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文字数 1,076文字

「僕は猫かも知れない」
「は?」
「つぐみは前世って信じる?」

「前世? どうなんだろうね? あったら、素敵だなとは思うけど……」

「僕は前世があるんじゃないかって思うんだ」

「……どうしちゃったの?」
「どうやら僕は、前世で猫として飼われてたらしいんだよ」
「へ、へー……」
「あまり驚かないんだね?」
「え? まあ、長い付き合いだし、五郎ちゃんがそう言うなら、そうなのかなって……」
「ありがとう、つぐみ! 正直、もっと変な目で見られるかと思ったよ!」
「う、うん……それよりさ、五郎ちゃんの前世って、どんな猫だったの?」
「そうだな……」
【回想】
僕はお屋敷みたいな大きな家で飼われてるんだ。
「にゃふ~」(眠いなぁ~)
まるまると太った茶色と白の猫で、種類はなんていうのかな?
日本猫?
まあ、そう言われても、分からないんだけどね。
五郎ちゃん……
「にゃあああ」(早くお嬢様帰って来ないかなぁ)
「なぁああ」(まったく、だらしがないわね。お嬢様がいないからって、だらけきっちゃって)
そうそう。そこには僕以外にももう一匹猫が居てね。これがまたえらく気位が高いんだ。
なんですって?
いや、つぐみのことじゃないから……。
そ、そうだったわね……
「なぁああ」(だって、お嬢様がいないとぜんぜん楽しくないんだもん)
「なあああぁ」(そんな調子だから、太るのよ)
この二匹、なぜかいつも決まった場所にいてね。
僕が寝そべっているのは、床に置いてあるクッションで、
もう一匹の猫がいるのは……あれ、どこだったかな……
どこか上の方に居たとは思うんだけど?

窓枠の上
そう、窓枠の上だよ! あれ? でも、よく分かったね?
え? ……それは、ほら、猫って高い所が好きって聞くでしょう?
なるほど。それでいつも僕のことを見下ろすように話しかけてくるのか
……
「ただいま」
「なぁあああ」(お嬢様だ! お嬢様ぁああ!)
猫の僕は、お嬢様のことが大好きみたいで、お嬢様が帰ってくると、急にはりきり出すんだ。
いやらしぃ
いや、猫の考えることだし
中身は五郎ちゃんなんでしょう?
それが中身も完全に猫なんだよ。
どういうこと?
なんていうのかな……猫は自分勝手に行動するし、猫のような動きをするみたいな?
僕はただ猫の目を通して、見てるだけなんだ。
ふーん
お嬢様は本当に猫に対して優しいんだ。
人前では優しくても、影では虐待なんて話も聞くけど、お嬢様に限ってはそんなことは絶対にあり得ない。
猫目線で見るとその優しさがよく伝わってくるんだよ。
呆れた。見てるだけっていうけど、すっかり飼いならされてる感じじゃない?
あの家の猫になら、僕はなりたいよ。
はいはい。
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登場人物紹介

猫島五郎

16歳。高校生。

猫井つぐみ

16歳。高校生。五郎の幼馴染

猫林るう

18歳。

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