第7話 双輪の華

文字数 916文字

◇◇ 双輪の華 ◇◇


カラーガードのAとBは、普門館の歴代のカラーガード中、屈指の'華'のあるペアだ。

はじめに気づいたのは、ステージ中央に左右から出てくる時の'歩き方'だった。
通常の歩行とは違い、つま先がいくぶん外開き。これはバレリーナと同じく、脚の内側の筋肉が鍛えられているからなのだろう。だからどんなに激しい振付をしようとも、体幹は常に安定しているのだ。

また、歩いているときの胸の張り方が違う。鎖骨が腕の筋肉を優しく押し出し、胸骨は上目遣いで上を見上げているのだ。

さらに気づいたのは、二人の首筋の美しさだ。
彼女たちは、上半身から指先の先端に行き届くまでのラインの美しさを常に意識して、舞う。
首周りには余分な力が入っておらず、肢体の動きも柔らかく、呼吸法も整っているようである。
それらが、演技に'優雅さ'を生み出している。たんに手わざでフラグを振り回すのとは、根本的に違う。

じっさい、学園祭のとき、ステージ左右で踊っているのを見たことがあるが、はたして、それはバレエ経験者のものであった。熟達したバレリーナとおなじ、首から肩にかけてのラインの美しさが認められるのも、なるほどと思わされたのだ。


そして、これらに加え、彼女たちには、楽器も演奏できる強みがある。
そう、彼女たちは、カラーガードである以前に、演奏家でもあるのだ。
この点、とくに重要で、彼女たちが舞うのは、通常、バレエ音楽に合わせてではなく、マーチング曲などの場合が多い。
彼女たちは楽器の呼吸とリズム、音楽性をよく理解しているからこそ、それらと、バレエ的要素との融合ができるのだ。


さらに加えて、その演技には二人の育ちの良さも滲み出ている。

Aは、どこまでも優雅であり、いわば、「動」。
またBには、「静」のなかに「歓び」が込められており、安定した芯の強さがある。
二人は、互いに認め合い、生かし合っている。
こうした友情の美しさも、ガード全体の動きの優雅さをも生み出している。



あり余る'華'―――。


彼女たちの創り出す世界は美しく、尊く、それゆえ、普門館バンド全体の華やかな夢の世界を一層引き立てるのだ。


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