年下男子と進化と幼稚
文字数 2,164文字
建物内のバベルの残りの連中の追撃方法の打ち合わせとともに一休みをとったカトリと隼人は、追撃の再開後に次々と待ち伏せする相手を捕獲し続けた。その場を制圧したら、倒した相手の手足を結束バンドで拘束していった(捕獲した相手は、あとで別動隊が来てまとめて車に放り込んで身柄を移送することとなっていた)。
その終盤のことだった。
「マガジンチェンジ!」
射撃中にMk.11狙撃銃の弾薬が無くなったカトリは空の弾倉を満タンの弾倉へ交換するので、隼人に銃が使えないことを伝えた。
隼人は弾倉交換中のカトリを援護するため、MP7A1を敵に向かって掃射した。その間にカトリは狙撃銃から空の弾倉をはずして、ポーチから弾丸が満タンの弾倉を取り出し始めた。
隼人の弾幕に圧倒されて敵の銃撃が止んだ時…
コンコンッ!
装着前に弾倉内の弾丸の並びの不ぞろいを無くすために、カトリが弾倉をヘルメットで数回叩いた金属音が光も音もなかった闇の中に響き渡った。敵はその金属音を聞くや否や、音源のカトリ(のヘルメット)の方向へ目がけてAK-47を乱射し始めた。
「?!」
自分のたてた音と敵の集中攻撃に焦ったカトリはすっかり取り乱してしまい、手から交換中の弾倉を滑り落としてしまった。
《オイオイ、ヘルメットなんて銃弾には銀紙みたいなもんだぞ!》
隼人は立ち上がって自分が盾になりながらカトリの方へ駆け寄り、防具を着た体全体でカトリの頭部をカバーした。
「カトリ! とにかく、リロードしろ!」
カトリは、自分の頭を覆う隼人の体が敵の弾丸の衝撃で大きく揺れるのを何度も感じた。いくら防弾装備と言っても限界があるので、揺れを感じるたびに隼人が大ケガをしないか、気が気でなかった。
“ハヤト、ゴメン、本当にゴメンなさい! もう少しだけ待ってて!”
一方的に銃撃を受けるだけの隼人の無事を祈りつつ、わずか数秒を数分間のように感じながらカトリはなんとか弾倉を狙撃銃にセットできた。それと同時に自己最速記録でボルトを引いて弾丸をチャージし、隼人の体の上から敵の銃口炎へ向けて銃をフルオートにして発射した。全開モードで弾丸を発射しながらも無音のまま、満タンの弾倉はアッという間に空になり、カトリの速射を食らった敵は一瞬で沈黙した。
「ハヤト、大丈夫?!」
フェイスガードの下で涙目になり心配そうなカトリが隼人の顔をのぞき込んだ。
「大丈夫。と言いたいが、背中のアチコチを打撲をしたし、骨折もしたかもしれない。弾丸は留めても、その衝撃力は生身のカラダで受け止めるからな。狙撃手はニオイや音を出すなってあれだけ言ってあっただろ。人の言うことはキチンと聞いて覚えておけ」
無理をして痛みをこらえている様子の隼人は話すのも苦しそうだった。
「ウン… ウン…」
自分の失敗で隼人の命を危険にさらしたカトリは、いたく反省して泣きそうな声を出しながら何度もうなずいていた。
「オレの頭部と足は大丈夫だから心配するな。それにいつまでもそんな顔をしているな」
カトリの意気消沈の様子を見かねた隼人は少し乱暴に、カトリの頭をヘルメット越しに数回なでた。隼人の手荒いコミュニケーションにカトリは少々迷惑顔だったが、嫌な思いはしていなかった。
「たぶん、あと残るのは最初に入口ホールで攻撃をした時に、取り逃がした1人だけだと思うんだ」
ゴーグルとフェイスガードをはずしてスポーツ飲料を飲んで、一息ついた隼人はカトリへ語りかけていた。
「オレが撃ったときに確かに手応えは感じたんだけどな…」
“いつの間にハヤトはこんなにスゴくなったの? 初めて一緒に銀行強盗の対応をした時とは全然違う… おまけに色々な気づかいまでできるようになって… なんだか人が変わったみたい…”
同じく気持ちが落ち着いたカトリは同じようにゴーグルとフェイスガードをはずして、顔を手でぬぐいながらスポーツ飲料を補給しながらマジマジと隼人の顔を見つめていた。
“ハヤトは私よりもホントは年下のくせに、妙に落ち着いて頼りになってきた… 一緒にいて安心できるというか、守ってもらえるというか… 今まで周りにいた、年はかなり上の頭デッカチ、エセフェミニスト、それに殻にこもった男の人たちとは全然違う…”
「カトリ、どうした? オレの顔に何か付いているか?」
カトリの視線に誘われて顔をさする隼人と目が合ったカトリは、すぐさま目をそらして下を向いた。
「いえ、何となく… ハヤトのこと、ずいぶんと偉そうな態度になって嫌だと思っていたけど、けっこう頼りがいもあるようになってきた、と思ってね…」
「ハ、ハ! 今までオレは頼りなかったのか! まっ、オレの方はカトリのことをこれまでずっと頼りにしているけどな!」
「すぐそうやって、ワタシをバカにする!」
「本当なんだからしょうがないだろ! スネるところが、またカワイイぞ!」
「もう、ハヤトなんか知らない!」
「人のことを偉そうな人間になったなんて言うからだ!」
隼人はふざけて、カトリをからかう素振りを止めようとはしなかった。
その終盤のことだった。
「マガジンチェンジ!」
射撃中にMk.11狙撃銃の弾薬が無くなったカトリは空の弾倉を満タンの弾倉へ交換するので、隼人に銃が使えないことを伝えた。
隼人は弾倉交換中のカトリを援護するため、MP7A1を敵に向かって掃射した。その間にカトリは狙撃銃から空の弾倉をはずして、ポーチから弾丸が満タンの弾倉を取り出し始めた。
隼人の弾幕に圧倒されて敵の銃撃が止んだ時…
コンコンッ!
