第1話
文字数 982文字
「宮崎市立南国小学校から転校してきました、黒木龍太です。よろしくお願いします」
緊張した面持ちで、前の晩から考えていたセリフを淀みなく言えた。よし、決まった! と思った。みんな、仲良くしてくれよー
ところが、教室にはざわめきが起こっていた。
「なんか、訛 ってるね」
「うん、変なしゃべり方だ」
「あれあれ、『いなかもん大将』!」
「そうだ、大ちゃんだ!」
え? なんだ、それ…… 何か、違うぞ?
その後、担任教師により教室内の座席に案内された。隣の席に座る女子も、なんだか怪訝な顔でこちらを見る。
「大ちゃん、よろしく」
だからその、大ちゃんって何? オレ、龍太だよ……
続く授業は特に難しくもなく、知っている話が続いていた。宮崎の小学校とは進度が違っていたためと、自宅で予習していたための余裕だった。
担任教師はむしろ東京が進んでいるかもしれないと配慮しているのか、
「黒木君、これ宮崎でもう習った?」
と聞いてくれる。が、むしろ邪魔だ。
「はい、知ってます」
と多くの場合答えてしまうので、クラスメイト達もだんだん面白くなくなって来る。東京の子は勉強が出来る、と思い込んでいた龍太だったが、それはむしろ誤解だった。よっぽど宮崎の時の方が勉強の進み具合は早かったし、周りの子も普通だった。
でも、なんで東京には、掛け算九九もしっかりできん三年生がおるっちゃろ? と思うほどだった。
授業では、先生に当てられて黒板の前でクラスメイトに説明をすることになる。でもそれは、どう頑張っても、宮崎弁を披露することになる。すぐに声を出す連中というのは、説明の内容よりもそういうところに着目する。
「訛 っていてわからない」
「三八24の2をここに書いておいて、次の五八40の一の位がゼロになるからですよ、足して2を書くとです」
と龍太のしゃべり方を真似してくる。担任は止めなさいと制してくれるが、その表情は笑っている。なんだよ、これ。馬鹿に教えてやっちょるのに、何で馬鹿にされることになるとよ? 徐々に学校には行きたくなくなっていった。
宮崎の小学校では、五人の仲良しがいて、喧嘩が強いグループと目されていた。そういう中にいたから、クラスメイトから攻撃されることなんて、まずなかった。身体的暴力はもちろんのこと、口頭でのそれも記憶にはない。
そこで龍太は思った。そうだ、嫌なことがあったら、喧嘩しちゃる!
緊張した面持ちで、前の晩から考えていたセリフを淀みなく言えた。よし、決まった! と思った。みんな、仲良くしてくれよー
ところが、教室にはざわめきが起こっていた。
「なんか、
「うん、変なしゃべり方だ」
「あれあれ、『いなかもん大将』!」
「そうだ、大ちゃんだ!」
え? なんだ、それ…… 何か、違うぞ?
その後、担任教師により教室内の座席に案内された。隣の席に座る女子も、なんだか怪訝な顔でこちらを見る。
「大ちゃん、よろしく」
だからその、大ちゃんって何? オレ、龍太だよ……
続く授業は特に難しくもなく、知っている話が続いていた。宮崎の小学校とは進度が違っていたためと、自宅で予習していたための余裕だった。
担任教師はむしろ東京が進んでいるかもしれないと配慮しているのか、
「黒木君、これ宮崎でもう習った?」
と聞いてくれる。が、むしろ邪魔だ。
「はい、知ってます」
と多くの場合答えてしまうので、クラスメイト達もだんだん面白くなくなって来る。東京の子は勉強が出来る、と思い込んでいた龍太だったが、それはむしろ誤解だった。よっぽど宮崎の時の方が勉強の進み具合は早かったし、周りの子も普通だった。
でも、なんで東京には、掛け算九九もしっかりできん三年生がおるっちゃろ? と思うほどだった。
授業では、先生に当てられて黒板の前でクラスメイトに説明をすることになる。でもそれは、どう頑張っても、宮崎弁を披露することになる。すぐに声を出す連中というのは、説明の内容よりもそういうところに着目する。
「
「三八24の2をここに書いておいて、次の五八40の一の位がゼロになるからですよ、足して2を書くとです」
と龍太のしゃべり方を真似してくる。担任は止めなさいと制してくれるが、その表情は笑っている。なんだよ、これ。馬鹿に教えてやっちょるのに、何で馬鹿にされることになるとよ? 徐々に学校には行きたくなくなっていった。
宮崎の小学校では、五人の仲良しがいて、喧嘩が強いグループと目されていた。そういう中にいたから、クラスメイトから攻撃されることなんて、まずなかった。身体的暴力はもちろんのこと、口頭でのそれも記憶にはない。
そこで龍太は思った。そうだ、嫌なことがあったら、喧嘩しちゃる!