セリフ詳細

カール・シュミットから引用するのですが、大澤真幸先生の書いているインターネット記事からベタ貼りすると、「政治に固有な区別は、敵、友(清水幾太郎訳では『味方』)という区別にある」となるのです。


シュミットによれば、政治の最も重要な任務は誰が友で誰が敵かを決断することにある。敵は、物理的手段を用いて殺害する可能性もある他者のことなので、この政治概念には不穏な含みがある。この概念から普通に連想されるのは、君主や主人が臣下に「敵を倒せ!」等と命令している姿だろう。するとシュミットの政治観は前近代的で保守的なものだと思いたくなる。しかしそうではない。 まったく逆に、この政治概念は、近代性ということをまじめに純粋に受け取ったときにこそ導かれるアイデアである。近代性とは、誰もが受け入れる(内容豊かな)普遍的な価値や善は存在しない、ということだ。全員に自明なものと見なされる善の観念や宗教的な規範はない。だから普遍的な善や正義が存在しているかのように仮定し、それらによって政治行動や戦争を正当化することは許されない。では近代の条件のもとで、政治はどうすべきなのか。暴力的とも見える仕方で秩序を押し付けるほかない。それこそが、友と敵の区別だ。「この命令を受け入れる者が友である」とする決然たる意志が必要になる。

=朝日新聞2020年7月4日掲載


以下、この文章が書かれてあるURLのリンクを張るのです。

作品タイトル:死神はいつも嘘を吐く

エピソード名:第116話 近代性とは普遍的な価値や善は存在しないということ

作者名:成瀬川るるせ  rulerse

6203|学園・青春|連載中|122話|210,992文字

死神, ガールズラブ, 百合, 社会・思想, まったりタイム, 現代ファンタジー, チャットノベル大賞, 宅飲み, 日常, 創作論・評論

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今日もまったりライフの、田山姉妹と居候の死神少女が織りなす一幕劇。忍び寄る影には評論のチカラで立ち向かえ。死神少女たちの青春×思想に、抹茶ラテを添えて綴る日常ファンタジー。