評価してくれている。
 だが、ダニーは池上がどこに居るかさえ、まだ知らない。
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