装着前に弾倉内の弾丸の並びの不ぞろいを無くすために、カトリが弾倉をヘルメットで数回叩いた金属音が光も音もなかった闇の中に響き渡った。敵はその金属音を聞くや否や、音源のカトリ(のヘルメット)の方向へ目がけてAK-47を乱射し始めた。
「?!」
自分のたてた音と敵の集中攻撃に焦ったカトリはすっかり取り乱してしまい、手から交換中の弾倉を滑り落としてしまった。
《オイオイ、ヘルメットなんて銃弾には銀紙みたいなもんだぞ!》
隼人は立ち上がって自分が盾になりながらカトリの方へ駆け寄り、防具を着た体全体でカトリの頭部をカバーした。
「カトリ! とにかく、リロードしろ!」
カトリは、自分の頭を覆う隼人の体が敵の弾丸の衝撃で大きく揺れるのを何度も感じた。いくら防弾装備と言っても限界があるので、揺れを感じるたびに隼人が大ケガをしないか、気が気でなかった。
“ハヤト、ゴメン、本当にゴメンなさい! もう少しだけ待ってて!”
一方的に銃撃を受けるだけの隼人の無事を祈りつつ、わずか数秒を数分間のように感じながらカトリはなんとか弾倉を狙撃銃にセットできた。それと同時に自己最速記録でボルトを引いて弾丸をチャージし、隼人の体の上から敵の銃口炎へ向けて銃をフルオートにして発射した。全開モードで弾丸を発射しながらも無音のまま、満タンの弾倉はアッという間に空になり、カトリの速射を食らった敵は一瞬で沈黙した。
「ハヤト、大丈夫?!」
フェイスガードの下で涙目になり心配そうなカトリが隼人の顔をのぞき込んだ。
「大丈夫。と言いたいが、背中のアチコチを打撲をしたし、骨折もしたかもしれない。弾丸は留めても、その衝撃力は生身のカラダで受け止めるからな。狙撃手はニオイや音を出すなってあれだけ言ってあっただろ。人の言うことはキチンと聞いて覚えておけ」
無理をして痛みをこらえている様子の隼人は話すのも苦しそうだった。
「ウン… ウン…」
自分の失敗で隼人の命を危険にさらしたカトリは、いたく反省して泣きそうな声を出しながら何度もうなずいていた。
「オレの頭部と足は大丈夫だから心配するな。それにいつまでもそんな顔をしているな」
カトリの意気消沈の様子を見かねた隼人は少し乱暴に、カトリの頭をヘルメット越しに数回なでた。隼人の手荒いコミュニケーションにカトリは少々迷惑顔だったが、嫌な思いはしていなかった。
「たぶん、あと残るのは最初に入口ホールで攻撃をした時に、取り逃がした1人だけだと思うんだ」
ゴーグルとフェイスガードをはずしてスポーツ飲料を飲んで、一息ついた隼人はカトリへ語りかけていた。
「オレが撃ったときに確かに手応えは感じたんだけどな…」
“いつの間にハヤトはこんなにスゴくなったの? 初めて一緒に銀行強盗の対応をした時とは全然違う… おまけに色々な気づかいまでできるようになって… なんだか人が変わったみたい…”
同じく気持ちが落ち着いたカトリは同じようにゴーグルとフェイスガードをはずして、顔を手でぬぐいながらスポーツ飲料を補給しながらマジマジと隼人の顔を見つめていた。
“ハヤトは私よりもホントは年下のくせに、妙に落ち着いて頼りになってきた… 一緒にいて安心できるというか、守ってもらえるというか… 今まで周りにいた、年はかなり上の頭デッカチ、エセフェミニスト、それに殻にこもった男の人たちとは全然違う…”
「カトリ、どうした? オレの顔に何か付いているか?」
カトリの視線に誘われて顔をさする隼人と目が合ったカトリは、すぐさま目をそらして下を向いた。
「いえ、何となく… ハヤトのこと、ずいぶんと偉そうな態度になって嫌だと思っていたけど、けっこう頼りがいもあるようになってきた、と思ってね…」
「ハ、ハ! 今までオレは頼りなかったのか! まっ、オレの方はカトリのことをこれまでずっと頼りにしているけどな!」
「すぐそうやって、ワタシをバカにする!」
「本当なんだからしょうがないだろ! スネるところが、またカワイイぞ!」
「もう、ハヤトなんか知らない!」
「人のことを偉そうな人間になったなんて言うからだ!」
隼人はふざけて、カトリをからかう素振りを止めようとはしなかった。