ブラインドライト そのⅣ
文字数 1,815文字
かつては貝が吐き出していると思われていた。それが蜃気楼だ。実際には、密度の異なる空気によって、光が屈折して、そこにあるはずのないものが見えるようになる。そして空気の密度は、温度によって変化する。
俺が火をつけたから、空気が膨張してその密度が変化した。だから光も屈折して、開の姿をとらえることができた。
「なんてこった…。開、お前は、光を自在に屈折させることもできるのか!」
そう考えると、納得がいく。
最初に姿が見えなかったのは、開から放たれる光が曲げられ、俺の目に入らなかったからだ。物体を見るとき、それが反射した光が目に入らないといけない。
次に、開の指先が光った。これは開が発光しているというより、周りの光を集結させて俺に向かわせたのだろう。
そして、幻覚。あれは光を曲げて、違うところにいる自分の姿を、空気中に投影していたのだろう。偽物の光を作り出していたのかもしれない。
「面白い…。光がいつも、真実を映すとは限らないってことだな? やってやろうじゃないか、開!」
俺は水鉄砲を構えた。そして狙いは開…ではない。俺が見ている人影が、本物じゃない可能性があるからだ。だから狙いは定めていない。見るべきは地面。わずかに小石とかが動けば、そこにいる!
「そこか!」
俺が首を動かした瞬間、小石が跳ねた。俺はすかさず、そこに水を撃ち込む。
だが手ごたえがない。開の悲鳴も聞こえない。この距離で当たらないはずがない。
「まさか!」
俺はとっさに、横にジャンプした。今の石の動きは、幻覚だ。そういえば音が聞こえなかった。蹴った音も、跳ねた音も、だ。
そして、俺がいたところにはハサミが飛んで行った。もし反応するのが遅れていたら、俺の胸に突き刺さっていただろう。そう思うと、冷や汗が出る。開は感情も機械的だ…。勝ちさえすればそれでいいのか!
とにかく、開がどこにいるのかを見つけなければ俺の攻撃は届かない。
では、どうやって見つける?
「俺の超能力が、水でよかったと今ほど感じることはないぜ」
俺は今度は、水の膜を作り出した。これを通して周囲を見る。光は水を通れば、多少屈折する。さっきは空気を温めて屈折させたが、火は俺の専門外。だから水で行う方がいい。
「そっちだな?」
俺は右後ろに向かって、トリガーを引いた。水の膜に、開の姿が反射され、映し出されていたからだ。水は鏡のように光を跳ね返すこともできる。
「…被弾ヲ確認…」
ご丁寧に、当たりましたと教えてくれた。だが次の瞬間、また姿が消える。
これは少し、面倒なことになってきたぞ…。開はいかに光を操って自分の姿を消すか、そして俺はいかに水を操って開の姿を探すか。いたちごっこになりかねない。
一気に勝負をつけるしかなさそうだ。ここは煽ってみて、隙を突く。
「おい、聞こえてるか開? 姿を隠して攻撃なんて、真面目に考えなくても卑怯だと思わねえかよ? お前も男だろ? 正々堂々と姿を見せて勝負できないのか?」
もっと言ってやろう。
「お前の基本的な超能力は、結構レベルが高いぜ。でもよ、チキンな行動でそれが台無しになっている。それとも、俺と超能力比べするのがそんなに怖いのかよ! 肝も据わってないのに俺に挑むとか、思考回路は小学生だな。もう一回義務教育をやり直した方がいいぜ!」
決まったな。小豆沢か空飛だったら頭の血管が二本ぐらい切れてる。まあ、武炉には通じないだろうけどな。
辺りは、静まり返っている。開の反論は、何も聞こえてこない。もはや俺は、意味もなく突っ立っているだけの状態だった。
「おい。何か、言い返そうって思わねえのか?」
これに対しても、返事がない。俺が独り言を呟いている痛い人になっている。
「そうかよ…。完全に機械だな。感情すら押し殺して。無駄な要素は一切排除して任務に徹底するってことか。たとえそれが喜怒哀楽でも」
それが、怖羽開という人間か。ならば俺も、機械を相手にしているものとして戦わせてもらう。そこに慈悲などないからな? 開もそのつもりだろうけどな…。
開の姿は見えない。耳を澄ませても、足音も聞こえない。このままでは、分が悪いのは明らかだ。
「仕方ねえか」
俺はテレポートを使った。行き先は、学校の屋上。高いところから観察してみることにする。
俺が火をつけたから、空気が膨張してその密度が変化した。だから光も屈折して、開の姿をとらえることができた。
「なんてこった…。開、お前は、光を自在に屈折させることもできるのか!」
そう考えると、納得がいく。
最初に姿が見えなかったのは、開から放たれる光が曲げられ、俺の目に入らなかったからだ。物体を見るとき、それが反射した光が目に入らないといけない。
次に、開の指先が光った。これは開が発光しているというより、周りの光を集結させて俺に向かわせたのだろう。
そして、幻覚。あれは光を曲げて、違うところにいる自分の姿を、空気中に投影していたのだろう。偽物の光を作り出していたのかもしれない。
「面白い…。光がいつも、真実を映すとは限らないってことだな? やってやろうじゃないか、開!」
俺は水鉄砲を構えた。そして狙いは開…ではない。俺が見ている人影が、本物じゃない可能性があるからだ。だから狙いは定めていない。見るべきは地面。わずかに小石とかが動けば、そこにいる!
