第1話

文字数 1,057文字

 レッドホットチリペッパーズの楽曲を久しぶりに聴いた。昔は各楽器のフレーズの変態性に戸惑っていた記憶があった。だが、今聴くとこの変態フレーズの哲学性に息を飲むことになったのである。ソロパートならいざ知らず、リフが来るべき場面にキャッチーさではなく、最高にメロディアスなそのうわものにフリージャズかのごときアクロバティックなフレーズを弾いて録音し、それが音源となって売られ、大衆にも大いにウケる、その理由を僕は、数年間、デスクトップミュージックというエクストリームスポーツのような代物を趣味にし、誰も知らぬところで遊んでいたことにより、僕なりの解釈で理解することになった。
 説明しようにも、この変態的哲学性は、言葉に書き起こすのは難しい。プログレッシブロックとはまた違う位相にある哲学性なのだ。レッチリは、その楽曲の骨太な骨格をロックの王道として大切にしながら、編曲の段階で暴れる。それが一回性を重んじるライブステージで表現するだけでなく、音源の段階から、実践するのだが、その方向性は、なんらかの創作に関係したひとではないと、理解する前に否定してしまうことすらあるのではないか、と僕は考える。いや、本国でならまだしも、この日本という国で聴くなら、そうであろう。だからこその伝説的バンドである、とも言える。パッケージング出来るか否か、そのギリギリを、レッドホットチリペッパーズは狙うのだ。

 Let me see yourcigarette lighter!!

 僕は興奮しながら、アップルミュージックでレッチリのアルバムを聴き続けた。最高の気分だった。自分なりの解釈ではあるが、腑に落ちることが、やっと出来たのだ。素直に嬉しい。わからなかったものがわかるようになる喜びという奴は存在する。まるで勉強の醍醐味を知ったときのようだ。その喜びを、勉強とは違う場面で知ることがあるのだから、人生って奴は捨てたもんじゃない。これは肉体性に関することでもある。人工知能が似たことをしても楽しくもなんともないことに関する話だ。肉体が成長し精神が成熟していくその過程で得られた経験値が理解するに至る、ひとつの物語である。僕は浮遊する。電子の海を、現実の街を、部屋のシーツのなかを。その時々で不意に訪れる天啓。七つの門を開き、僕は僕だけの冥府の奥へと踏み入ることが許される。そこは楽土でも煉獄でもなく、ただただ冥府と言うしかない闇であり光でもあるのだ。肉体は育ち、いつか朽ちていく。その過程で得られたものは、僕固有のものでしかない領域だ。


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