33:紅薔薇の輝石

文字数 488文字

 小さな子供の瞳。
 紅薔薇に惑わされて― 何見ゆる?

――――――――――――†――――――――――――

 ナイテル……
 鳴いてる。
 泣いてる。

 声が聞こえる。
 泣いてるのは、子供。
 こんな森深くで?
「どうしたの?」
 泣く事を止めて、その子はきょとんとこちらを見つめる。
「どうしたの?」
 もう一度ゆっくりと問う。
「あ……マ……マとはぐれ…て」
 言い終わらないうちに涙が溢れて、泣き出した。
 小さな手が涙をすくい上げる。
「フェ…ック…ママ。ママァ――」
 どうしたらこの子が、泣き止むのか知らない。
 私は小さくため息をつき、手を伸ばす。
「そう。ごめんなさい。私には貴女のママを探せないわ。
 でも、良ければ私と一緒に来ない?」
 抱き上げながら、私は女の子に目を合わせる。
「う…ん」
 こっくりと小さくうなずいた。
「いらっしゃい。永遠に一緒よ」
 私は笑顔を向ける。
 その白い首筋に刃を立てて――

「マ……マ」

 一滴の涙とその小さな言葉とが、私の気まぐれを引き起こした。
 私はその小さな躯を腕にねぐらに帰る。
 すっかり冷たくなった躯は変化を始める。
 次に目が醒めたら、その時は――――

 永遠に。
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