アンウェルカム パーソン
文字数 2,122文字
「なあ君たち、こっちの方にバスケ部のヤツらこなかったか? おれ、ヤツらとはぐれちゃったようなんだ」
“あいつA組の鷹野… こんな所まで男バスの連中がそろってやって来る訳ないじゃん”
新入生女子の間では高い人気を誇る、背の高いイケメン男子を見てエマは不審に思った。
“わざわざ何しに来たのかしらね、こんな人目を避けたような場所まで?”
「あら… 鷹野君じゃない! こんなところで出合うなんてキグウね! バスケ部の人たちは… 見かけないわよ…」
満面の笑みを浮かべて鷹野に歩み寄る杏奈のしゃべり声はうわずっていた。
”ちょっと前までの態度とは全然違うじゃんか! この女は何なんだ?“
陽二は杏奈の変わりぶりに気味悪さを感じていた。
「なんだアイツら、こっちにいないのか! おれ迷子になちゃったんだ、困ったな… ところで君たちはこんなところで何しているんだ?」
「私たちはね、告白タイムの途中だったの。ただし、罰ゲームのね」
“杏奈ったら! 関係のない人にまでそんなこと言っていいの?”
杏奈の無邪気で意地悪い口調の返答ぶりに美羽を顔が青ざめた。
「へえ罰ゲームしてたのか、面白いじゃん!」
興味深そうな声を出した鷹野は、ニヤケながら奥で顔を向け合って立っている二つの人影の方へ行った。そして不躾に背の高い方へ近づくと、物でも照らすようにスマホのライトを顔に向けてあてた。
“竜崎ったらよく黙っていられるわね、あんな失礼なことされて”
無礼なことをされている剛介よりもエマの方が熱くなり抗議のために思わず身を乗り出しそうになった。
「!」
この時、素早く陽二がエマを身体を引き留めた。エマが陽二の方を振り向くと、陽二は黙ったまま首を横に振り制止するように目で合図した。
“竜崎とコイツはさっき一悶着あってね… その時は竜崎もヤリ過ぎたし…”
「なんだ、みやげ物売り場んときのお前か」
剛介のことを不愉快そうに鷹野が見た。
「よくもさっきは見えないようにして人をゴミだらけにしてくれたな。ずいぶんとオチョクったマネしやがって。おれは人から舐められるのは許せねーんだよ」
急に拳を振り上げ、鷹野が挑発するように殴るマネをしたが剛介の方は無反応だった。
「まあいい… どうせお前が罰ゲームで告るところだったんだろ。そうでもなきゃダッセーお前が香月サンと話すことはないだろ」
今度は鷹野は振り返ると鈴の方に向いた。
「香月サン、はじめまして。あなたに渡したい物があるんだ」
突然ポケットから子猫キャラクターの海女さん姿のキーホルダーを取り出すと鷹野は鈴の前に差し出した。
「キミがこれを欲しがっているって聞いたから手に入れたんだ、あげるよ。受け取ってくれ」
美羽の方をチラッと見た鷹野だったが、話をしているあいだ中は話している言葉とは反対にずっと鷹野は不本意そうな様子だった。
“私は鷹野君に鈴の欲しがっている物のことを教えていない… 私をないがしろにしたわね、美羽!”
杏奈が美羽のことをにらみつけると美羽は目をそらした。
“杏奈はいつも自分のことしか話さないから鷹野さんが私に後で聞きに来たんですけど…”
「それにどうしてアイツは嫌そうな顔してプレゼントしようとしてるんだ?」
鷹野から目を離さないまま陽二が疑問を口にした。
「鷹野は自分でイケメンって分かっていてプライドが高いのよ、たぶん。だから自分から告白は絶対にできないの。だって自分が断られる事はあってはならないからね。それで女の子の方から告白するように相手の好きな物をプレゼントをして仕向けているのよ」
同じように鷹野から目を離せないエマが答えた。
「僕ならそんな遠回しなことはしないけどな」
「そのプレゼントをすること自体が苦痛だなんて、プライドが本当に高いのね」
黙り続けている鈴にとまどう鷹野は不安に駆られていった。
「なあ、香月サンの欲しい物をワザワザ調べたんだぜ! すごいだろ、おれ!」
「誰も何も聞いていないのに… とにかく自慢したくて、そして褒めて欲しいのね… ちょっと引いちゃうくらい… 絶対にナルちゃん体質よ」
エマの口から漏れた言葉に陽二もうなずいていた。
「ごめんなさいね。ウチ、もうそれ持っているんだ」
直前までキョドっていた鷹野は鈴の答えを聞いて呆けたように口を開けた。
「それにウチの方が竜崎さんに告っているんよ。まだ途中なんだけどね」
“みやげ物売り場ではあのキーホルダーが無くて残念そうだったくせに、この女!”
杏奈の顔に憤怒が隠れることはなかった。
「ふざけやがって!」
鷹野は突然ブチ切れるとキーホルダーを地面に叩きつけて踏み砕いた。
「おい!」
子猫の海女さんのキーホルダーが壊されるの見て剛介の形相が変わった。
「それがあれば俺がカトリにプレゼントできて喜ばれていたのに!」
“カトリって誰なの?”
