終末少女兵器 Mk2&Mk7
文字数 2,171文字
マドカは不思議な女の子だった。
いつも空を見て、何かを指差し、他の人が聞こえない声で何かを喋っている。
そんな光景を見たクラスメート達は、少しづつマドカから離れていった。
僕とマドカは同じ中学校に通い、高校も一緒でクラスも同じになった。
中学生時代は接点もなく交流もなかったが、高校の通学にお互い電車で同じ駅を乗り降りする内に仲良くなってきた。
たまに一人で空を見ている時の事を聞くが、毎回はぐらかされて明確な回答はもらえていない。
僕とマドカが駅に向かっていると、背後の方から女の子の声がした。
彼女はアヤメ、マドカの幼馴染らしいが同じ学校に通うのは高校かららしい。
アヤメは活発でリーダーシップを取れる感じの女の子だ。
不思議な雰囲気のマドカとは、なぜか気が合うというか……何か強い絆で結ばれている感じもした。
何気ない日常と通学……ずっと高校生活はそうやって毎日を過ごすと思っていた……。
* * * * * * *
昼休みなり、やることもなく退屈だった僕は、校庭に出て適当に散歩をしていた。
校庭の植木の陰にマドカが見える。
またいつものように空を見上げ、空の方を指差しブツブツと独り言を喋っている。
僕はいつもの光景だと思い、近くに行きマドカの独り言が終わるのを待っていた。
その時、空の彼方に真っ白な閃光が走った。
あまりの眩しさに僕は顔を背ける。
次の瞬間、マドカの悲鳴が聞こえた。
閃光でぼんやりした視界が徐々に見え始める……赤い何かが地面に散らばっている。
マドカの居た場所に目を向けると、マドカの指差しをしていた右手が肩からなくなっていた。
周りに散らばっているのは、マドカの失った右手の血と肉片だった。
僕は戸惑いながらもマドカに近づいた。
マドカは失った右手の痛みを堪えながら、僕にその言葉を必死に伝えた。
それでも、僕はそんなマドカを置き去りにできず、マドカを抱きかかえた。
また、空一面に閃光が広がった。
次の瞬間、空気を切り裂く轟音が鳴り響き、隕石の様に赤く熱したモノが僕らの方へと向かってきた。
それは校庭の中心部分に落ち、校庭に居た生徒を巻き込んだ。
凄まじい爆音と衝撃波が僕らを襲う。
校庭にあった立木や生徒たちが、僕の横を凄まじい速さで吹き飛んで行く。
校舎の窓ガラスは割れ、校舎も徐々に崩壊していった。
しかし、僕は何故かほぼ無傷の状態だった。
僕の周りは、直径3メートルほどの球体状の半透明の壁で守られていた。
マドカは必死に左手の掌を広げている。
この壁を作っているのはマドカなのか!?
その間にも周りは次々と吹き飛ばされ、校舎は崩壊していった。
爆音と衝撃波が収まり、黒煙が辺りを覆う。
視界が悪く何も見えない。マドカは壁と作った疲れと右手を失った痛みで、息をするのもやっとな状態だ。
黒煙が徐々に収まり、周りの風景が認識出来るようになり僕は唖然とした。
僕の見える範囲はむき出しの地面しかなく、わずかな建物の土台くらいしか残っていない。
辺り一面が、何もない大地になってしまった。
そのとき、耳を切り裂くような鳴き声が轟いた。
隕石らしきモノが落ちた所には、見た事もない異様で巨大な生物がそこにいた。
僕は現実とは思えないその光景に、怯え後ずさりする。
良く見ると、その生物の周りで何かが飛んでいた。
巨大な生物は無数にある手で、羽虫を払うように飛んでいる何かを必死に払い除けている。
飛んでいた何かが僕らの方へと迫って来た。
僕は自分の体でマドカを覆い守ろうとした。
すると、その飛んでいた何かは僕の前で急ブレーキをしたかのように止まった。
そして、そこにいたのはアヤメだった。
アヤメの体は、人間とは思えない赤黒く巨大な生物と同じ部質で、体の八割ほどを覆っていた。
僕はとっさにアヤメを呼んだ。
アヤメは気まずそうな顔で、苦笑いをしながら僕に声をかけた。
そう言ってアヤメは巨大な生物に向かっていった。
次の瞬間、僕は半透明の球体の中に閉じ込められた。
それを作ったのはマドカだった。
マドカは左手に力を込め、僕をこの球体に閉じ込めたのだった。
僕は球体の内側から、マドカに呼びかけ球体を叩く。
しかし、球体はびくともしない。
マドカは痛みを堪え、僕に微笑んだ。
そして、球体は僕を閉じ込めたまま、上空へと凄まじい速さで上がっていった。
マドカが小さくなり見えなくなると、マドカたちがいた場所で大爆発が起きた。
球体は大気圏を越え、宇宙へ行き停止した。
宇宙空間でも、この球体の中では呼吸もでき、僕は生存できている。
そして宇宙から見える地球では、各地で大爆発が起きていた。
徐々に地球は、僕の知っている大陸ではなくなっていった。
ついには球体の中にいる僕は少しづつ意識は薄れ、最終的には意識を失った。
* * * * * * *
徐々に意識が戻り始めてきた。
球体は宇宙空間から徐々に地球へと向かっていく。
周りを見ると、僕と同じ球体に入った人間や動物が無数に地球の大地へと向かって行った。
いったいどれ程の時間が経過したのだろう、大地は一面に緑で溢れている。
僕は大地に降り立ち……マドカとアヤメを思い……泣き崩れた。