スクラッチアース そのⅠ
文字数 1,416文字
「宮崎県出身? じゃあ真沙子は南国育ちなのか」
俺たちは昼飯を教室で食べている。これが通常の日常だろ、やっと手に入れたぞ。
「それはオーバーな表現、だわ。そんなこと言ったらあなただって北国育ち、じゃない?」
今日は出身地の話で盛り上がっている。面白いことに、みんな違うのだ。
「宮城はそこまで雪降らないぜ。思っているほどの豪雪地帯じゃない」
「フン。雪なら東京でだって降る」
小豆沢は東京生まれの東京育ちのようだ。でも八丈島も東京都だろう? じゃあいまだに都内在住なのか。
「奈良県出身だよウチは。いっぱい鹿が」
「俺は山口だ。あの壇ノ浦があるところだぜ」
この昼休みは、五人でそれぞれの出身地について話した。持ってる偏見がすごく、例えば俺の出身地である仙台について話したら、みんな牛タンを食べているだとか、四葉の奈良についても、毎日大仏を拝んでいるとか…。まあ、行ったことのない場所についての知識なんて、正確なわけもない。俺も宮崎県なんて行ったことないし、どのような町があるのかもわからない。
「待てよ。みんな転校してきたってことは、じゃあ元からこの島にいた奴は誰だ?」
そして何で、超能力者が集まる? 偶然にしては出来過ぎている。俺たちの移動には、何者かの意図を感じる。
おそらくは、ソイツが黒幕…。
「あっちの…」
小豆沢が視線を送った先は、誰もいない。どうやら今、席を外しているようだ。
「俺がこの島に来た時は小六で、その時はあの武炉、鍵下、空飛の三人だった」
「三人、か……」
その中に、黒幕がいるのか? 四人は記憶が消されている。ならその中の一人でも問い詰めれば。
「誰が一番偉いんだ? その三人の中で」
「三人とも、平等、か? しいて言うなら一番存在感があるのは武炉だな。アイツ、ごついわりには機敏に動くんだぜ、ビックリだ」
確かに体育の授業では、大柄ながらも良い動きだった。アイツが武炉か。
「なるほどな。ならやるべきことは一つだぜ」
今までは、超能力者がやって来るのを迎え撃つだけだった。今度は違う。俺が奇襲をかける。そして電撃戦で武炉を負かせ、知ってることを全部話してもらう。
だが、俺の策は放課後に砕け散った。
「粒磨。この俺と勝負をしろ」
「武炉…!」
まるで俺の心を読んだかのようなタイミングで、武炉の方からアプローチ。これでは奇襲にはならない。
「…いいぜ、覚悟しな!」
俺は水鉄砲を構えた。だが武炉は、動かない。
「ここが戦場ではない。四時になったら、港に来い」
場所を指定してくるのか。これは何かありそうだ。
まだ時間ではなかったので俺は、デパートに向かった。そして水遊び用品のコーナーに向かう。
「これがいいな」
武炉の超能力の性質がわからないし、リーダー格かもしれないのでこちらも万全の装備でいく。安物の水鉄砲で戦う、なんて言わず、贅沢にウォーターガンを購入。
「待ってろよ、武炉! これで泣かせてやるぜ!」
アポーツでいつでも手元に出せるからな、わざわざ持っていく必要はない。家の自分の部屋に、置いておこう。
両手には小型のウォーターガン。懐にはお馴染みの水鉄砲。そして家には大型のウォーターガン。これほど武装したことはない。武炉が本気なら、俺も本気だ。
俺は四時に間に合うように、港に向かった。
俺たちは昼飯を教室で食べている。これが通常の日常だろ、やっと手に入れたぞ。
「それはオーバーな表現、だわ。そんなこと言ったらあなただって北国育ち、じゃない?」
今日は出身地の話で盛り上がっている。面白いことに、みんな違うのだ。
「宮城はそこまで雪降らないぜ。思っているほどの豪雪地帯じゃない」
「フン。雪なら東京でだって降る」
小豆沢は東京生まれの東京育ちのようだ。でも八丈島も東京都だろう? じゃあいまだに都内在住なのか。
「奈良県出身だよウチは。いっぱい鹿が」
「俺は山口だ。あの壇ノ浦があるところだぜ」
この昼休みは、五人でそれぞれの出身地について話した。持ってる偏見がすごく、例えば俺の出身地である仙台について話したら、みんな牛タンを食べているだとか、四葉の奈良についても、毎日大仏を拝んでいるとか…。まあ、行ったことのない場所についての知識なんて、正確なわけもない。俺も宮崎県なんて行ったことないし、どのような町があるのかもわからない。
「待てよ。みんな転校してきたってことは、じゃあ元からこの島にいた奴は誰だ?」
そして何で、超能力者が集まる? 偶然にしては出来過ぎている。俺たちの移動には、何者かの意図を感じる。
おそらくは、ソイツが黒幕…。
「あっちの…」
小豆沢が視線を送った先は、誰もいない。どうやら今、席を外しているようだ。
「俺がこの島に来た時は小六で、その時はあの武炉、鍵下、空飛の三人だった」
「三人、か……」
その中に、黒幕がいるのか? 四人は記憶が消されている。ならその中の一人でも問い詰めれば。
「誰が一番偉いんだ? その三人の中で」
「三人とも、平等、か? しいて言うなら一番存在感があるのは武炉だな。アイツ、ごついわりには機敏に動くんだぜ、ビックリだ」
確かに体育の授業では、大柄ながらも良い動きだった。アイツが武炉か。
「なるほどな。ならやるべきことは一つだぜ」
今までは、超能力者がやって来るのを迎え撃つだけだった。今度は違う。俺が奇襲をかける。そして電撃戦で武炉を負かせ、知ってることを全部話してもらう。
だが、俺の策は放課後に砕け散った。
「粒磨。この俺と勝負をしろ」
「武炉…!」
まるで俺の心を読んだかのようなタイミングで、武炉の方からアプローチ。これでは奇襲にはならない。
「…いいぜ、覚悟しな!」
俺は水鉄砲を構えた。だが武炉は、動かない。
「ここが戦場ではない。四時になったら、港に来い」
場所を指定してくるのか。これは何かありそうだ。
まだ時間ではなかったので俺は、デパートに向かった。そして水遊び用品のコーナーに向かう。
「これがいいな」
武炉の超能力の性質がわからないし、リーダー格かもしれないのでこちらも万全の装備でいく。安物の水鉄砲で戦う、なんて言わず、贅沢にウォーターガンを購入。
「待ってろよ、武炉! これで泣かせてやるぜ!」
アポーツでいつでも手元に出せるからな、わざわざ持っていく必要はない。家の自分の部屋に、置いておこう。
両手には小型のウォーターガン。懐にはお馴染みの水鉄砲。そして家には大型のウォーターガン。これほど武装したことはない。武炉が本気なら、俺も本気だ。
俺は四時に間に合うように、港に向かった。