グラビティダンス そのⅢ

文字数 1,734文字

 守はボルトを見せておいて、引っ込めた。何か、作戦があるのか…。そして反転して、逃げ出す。

「追うべきか…」

 この先には、罠がある可能性が高い。でも行かなければ守には勝てない。

「乗ってやるぜ、その罠に!」

 俺は守の後をつけた。
 階段のところに差し掛かった。守が階段を下っていくが…。
 俺は逆だ。登っていかなければいけない。

「おい、待て!」

 さっさと下って行ってしまう守。階段の天井には段差がなく、斜面が続くだけ。滑らかに降りていく。対する俺は、見失わないように急いで段差を登る必要がある。ここにきて体力を少しずつ削っていく作戦か。

「く…待てよ…。そんなに速く移動する意味はないだろ? はあ、はあ…」

 一気に四階まで行きやがって、息が切れる…。だがそうは言っても休憩する暇はない。

「ああっ!」

 守がここでボルトを取り出した。俺は水の刃を用意…。

「ぐわっ!」

 くらった。守のボルトの方が速かったのだ。ボルトは俺の左手に当たると、水鉄砲を破壊した。中に入れてあった水が、全てこぼれる。マズい、水を失った!
 だがこれで、終わらせる気もない。右の水の刃はまだ残っている。これを食らわせれば、加減すればかすり傷ぐらいは与えられる。

「行くぜ! ガードしないと出血しちまうぞ?」

 これは嘘だ。守に傷をつける気はない。だが守が持っている何かを、一つでも多く使わせないとこちらが不利になる。

「(゚Д゚)」

 焦ってる暇があったら、防御姿勢を取れよ!
 少し待ったが、守は特に何もしてこない。もういい、くらえ!
 俺は水の刃を振り上げた。そしてそれは、守の手の甲に、ほんの少し赤く腫れた直線を描くはずだった。
 水は…守に当たると、天井に向かって上がっていった。

「こ、これは…。重力を操る超能力で、ここまでできるとは…!」

 どうやら少しでも守の体に当たると、守の支配下に置かれてしまうらしい。水のコントロールが効かなくなった。地球上に存在する限り、重力には逆らえないということか。そしてその例外は、守の超能力のみ。

 これは、俺が焦る番だ…。水の球を撃ち込むか? それを一触りで防がれたら終わりだが。本当にどうする? 
 いやここは…。軌道が曲がる魔法の弾丸で行く。
 俺は適当な方向に狙いを定めると、トリガーを引いた。

「Σ(~ロ~;)」

 守が驚くのも無理はない。本来ならそっちに飛ぶはずがないんだからよ。でも俺の水の球は、守の手から逃げるように動き、足に当たった。

「(☉ω☉♠)y▬≈≈」

 転んだ、天井で。水の球は、守の足を見事にすくえた。俺はこの時、守が落ちてくると思ったが、そうではなかった。少し足を放した程度では、天井からは落ちないようだ。

「しぶといな、お前の超能力は中々…。だが俺の水が完全に通じないってことじゃないみたいだからな、安心はできたぜ」

 さて、ここからどうやって攻めるか。足元を狙って転ばせるだけじゃあ、大きなダメージにはならないようだし、やはり水の球は胴体に撃ち込まなければ意味がないな。そして水の刃は、防御にも役に立たなさそうだ。
 まず俺は水を散弾させた。これなら、チマチマと防ぐ暇はない!

「どうだ、守! これをどうやって避ける?」

 行ける。これなら。
 だが、違った。なんと守は超能力を一旦解き、床に降り立った。俺の水は全て、天井に向かって撃たれている。この一瞬の移動で、全て避けられた…。

「(σ-`д・´)」

 怒っているな…。無駄に怒って、墓穴を掘ればそれでいいかもだが…予想外の行動をされると結構俺も動揺する…。


「(o^□^o)」

 ん? 何だ? 守は階段で大きくジャンプした。それは天井に戻るためなのだろうが、その後の行動が変だ。そのまま階段の天井を、登り始めた。俺も追うために階段を勢いよく下る。

「さっきの逆か? だが普通に考えて下に行くなら、天井に移るだけ無駄じゃないか? そのまま下った方が疲れないだろ。天井の斜面は階段とは逆だ。俺は段差を下るだけだが、アイツは斜面を登らないといけないんだぞ…?」

 それとも作戦か?
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