新約聖書の原文を読もう

文字数 2,000文字

はじめに

 最近、語学の本を一冊読み通すことができた。忍耐強く、少しずつ読んでいき、読み終えるまでにけっこう時間がかかったので、なんとか読み通すことができたときには自分で自分をほめたい気分になった。
 読み通した本は、コイネー・ギリシャ語の入門書である。これはどういう言葉かというと、アレクサンドロス大王がギリシャをはじめとする各地を征服し、大帝国を打ち立てたとき、その領域で共通語となった言葉で、新約聖書もこの言葉で書かれている。
 書籍名は『新約聖書ギリシャ語入門』なのだが、以下、この本の読書体験を記すとともに、入門者が挫折しにくい本を紹介したい。

聖書ギリシャ語入門の本を買う

 原文の読解能力に関しては、聖書ヘブライ語は多少読めるものの、新約聖書はまったく読めないという状態からはじまった。いろいろな本が出ているが、初心者にも読めそうな本が見つからず、どうしようか困っていた。
 聖書ヘブライ語に関しては、小脇光男(こわきみつお)という人が書いた『聖書ヘブライ語文法』をテキストにした授業を受けたことがあったのだが、そのときの先生が『旧約聖書ヘブライ語入門』をつかって授業していることを知り、同じ著者が書いた『新約聖書ギリシャ語入門』を読もうかという気になった。YouTubeに、このテキストをもちいた、ギリシャ語入門講座が公開されているのも、この本を使おうと思った理由の一つである。
 というわけで、新約聖書ギリシャ語の学習をはじめようと思ったのだが、この本はすでに絶版となっており、入手が困難だった。結局、なるべく値段が安くなる時期を待って、中古で買えたのだが、今思えば、わりと運がよかったのかもしれない。

聖書ギリシャ語入門の本を読み始める

 学習を始めると、最初のうちはつまずくことなく読み進めることができたのだが、練習問題の和訳問題がだんだん難しくなり、学習の継続に辛さを感じるようになった。YouTubeの講座は、ときどき補足はあるものの、基本的にはテキストの記述をそのまま読み上げるようなスタイルで、文法の解説はわかりやすかったのだが、練習問題の解説に関しては、ただ日本語解答を示すだけになり、引用文に含まれる個々の単語の文法的説明がほとんどなくなっていったので、辞書をもたずにテキストだけで学習することが難しくなっていった。
 そこで、練習問題の文を理解するために役立つものを探していたところ、Bible Hubというサイトを見つけることができた。これは原文と、個々の単語の読み方や文法的説明が掲載されているサイトで、活用をおぼえ、自力で個々の単語の文法上の働きやその意味を特定しながら解読していく正統的な学習方法ではないものの、辞書すら持っていない自分としてはずいぶんありがたかった。これを使い、練習問題と解答を十分に理解することができたからだ。

おすすめのサイトと入門書

 まあ、そんなわけで、なんとか買ったテキストを最後まで読むことができたのだが、今思うと、もっと挫折しにくい独学のやり方があると思う。『新約聖書ギリシャ語入門』はたしかにいい本だが、文字の読み方の説明と練習が不十分だったり、動詞に関する説明があった後に、ふたたび名詞に関する説明があるといったように、あまり整理されていないので、まったくの初心者が最初の一冊として読み通しやすい本ではないと思う。そこで、完全な初心者には次のサイトや本をおすすめしたい。
 まずは、京大式・聖書ギリシャ語入門というサイト。これは、文法項目を一通り学ぶものではなく、初学者が聖書ギリシャ語に慣れるのに役立つとおもう。ただ、活用表がけっこうでてきたりするので、もう少し気軽に学びたいと思う人もいるかもしれない。そういう人におすすめなのは『ギリシャ語練習プリント』という本。これは聖書ギリシャ語というより古代ギリシャ語の入門書なのだが、新約聖書の例文もけっこうあつかっており、一番最初に読む本としては、これが一番いいかもしれない。活用表をのぞき、基本的にギリシャ語にはふりがながついている。例文に出てくる単語もわりと丁寧に説明されている。
 最近良さそうに思ったのは、『聖書検定ギリシア語公式テキスト』という本。検定試験用のテキストらしく、公式サイトで中味を見たところ、基本的な文法をあまりストレスなく学べそうな印象を受けた。
 『新約聖書ギリシャ語独習』という本も手元にあるのだが、これはどちらかというと基本文法を学んだあとに講読の第一歩としてつかうようなものだとおもう。第一部は文法の説明と例文の訳読、第二部はヨハネの手紙1の講読、第三部は活用表や構文法の紹介となっている。

参考資料
聖書検定協会
https://seisho-kentei.com/greek/
Bible Hub
https://biblehub.com/interlinear/matthew/1.htm
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