初めて聞く名に鈴の心はザワついた。
“すまん、カトリ… 俺はマダマダだ…”
大切なものを傷つけられた気がして剛介はいても立ってもいられなくなった。気が付くと鷹野の肩に後から手をかけて引っ張っていた。
「ケンカなら負けねーぞ、このバスケ野郎!」
“あいつA組の鷹野… こんな所まで男バスの連中がそろってやって来る訳ないじゃん”
新入生女子の間では高い人気を誇る、背の高いイケメン男子を見てエマは不審に思った。
“わざわざ何しに来たのかしらね、こんな人目を避けたような場所まで?”
「あら… 鷹野君じゃない! こんなところで出合うなんてキグウね! バスケ部の人たちは… 見かけないわよ…」
満面の笑みを浮かべて鷹野に歩み寄る杏奈のしゃべり声はうわずっていた。
”ちょっと前までの態度とは全然違うじゃんか! この女は何なんだ?“
陽二は杏奈の変わりぶりに気味悪さを感じていた。
「なんだアイツら、こっちにいないのか! おれ迷子になちゃったんだ、困ったな… ところで君たちはこんなところで何しているんだ?」
「私たちはね、告白タイムの途中だったの。ただし、罰ゲームのね」
“杏奈ったら! 関係のない人にまでそんなこと言っていいの?”
杏奈の無邪気で意地悪い口調の返答ぶりに美羽を顔が青ざめた。
「へえ罰ゲームしてたのか、面白いじゃん!」
興味深そうな声を出した鷹野は、ニヤケながら奥で顔を向け合って立っている二つの人影の方へ行った。そして不躾に背の高い方へ近づくと、物でも照らすようにスマホのライトを顔に向けてあてた。
“竜崎ったらよく黙っていられるわね、あんな失礼なことされて”
無礼なことをされている剛介よりもエマの方が熱くなり抗議のために思わず身を乗り出しそうになった。
「!」
この時、素早く陽二がエマを身体を引き留めた。エマが陽二の方を振り向くと、陽二は黙ったまま首を横に振り制止するように目で合図した。
“竜崎とコイツはさっき一悶着あってね… その時は竜崎もヤリ過ぎたし…”
「なんだ、みやげ物売り場んときのお前か」
剛介のことを不愉快そうに鷹野が見た。
「よくもさっきは見えないようにして人をゴミだらけにしてくれたな。ずいぶんとオチョクったマネしやがって。おれは人から舐められるのは許せねーんだよ」
急に拳を振り上げ、鷹野が挑発するように殴るマネをしたが剛介の方は無反応だった。
「まあいい… どうせお前が罰ゲームで告るところだったんだろ。そうでもなきゃダッセーお前が香月サンと話すことはないだろ」
今度は鷹野は振り返ると鈴の方に向いた。
「香月サン、はじめまして。あなたに渡したい物があるんだ」
突然ポケットから子猫キャラクターの海女さん姿のキーホルダーを取り出すと鷹野は鈴の前に差し出した。
「キミがこれを欲しがっているって聞いたから手に入れたんだ、あげるよ。受け取ってくれ」
美羽の方をチラッと見た鷹野だったが、話をしているあいだ中は話している言葉とは反対にずっと鷹野は不本意そうな様子だった。
“私は鷹野君に鈴の欲しがっている物のことを教えていない… 私をないがしろにしたわね、美羽!”
杏奈が美羽のことをにらみつけると美羽は目をそらした。
“杏奈はいつも自分のことしか話さないから鷹野さんが私に後で聞きに来たんですけど…”
「それにどうしてアイツは嫌そうな顔してプレゼントしようとしてるんだ?」
鷹野から目を離さないまま陽二が疑問を口にした。
「鷹野は自分でイケメンって分かっていてプライドが高いのよ、たぶん。だから自分から告白は絶対にできないの。だって自分が断られる事はあってはならないからね。それで女の子の方から告白するように相手の好きな物をプレゼントをして仕向けているのよ」
同じように鷹野から目を離せないエマが答えた。
「僕ならそんな遠回しなことはしないけどな」
「そのプレゼントをすること自体が苦痛だなんて、プライドが本当に高いのね」
黙り続けている鈴にとまどう鷹野は不安に駆られていった。
「なあ、香月サンの欲しい物をワザワザ調べたんだぜ! すごいだろ、おれ!」
「誰も何も聞いていないのに… とにかく自慢したくて、そして褒めて欲しいのね… ちょっと引いちゃうくらい… 絶対にナルちゃん体質よ」
エマの口から漏れた言葉に陽二もうなずいていた。
「ごめんなさいね。ウチ、もうそれ持っているんだ」
直前までキョドっていた鷹野は鈴の答えを聞いて呆けたように口を開けた。
「それにウチの方が竜崎さんに告っているんよ。まだ途中なんだけどね」
“みやげ物売り場ではあのキーホルダーが無くて残念そうだったくせに、この女!”
杏奈の顔に憤怒が隠れることはなかった。
「ふざけやがって!」
鷹野は突然ブチ切れるとキーホルダーを地面に叩きつけて踏み砕いた。
「おい!」
子猫の海女さんのキーホルダーが壊されるの見て剛介の形相が変わった。
「それがあれば俺がカトリにプレゼントできて喜ばれていたのに!」
“カトリって誰なの?”
初めて聞く名に鈴の心はザワついた。
“すまん、カトリ… 俺はマダマダだ…”
大切なものを傷つけられた気がして剛介はいても立ってもいられなくなった。気が付くと鷹野の肩に後から手をかけて引っ張っていた。
「ケンカなら負けねーぞ、このバスケ野郎!」