第92話 ホントウに愛するということ

文字数 305文字

 ホントウに、人は人を愛し得ない、ということ。
 ホントウには。
 夜中に、ひとりで、自問してみよう。
「わたしは、あのひとを、ホントウに愛しているのだろうか。」
「ホントウに、愛しているのだろうか。」
「ホントウに、ホントウに、愛しているのだろうか。」

 3回、間をおいて、自分自身へ問うてみよう。
 ホントウには、愛していないだろう、という気に、なってきやしないだろうか。
 ─── そう云っていた、椎名麟三。

 ドストエフスキーは、縊死しようとする少女を、スキマから覗いて「見続ける」スタヴローギンをつくった。
 それは、人間は、自分自身さえも、愛し得ないのだ、ということの確認だった。

 人間は、ホントウには、誰も愛せない?
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