いじめの責任は誰にある?:書評 五十嵐律人『原因において自由な物語』

作者 mika

[創作論・評論]

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五十嵐律人『原因において自由な物語』(講談社、2021年)の書評です。『法廷遊戯』、『不可逆少年』に続く三作目。
極力ネタバレをせずに紹介しています。未読の方も安心してお読みください。

参考:
文部科学省「2019年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2020年10月22日発表)
文部科学省「コロナ禍における児童生徒の自殺等に関する現状について」(2021年5月7日発表)

ファンレター

著者は岩手県盛岡市出身!

mika さん。絶妙の紹介文です。早速、「読みたい本」に追加させていただきました。いくつかの重要なテーマが入っており、しかもミステリー仕立てのようで興味が湧きます。

著者の五十嵐律人さんの事は、恥ずかしながら知りませんでしたが、岩手県盛岡市出身ということで、私も盛岡市出身ですので誇りに思います。出身大学も東北大学とのことで、学部は違いますが、私も同大学を卒業しておりますので、五十嵐さんの小説を読むと、盛岡や仙台のことがでてこないかなあ、などど期待したくなります。五十嵐さんの他の作品にも注目したいと思いました。

ちなみに、今回の作品の舞台は「私立北川高校」とのことで、著者の出身の「岩手県立盛岡北高等学校」とは異なりますが、後者の地元での略称は「北高」なので、「私立北川高校」も略すと「北高」になります。この部分は、著者の母校への思いが込められているかもなどと想像しております。

荒野の狼

返信(1)

荒野の狼さん、書評の方もさっそくお読みいただきありがとうございます。「読みたい本」に入れてもらえて、書いたかいがありました^^
おお、偶然にも五十嵐律人さんと同じご出身だったのですね!! 学部が違うとは言え、大学まで同窓とは驚きですね。

著者の前作『不可逆少年』の舞台は七夕が有名な「青葉市」とありましたので、これは明らかに仙台市のオマージュですよね。
今作の「私立北川高校」は北高等学校のもじりとの説、たしかにそうかもしれない、と思いました^^ 作中の野球部の掛け声が「キタコー、ファイ、オー」と書かれていたので、作中でも略称は「北高」です。

五十嵐さんは現役大学生の時にデビューして、その後は司法試験に無事合格し、現在は弁護士をしながら、小説を発表しています。前作の『不可逆少年』は少年犯罪をテーマにしていて、今作は学校でのいじめを取り上げています。いじめを題材とする既存の作品は数多くありますよね。本作は弁護士ならではの視点から、スクールロイヤーという仕事を詳しく描いており、新しい知見が得られました。
題材が重苦しいので、楽しく読める作品ではないんですが、社会問題に正直に向き合う、おすすめの一作です^^