聖書と文学 ~名作で読む聖書の世界

作者 mika

[歴史]

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名作として親しまれている文学作品の多くに、聖書の言葉が引用されています。
文豪たちが、聖書のどの場面をどのように解釈し、どのように表現しているのかを読むことで、作家の信仰や欧米文化の理解につながるはずです。
このささやかな試みが、名作の魅力の再発見となり、聖書の理解の一助となれば、筆者として望外の幸せです。

ファンレター

アニメとはだいぶ趣が異なる原作の「ハイジ」

朝、出勤前に少し読んだら止まらなくなってしまい①②と拝読して、非常に感じ入りました……「ハイジ」とはこんなにシリアスで、そして救済のお話だったのですね。
ハイジがゼーゼマン老夫婦からの教えを嚙み砕いて自分のものにして、クララに語った「神に祈ることの意味」は、とても沁みました。いい言葉、心に留め置きたい。
祖父の人物造型は現在にも通じる普遍性を感じました。頑なで蒙昧な心の負の連鎖(教育ネグレクトなど)。聖書に導かれるような共同体への復帰は感動的でした。
私はmikaさんの作品に出合わなければ、こういった世界を知り得なかった、明るく静かで清々しい気持ちを、ありがとうございます。

(noteの連載『きものがたり』も大好きです。私は日本画が好きなので、和柄にうっとりしちゃいます)

返信(1)

佐久田さん、出勤前のお忙しいなかでお読みいただき、どうもありがとうございます!
そうなんです、わたしはアニメの再放送を2012年頃に観たのですが、アニメを最後まで観た後で原作を買って読んでみたら、あまりに内容が違うのですごく驚いたことを覚えています。

ハイジの祖父のキャラクターはたしかに現代にも通じる人物像ですね。みんなが自分を馬鹿にしていると思いこんで、支援の手を差し伸べようとした相手に攻撃的になってしまうところなど……。
祖父はハイジが嫌いだから教育ネグレクトをしていたわけでなくて、祖父なりに孫をかわいがっているんです。でもそのかわいがり方というのが歪んでいて、ペットをかわいがるようなものに近いので、孫を無知のままでいさせようとするのでしょうね。
そんなかなり問題のある人物だった祖父が、教育を受けて戻ってきたハイジの導きで社会復帰を果たすクライマックスは、佐久田さんのおっしゃる通り、まさに「救済」と言えるものですね!
「放蕩息子のたとえ」に導かれた祖父の社会復帰は、わたしも何度読み返しても感動する場面なので、今回はその感動をお伝えできてよかったです^^

ハイジがクララに言う、「神さまが願いを聞いてくださらなかったとしても、お祈りをやめてはいけない」という言葉は、作者ヨハンナの考え方がよく分かるものですね。
願いをかなえてもらえないなら、お祈りしたって意味がない。どうして神さまはわたしの祈りを聞いてくれないのか、という気持ちは誰でも一度は思う疑問だと思います。わたしも予期せぬ不幸に見舞われたときは、たびたびそう思っています。
そういう素朴な疑問に作者はちゃんと向き合って、作者の答えを書いてくれています。彼女は47歳でデビューして、『ハイジ』は53歳の作品という遅咲きの作家です。彼女が積み重ねてきた人生の経験値というか、年輪のようなものが、物語を通して感じられますね。

『きものがたり』も楽しんでいただけて、うれしいです! 次回はふだん着の着物の話を書こうかと思っています。