「そこか!」
俺が首を動かした瞬間、小石が跳ねた。俺はすかさず、そこに水を撃ち込む。
だが手ごたえがない。開の悲鳴も聞こえない。この距離で当たらないはずがない。
「まさか!」
俺はとっさに、横にジャンプした。今の石の動きは、幻覚だ。そういえば音が聞こえなかった。蹴った音も、跳ねた音も、だ。
そして、俺がいたところにはハサミが飛んで行った。もし反応するのが遅れていたら、俺の胸に突き刺さっていただろう。そう思うと、冷や汗が出る。開は感情も機械的だ…。勝ちさえすればそれでいいのか!
とにかく、開がどこにいるのかを見つけなければ俺の攻撃は届かない。
では、どうやって見つける?
「俺の超能力が、水でよかったと今ほど感じることはないぜ」
俺は今度は、水の膜を作り出した。これを通して周囲を見る。光は水を通れば、多少屈折する。さっきは空気を温めて屈折させたが、火は俺の専門外。だから水で行う方がいい。
「そっちだな?」
俺は右後ろに向かって、トリガーを引いた。水の膜に、開の姿が反射され、映し出されていたからだ。水は鏡のように光を跳ね返すこともできる。
「…被弾ヲ確認…」
ご丁寧に、当たりましたと教えてくれた。だが次の瞬間、また姿が消える。
これは少し、面倒なことになってきたぞ…。開はいかに光を操って自分の姿を消すか、そして俺はいかに水を操って開の姿を探すか。いたちごっこになりかねない。
一気に勝負をつけるしかなさそうだ。ここは煽ってみて、隙を突く。
「おい、聞こえてるか開? 姿を隠して攻撃なんて、真面目に考えなくても卑怯だと思わねえかよ? お前も男だろ? 正々堂々と姿を見せて勝負できないのか?」
もっと言ってやろう。
「お前の基本的な超能力は、結構レベルが高いぜ。でもよ、チキンな行動でそれが台無しになっている。それとも、俺と超能力比べするのがそんなに怖いのかよ! 肝も据わってないのに俺に挑むとか、思考回路は小学生だな。もう一回義務教育をやり直した方がいいぜ!」
決まったな。小豆沢か空飛だったら頭の血管が二本ぐらい切れてる。まあ、武炉には通じないだろうけどな。
辺りは、静まり返っている。開の反論は、何も聞こえてこない。もはや俺は、意味もなく突っ立っているだけの状態だった。
「おい。何か、言い返そうって思わねえのか?」
これに対しても、返事がない。俺が独り言を呟いている痛い人になっている。
「そうかよ…。完全に機械だな。感情すら押し殺して。無駄な要素は一切排除して任務に徹底するってことか。たとえそれが喜怒哀楽でも」
それが、怖羽開という人間か。ならば俺も、機械を相手にしているものとして戦わせてもらう。そこに慈悲などないからな? 開もそのつもりだろうけどな…。
開の姿は見えない。耳を澄ませても、足音も聞こえない。このままでは、分が悪いのは明らかだ。
「仕方ねえか」
俺はテレポートを使った。行き先は、学校の屋上。高いところから観察してみることにする。