五月の死神

[ミステリー]

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20件のファンレター

――佐伯さん、あなたずいぶんね。せっかくお手紙さしあげたのに知らんぷりして……。
昭和初期のミッション系高等女学校。
クラスの女王・杠和子と、「死神」とあだなされる佐伯文枝。
二人の少女の関係は、意外な方向に動き始める……。

※本作は昭和八年(1933年)に起こった「三原山女学生心中事件」をモチーフにしていますが、作品内容は作者の純然たるフィクションです。

ファンレター

愛と祈り……

連載終了お疲れ様です。
まさに「短期集中連載」という感じの、高密度な作品でした……!

美しい世界を見せつつ、常にどこかで「この外に現実がある」と呼びかけていたように感じられた前半から、後半に進んで、「ああやはり」と腑落ち……。

語り手が「鋭い知性と感性を持った文学少女」(これは本当に『まさにそのもの』という視点と語りでした。気品、思慮の深さ、一途さ、そして危うさなど……)ということもあり、その繊細な思いが痛いほど伝わってくるようで、クライマックスに向けてハラハラしっぱなしでした。

そして、物語の結末として、実際にあった事件のそれとは異なるものが導き出されたたことに思いを馳せ。
そこに南ノさんの、弱い立場を生きていかなければならない人たちへの「祈り」「愛」があるのかな? などと思いました。「死」を選んでそれを外野に消費させるな、生きていけ……! という。

そしてエピローグ、悲しい現実はあった、けれど、美しいものをよすがに少女たちは生きた、と感じさせる結び……とても深いです。そんな少女たちが、かつて、そして今もどれだけいることか。


改めて、お疲れ様でした!

返信(1)

羽庫ふみさん
お心のこもったレターをいただき、感謝の気持ちでいっぱいです!
前にいただいたレターでも、「裏・乙女の港、大人の少女小説」という、大変ありがたく嬉しいお言葉をいただきましたが、羽庫さんの作品を読ませていただくにつけても、羽庫さんの問題意識の鋭さを感じずにはいられません。

そして、そうなんです、おっしゃる通り、意図的に物語の結末を「現実の事件」とは違うものにしました。現実では、生き残った少女も、事件の約二か月後に「謎の病死」を遂げるわけですが、健康な少女がいきなり病死するというのはあまりに不自然で、私には「自〇」としか考えられませんし、彼女をそこまで追い込んだものの正体もまた明らかだと思います。しかも、この恐ろしい暴力は、現代でも同じような悲劇を繰り返している気がしてなりません。

あの少女に、せめて「物語」の中では生きてほしいというのが、この作品を書こうと思った、そもそものきっかけでした。私の作品などはまだまだなのですが、それでも現実の事件とは違った結末の中に、「祈り」と「愛」があると、羽庫さんから涙の出るほどありがたいお言葉をいただき、とっても報われた気持ちです。

また、「そんな少女たちが、かつて、そして今もどれだけいることか」というお言葉に、心から共感いたします。

心に沁みるお言葉の数々、本当にありがとうございます!