終末少女兵器X 1話

文字数 1,276文字

気が付くと我は水槽の中に居た
我とは生体の違う人型の生物が、我の周りで我を観察している
我はどれほど、この水槽の中にいたのだろう
水槽の中に入った経緯はわからぬが、故郷の事は微かに覚えている
大地や大気が赤く染まり、我らは故郷の星に住むことができなくなった
新たな居住地を求め、体を変態させ、我らは長い長い宇宙の旅に出た
そして、青く輝く星を見つけた
そこまでの記憶はある……
その後、我はどうしてこの様な所に閉じ込められているのだろう……
他の仲間はどうしたのだろう……
疑問ばかりが尽きぬ……
……ただ、一人は寂しい……





元気な少女が研究室のドアを開け入ってきた。
ねー!ソイツ、何か喋っった? 口みたいのがあるんだから、喋ったりするよね!

その元気な少女の腕を握り、怯える少女もいた。

エマ……怖いから……帰ろうよ……私、その生き物が怖いの……
それを聞いて、エマと呼ばれた少女が笑いながら答える。
コイツはもう30年のこの中で、観察されてるんだぜ。 今更、この強化ガラスの水槽から出れる訳ないんだから、ルーは怖がりすぎるんだよ!

そして、エマは軽く水槽にパンチをした。


水槽は少し揺れ、研究員がエマに怒鳴りつける。

コラ!エマ、ここは遊び場じゃないんだぞ! 今日は大切な検査があって、お前達を呼んだんだ! 呼ばれるまで、大人しく待っていろ!

エマは怒られても何食わぬ顔で「へいへい」とあしらうように手を振った。


ルーは怒られたショックで、エマの腕をギュッと握りしめ、目を閉じていた。


そして、徐々に目を開けると、水槽の生物の目が開き、ルーを見つめた。

キャーーーッ!!
ルーが悲鳴を上げると、研究室内に緊張が走った。
ルー! 何で悲鳴なんか上げたんだ?
エマが心配そうにルーに尋ねた。
め、目が……目が私を……見ていたの……

そう言ってルーは水槽の中の生物を指差した。


研究室内の人間が息を飲んで、一斉に水槽の生物に視線をおくる。


一人の研究員がデータを解析すると、微量な反応があった様子だった。


録画された映像には、わずかにまぶたが開く現象が確認された。


研究員達は一同に、興奮した様子になった。

今まで30年も無反応だったのに、何故でしょう主任……?
研究員の一人が水槽を眺め、主任と呼ばれる女性に問いかけた。
わからないわ……でも、きっときっかけがあるはずよ! まず、それを確認してみましょう
ルーは悲鳴を上げた後、頭を片手で抑え、何か苦痛を感じている様子だった。
ルー、どうした?大丈夫か!?
ルーを心配し、エマは優しく問いかける。
う、うん……大丈夫だよ……

ルーはエマを心配させまいと、ムリに笑顔を作った。


研究室内が慌ただしくなった頃、エマとルーを呼び出すアナウンスが流れ、二人は研究室を退出した。


主任は部屋を出るルーを眺め、考え事をしている様子だった。

主任、どうされましたか?
主任は研究員に尋ねた。
あのルーと呼ばれた子は、確か例のモノを投入された被験者よね?
その問いに研究員は答える。
はい、三ヶ月前に投入され、生存する唯一の個体、Mk28です
それを聞き主任は指を顎に当て考える。
この生物との共鳴したのかしらね……


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